STONE さんの感想・評価

4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態：観終わった

もう少し、話が動いても良かったかな

　原作は未読。
　ラノベ原作で大学が舞台って珍しい気がするけど、それだけで一つの個性にはなっているの
かな。
　個人的には中高生に較べて、大学生キャラの方が運転免許取得などによる行動半径の拡大、
アルバイトの質量の違いによる経済的自由度、カリキュラムの違いによる時間の自由度、夜間
外出や外泊の社会的許容度、飲酒喫煙の自由(20歳以上だろうけど)などから、話をふくらませ
やすい印象がある。
　ただ、限定されるものが少ないことが逆に散漫につながることもあるし、ラノベ読者のメイン
ターゲット層が中高生だったり、男女の距離感などを考えると、逆に大学生キャラは難しいの
かもしれない。

　主人公の多田 万里と加賀 香子の恋愛と、記憶喪失により過去の記憶を無くした万里が自己の
アイデンティティを取り戻すまでの過程を主軸に話が進んでいくが、単に同時進行しているの
ではなく、二つの要素がそれぞれ互いの展開をドラマティックにするスパイスとなっている。
　例えば恋愛部分だけだと、万里が一切記憶を取り戻さない状態なら香子と付き合うことで話は
終わってしまいそうだし、逆に香子と付き合う前に過去を思い出したらリンダこと林田 奈々と
大学で再会してこれまた付き合うようになって終わってしまいそう。
　ただ、途中途中で小出しに過去の記憶が戻る展開だったためか、全体としてはやや平坦な
印象で、悪くはないけど無難に収まってしまった感じ。
　個人的にはゴースト万里(死んでないけど便宜上(笑))が一時的には完全に体を乗っ取って？、
リンダにアプローチするぐらい話を動かしても良かったかなという気がする。
　このゴースト万里だが、最初は埋もれてしまった過去の記憶を一種の別人格として扱い、
演出として幽霊のように映像化していたのかと思っていたが、途中から「呪う」だの言い始めて
本当に霊的存在になってしまった。最後は過去の記憶を取り戻した状態であるのにも関わらず、
再び登場したりでよく判らない存在。
　どちらにしても万里の過去の記憶の象徴的存在なのだろうが、この存在をうまく扱いきれ
なかった印象がある。

　それなりの数のキャラが登場するが、あくまで万里、香子、リンダの三人の物語といった
感じ。
　メインヒロインの香子だが、思い込みが激しかったり、感情に任せて行動したり、独占欲が
強かったりと大変なキャラだが、この性格が話を動かしているのも事実。更にこういう自分を
客観的に見られる部分も持っており、そんな正負合わせ持つ魅力に溢れていた。

　もう一人のヒロインのリンダも違った魅力を放っていたが、もう少し内面を描いて欲しかった
かな。
　自分が原因で万里の事故が起き、ひいては自分の気持ちを伝えられなかった負い目は描かれて
おり、最後はそれが救われる形で終わったのは良かったが、リンダ自身の万里への思い、そして
表面上は万里と香子を応援する立場であることに対する葛藤などは観たかった気がする。
　これは万里と香子の心情描写に尺を割いたために、他のキャラに時間を使えなかったためかも
しれないが、リンダ以外の柳澤 光央や岡 千波の恋愛問題なども同じ印象で、いずれも事象表現
だけで終わってしまった感じ。
　そのためかラストにリンダと光央に恋が生まれそうな描写があるが、これも「あぶれもの同士
くっつけてみました」という在庫整理のように見えてしまった。

　そういう意味では恋愛問題の絡まないキャラの方が気楽に観られるためか、二次元くんと
NANA先輩が結構印象的。
　二人とも一歩引いた状態で状況を見えるためか、膠着状態を打開するいいバイプレイヤー
ぶりを見せてくれた。

　ファンタジーものなんかで邪教集団みたいなのが出てくることはあったりするが、序盤で
リアルなカルト教団が出てきたのはちょっとびっくりした。
　こういうことは本当にあったりするからねえ。