「借りぐらしのアリエッティ(アニメ映画)」

総合得点
66.0
感想・評価
663
棚に入れた
3154
ランキング
3077
★★★★☆ 3.6 (663)
物語
3.4
作画
4.1
声優
3.3
音楽
3.7
キャラ
3.5

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ネタバレ

みかみ(みみかき) さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

良いのでは

 全体的によかったですよ。
 まあ、縮尺比とかでの映像のあそばせ方とかすばらしかったのでは。
 ストーリー的にも盛り上がりに欠けるといえば欠けるという言い方もできるけれども、まあ比較的落ち着いたトーンで、上品に見られる仕上がり。いいんじゃない。ラピュタとか、ナウシカ的なごりごりと盛り上げる手法ではつくってないけど、ある程度落ち着いたトーンの話(トトロとか)をつくる、ということにも明らかにパヤオは欲望をもっていて、わたしはそっちのパヤオはけっこう好きです。たぶん。
 たとえば、「カラスがつっこんでくる」あたりの、それほど大事件ではないはずのことを、「大事件として描いてしまう」、ということ。そのことにこそ、感嘆します。
 映像的な縮尺がかわることもさておき、事件のインパクト自体も縮尺が大きく変わる、というそれをきっちり描くということができていて、非常に好印象。

 もっとも、「小人」の世界にとっての大事件は、「人間」世界にとってはほとんど事件というほどの事件になっていないので、「人間」視点からみると、いまひとつ食い足りない、というのは出てくるかもしれない。そこは、まあ観客全員の視点を小人のほうにあわせるのは難しいので、この作品のもってる限界かもしれないけれど。
 あと、まあやっぱり、これだけ盛り場が弱めの作品は、ハリウッド的な超メジャー流通に向いた手法のものではありません。なので、超メジャー流通にこういう作品をのせるというのは賛否両論があると思います。で、予想通りに不評もゲットしているわけで、それはそれで仕方がないと言えば仕方がない。ただ、メジャー流通にハリウッドシナリオ手法的な起承転結ロジックだけで作られたものしか出回っていないという世界は、わたしにとっては全く貧しい世界だとしか思えないので、こういう作品をいろいろとわかった上で、きっちりとメジャー流通にのせてくれている、ということは素直に歓迎したいと思っています。

*他1:人物描写

 人物描写のクオリティ問題とかは、うーむ、まあ、ジブリつーか、宮崎さん脚本だからな…。もとから宮崎さん的なキャラクターしか出てこないことしか期待していないので、特に落胆もなかった。逆に落胆できる人は、ジブリ映画に対するみずみずしい感性を保てていて、すごいな、とか思います。
 わたしが落胆を覚えないのは、釘宮アニメで、釘宮キャラが、ツンデレロリっ娘、という以外の人格描写がほとんどなくても、落胆を覚えないのとほぼ同様の理由。あるいは、ライトノベル主人公が、草食系男子ふうな少年である/でしかないことについて落胆を覚えないのとほぼ同様の理由。

*他2:こそ泥問題

 こそ泥話は、基本的には、中立的に描こうという感じもしていたけれども、まあ「こそ泥」を肯定的に描いているようにみえる、というのも、確かにそうとられても仕方ないかなー、ぐらいの状態にはおさまっていたかも。
 たとえば、何かちょっとしたものを借りたせいで男の子の病気がたいへんなことになって、やっぱり無断で拝借すると、衝突がありますよねー、みたいシーンも一個ぐらい描くだけの余裕があれば、よかったのかもしれません。
…が、二時間弱の映画の尺のなかでそれをやると、ちょっとシナリオが全体としてブレるかもしれず、シナリオのなかにそういうエピソード入れ込むのはけっこう大変かもね。でも、まあ確かにそういうことまで含めて描けていたら傑作。1クールぐらいのアニメだったらもちろんできるんだろうけど。
 あるいは、これ自体を、一番クライマックスの事件にしちゃうとかね(たとえば、『Little DJ〜小さな恋の物語』みたいな話とかに近い感じ)。そうしたら、も少し盛り上がりもでてよかったのかなぁ。まあ、そうすると、後味わるい映画になるけど…、うーん。

*他3:これダメ、という人は下記もやっぱダメなんだろうか映画

 たとえば、この作品がつまらない、という人は下記の映画もつまらないのだろうか、などということを思いました。

A:『グラン・トリノ』:引退したおじいさんが近所の男の子と仲良くなる話。これは、ぜんぜんハリウッドだけれども、ハリウッドのなかでは、やや落ち着いてるかなぐらいのスタイリッシュ映画。(第83回キネマ旬報、外国映画第1位、クリント・イースト映画での全米興行収入第一位)

B:『マグダレンの祈り』:えんえんと修道院に居るはなし。話の最後にクライマックスはありますし、話自体はインパクトのある話。2002年ヴェネツィア国際映画祭、金獅子賞。ここらあたりからきつい人増えるのかな。

C:『息子の部屋』:息子が死んだ後、家族が悲しみにくれる話。言うほどたいした事件は起きません。2001年、カンヌの大賞(パルム・ドール)受賞。アリエッティがむり、な人はこれはかなりきついと思われる。

 なお、わたしはAは苦手な映画で、 BとCは好きな映画です。
 たぶん、「好みの問題でしょう」。
 というところはあるわけです。

 で、一方で、B/Cの映画のようなものって結局、どの程度の人にまでリーチ可能なのか、ということもたまに思うわけです。B/Cのような落ち着いた作りの映画を、「ハリウッド的に起承転結つけてね☆」とか言われたら、わたしはマジで悶え苦しむでしょう…。まあ、実際の仕事の現場では、そういうこと言われて悶え苦しんでるクリエイターさん、死ぬほどいると思うけどね。そして、そういう人はその職場なりプロジェクトを辞めていくんだと思うけど。

*超余談:東京アニメアワード受賞されたそうで。

 余談。
 昨日(2011年10月10日)の、東京アニメアワードでアニメーション オブ ザ イヤーを受賞されたそうでおめでたい。(わたしは昨年のアニメだと海月姫推しだったんだけどね…)
 ただ、あれ、やっぱ投票権をあまりに多くの人に送りすぎな感があって、今ひとつエッジな審査結果とかが出にくくなっちゃってるよね。たくさんのひとに投票権を付与するのって、いったい何がやりたいのか、という気がする。アリエッティの前はサマーウォーズで、その前はポニョでしょ。メジャー流通アニメ映画が、受賞してるだけ。部門賞はまだしも…
 「あにこれ」の総合ランキングに対しても特に共感は覚えるわけではないけれども、あにこれのようなCGMサイトのほうが、評者の顔を見ようと思えばそこを見られるからずっと価値があるよなぁ、などとしみじみ思いました。

投稿 : 2011/10/11
閲覧 : 376
サンキュー:

11

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