セレナーデ さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
我々が観たかったのは続編
これがやってるのは焼き増し。個としての判断より機械の判断を優先してしまう社会問題は1期でさんざん描写済み。主犯カムイもシビュラシステムから存在をはじき出された経験が犯行動機を形成しているあたり槙島さんの二番煎じ臭プンプン。手段や目的はなんであれ搦め手を用いてシビュラの統括する社会の欠陥や矛盾を突くストーリーラインもデジャビュ。1期の残した轍をそりゃ綺麗に沿った内容で、新鮮さもアトラクティビティもあったモンジャナイ。
この焼き増しクオリティであることだけをもって、1期の評価が相対的に爆上げした感覚の裏づけを終了してもいいのだけど、レイヤーするようにさらに失態を犯したように思うのは、1期からのバトンタッチがうまくできていない印象があること。
監視官から執行官へと降格したギノさんのあれこれや、唯一シビュラの正体を認知している朱ちゃんとシビュラとの因縁など、1期終了後からいかような経過があったのか気になってたり、それこそ続編として今後の進展をじっくり描いてほしかったりするトピックがいろいろあるのに、「ハイ触れましたよー」とあっさり通過するか、豪快に無視してくれるもんだから、眺めててすごくヤキモキする。
その最たるものが霜月さんのクズな言動の数々ですよ。
言っておくと、別にクズキャラであること自体は構わないです。見事なまじくそキャラに変貌してたのは確かに驚きだったけども、朱ちゃんと対比・対立させるための手段として、否定的で陰湿な性格にした方向性自体は、全然ありだと思います。
問題は、彼女がああいう人格になってしまった結果に対するプロセスや原因がまったく描かれていないことです。
1期エンディング時点での彼女の目には、救えるはずだった友人を救えなかった臍をかむ思いからの正義感と、執行官と監視官との間にあるある意味で冷め切った世界観に未だ毒されていなかった清らかさとがあったように思います。
しかしいざ2期が始まってみると彼女は見事に変貌。執行官に対して差別意識マルダシだったばかりか、いざという時に保身に走ったり、同僚の揚げ足を取って上司にチクったりと、彼女の働きぶりはさんざん。
けど、それらの行動には彼女なりの理念が伴ってて、その理念に至るまでには、彼女のなかで何か変化や決意などがあったはずなのです。
そこをしっかり描いてフォローを入れてくれないと、見てるこちらとしては彼女の言動になにひとつ共感も擁護も感情移入もしてあげられないのですよ。社会的責任の回避を図ったり、道義的責任も全うしようとしない姿「だけ」を見せられても、自分では足を動かさないくせに自分より立場の下の者にはエバり散らす無能な公務員にしか映らなくてやむなし、視聴者からコンセンサスを得られなくて宜なるかな、というもの(もし、1期で彼女の見せていたどこか斜に構えた態度を準拠にしたつもりでああいうキャラクター性にしたのであれば、それは単純に脚本家の認識違い、斜に構えるのとクズな性格なのは全然違うと思うぞ)。
こういう、1期を観てた人が気にするであろうトピックを無視、軽視して、おかまいなしに自前の(焼き増しだけど)ストーリーを展開されるところを見てると、「うわあ、1期からのバトンタッチがぎこちねえな」って思っちゃう。
1期より面白くするために1期よりいっぱい人を殺さなきゃと言わんばかりに人を殺しまくったせいでメリハリも皆無。
総じて、脚本、作画、演出、キャラの魅力、全ての項目で、1期から1段階も2段階もギアが落ちたような、爽快感とは縁遠い仕上がりでございました。
マスコットのホロコスでパトロールするどこか地に足ついてた世界観も面影がなくなっててオラさみしい。