らしたー さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ハードルが上がりすぎた。
分割2クール通しての感想。
■『infected』の衝撃
物語の提示の仕方が、ここ最近観た中でもっとも衝撃的だった。内容ではなく、手法的な意味で。
実在するTCGのメディアミックスであるにもかかわらず、TCG『WIXOSS』の面白さを直接的にアピールする描写は皆無。その一貫した姿勢は後編の『spread』に突入しても微塵もブレる様子はなく、ゲームルールは終始説明されることはないし、バトルシーンで飛び交う用語にいたっては、もはや当然のごとく投げっぱなし。
第一印象、なんなんだこれはと。
どうせ販促アニメだろ、という視聴者心理を見事に逆手にとって、商材の魅力を伝えることを完全に放棄し、それどころか、物語の魅力を引き出すために、セレクターバトルにあらずんば真の『WIXOSS』バトルにあらずと言わんばかりの商材シカトっぷりは、観ているこっちがタカラトミーの心配をしてしまったほど。余計なお世話だろうがw
でもって、アニメ意外とおもしろいわーあなどれないわー、なんて思ってるうちに、気づいたら、じゃあ実際の『WIXOSS』ってどんな世界観なんだろうとかググっちゃったりして。そんな自分の行動に愕然としましたですよ。
それってまぎれもなく「興味を喚起された」状態なわけで、というかそもそも、TCGという玩具自体に毛ほども興味ない人間に、こうして『WIXOSS』という文字列を書かせているという事実が、これはもうIP確立戦略という観点で言うと、きちんとプロモーションが刺さってると言う以外にないのですわ。
こういうのは本来アニメ感想の場で書くべき内容じゃないのかもしれないけど、いろんなプロモーション戦略があるんだなと、マジで感動してしまった。
『infected』はそれくらい個人的には衝撃だった。
*
■『spread』の失速
少々気の毒だなと思ったのが、前編の『infected』が予想に反して面白かったせいで、『spread』のハードルが、オリジナルアニメに対するものとしてはやや過剰なほどに上がってしまったのではないかってこと。
『spread』も十分に及第点と呼べる仕上がりなんだけども、『infected』の際にあった、「販促アニメの既成概念破壊」という付加価値は、残念ながら分割放映した時点で『spread』に補正として乗ることはなく、『infected』を純粋にアニメとして評価していた人間たちの、それはもう膨らみまくった期待をそのままズドン受け止める結果となってしまった。
また、前編の『infected』が、セレクターシステムに関わる美味しい設定面を全部持っていたような格好で、真実がどんどん明らかにされていく爽快感が物語を強力に牽引していたのに対して、続編となる『spread』は、それら設定の補足解説的な色合いが濃く、台詞にも説明的なものが多かったりで、スピード感という点では『infected』に劣る。
とはいえ、『infected』からずっと貫いていた、
・バトルを「する」or「しない」→なぜなら~
・バトルを「したい」or「したくない」→なぜなら~
このシンプルな構図を最後まで維持したのは評価したい。
言い方はアレだけど、明らかに収拾がつかなくなりつつあった終盤の展開を、良くも悪くもコレでごまかしてやがりました。