「PSYCHO-PASS サイコパス2(TVアニメ動画)」

総合得点
84.8
感想・評価
2439
棚に入れた
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ランキング
273
★★★★☆ 3.8 (2439)
物語
3.8
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.7

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ネタバレ

にゃんた さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.0 状態:観終わった

傍観者

1期、2期を通じて、理論の戦いが描かれており、
この手の「理論戦争モノ」の多くがそうであるように、話数が進むにつれどんどん複雑で難解になっていく。
1期の半分の11話しかないのに新キャラを増やし、しかも理論戦を主役に据えたものだから、各キャラの顔が見えてこないまま終焉を迎える。

じっくり考察したい人には面白いが、視聴には相当の体力が要る。
他方、気楽に刑事アクションをみたい、キャラに感情移入したい、適度に事件推理をしたい、
という人はペースを乱されて退屈に感じるかもしれない。
独自の考察を長々と書いて自己満足している、このレビューと同じだ。

以下詳細
{netabare}
●理論戦の概要●
~1期の内容~
シビュラシステムの発言
犯罪者は素質と環境(=犯罪係数)によって、必然的に犯罪を犯します。
ですので、犯罪を犯していなくとも、犯罪係数が高ければ刑罰を加える必要があります。
それが社会を防衛する最善で完璧なシステムなのです。

槙島の発言
人は自由な意思で犯罪を犯せる。犯罪は必然じゃない。
現に免罪体質者がいるじゃないか。
だからシビュラなんてものが係数を測って事前に裁くのは間違っている。
人は犯した罪に対して、後から同じ罰を受ければそれでいい(目には目を歯には歯を)。
どうだい?俺の法。こいつをどう思う?

常守の発言
法は「人によって」「人のために」作られるもの。
シビュラの法も間違っているけど、あなたの法もすごく小さ・・・間違っている。
「あなたの法」という時点で間違っている。
人々の意識の変化で、社会も変わり、法も変わるはず。
私はこのまま社会の変化を見守ることにします。

~2期の内容~
カムイの発言
犯罪係数によって処罰していますが、完璧な測定なんてできるのですか?
たとえば、ある集団が革命を目論んでいたら?その集団を計測できますか?
もしできるとするならば、集団であるシビュラ自身をも裁けるのではないですか?
免罪体質者を取り込んでいるシビュラという集団。その集団の色相は何色ですか?

常守の発言
法の外で物事を処理することはありえません。
あなた達集団も、法の下で裁かれねばなりません。

シビュラシステムの発言
たしかに集団の計測はできませんでした。
これから計測できるようにしましょう。
我々システム内部の犯罪(予備)者は消去しました。
これで色相はクリア。完璧なシステムになりました。

●常守朱の立場は?●
常守朱の立場は一貫している。
それは、シビュラの理論に反対しつつも、社会の自発的な変化を信じ、
シビュラの下にとどまって、変化する社会を見守るという立場だ。
「人の変化→社会の変化→法の変化」を見続ける姿勢である。

常守は、すべてを理解したうえで、なお傍観者の位置に徹する。
なぜなら、「法」は人のためにあり、人が作り出し、人が変化させていくもので、
一部の人が無理やり変えるものではない、と考えているからだ。
だから、悪法だと個人的に思ったとしても、その悪法を守る。
怒りや復讐という個人的感情によって法に背を向けることもしない。
たとえ自分1人で法を変えられるチャンスを与えられたとして、それをしない。
どんな法でも常に守る。それが常守の信念。
この一見消極的に見える姿勢こそが、彼女が色相を維持する秘訣なのだ。
彼女は特別に見えて、実は特別ではない。傍観者に過ぎないからだ。

この傍観者は、シビュラにとっては無味・無害である。
ゆえに、シビュラに否定的な彼女を排除しようとしない。
最終話の常守とシビュラの会話で、お互いにそれを理解していることがうかがえる。
シ「君を迎え入れては?という案が出ている。変革を望むなら内側から試みてはどうだ?」
常「そこまで私に興味はないクセに」

●「傍観者常守」は正しいのか?●
今の日本では、法を作るのは国民を代表する議員が集まった国会である。
「国民の代表者達が集合して多数決で作ったのだから、とりあえず正しいでしょう」
という一応の信頼のもとに法が施行され、社会を統制している。
ただし、代表者の集合体が多数決で作っているに過ぎないから、
正しいものばかりではないし、時代が進んで合わなくなる法もある。
一部の集合体が法を作っているという点は、シビュラと少し似ている。

シビュラと違うのは、その法が間違っているかもしれない、と社会が自覚している点だ。
だから、人々の変化は代表者である議員を通して国会に影響し、法も変わる。
また、その法を無効にするシステム(違憲審査権のある裁判所)もある。

これに対しシビュラの社会では、法はいつも正しいという前提なので、
作中では描かれていなかったが、国会はまともに機能しておらず、唯一無二のシステムが法を作る。
だから人々の変化があっても法づくりに影響しない。
法を裁く裁判所の機能もおそらく存在しない。

このような社会である以上、常守が考えるような
「人の変化→社会の変化→法の変化」はボーっと観ているだけでは実現しない。
「人の変化」と「社会の変化」が繋がっていないのだから。
ゆえに、シビュラシステムの下で社会を変えるには、革命が必要だ。
1期で狡噛が選択したのがこの立場であり、私もこの立場に賛成する。

実は、1期の槙島、2期のカムイらの行動は、動機や手段は褒められたモノではなかったが、
シビュラシステムという社会を変えようとする革命のきっかけではあったはずだ。

常守はこれらに対し、自分が否定しているシビュラの法を執行し、結果的に阻止している。
シビュラ社会を変える唯一の方法である革命の芽を摘んでしまっている。
法は人のために人が作り人が守っていく~、だから守らなければ~
という「抽象化した法」概念を振りかざして盲目的に法を執行する彼女は、
もはや傍観者でなく、シビュラの一部だとすら言えるかもしれない。

たとえるならば、現代の独裁国家である北○鮮で、
将軍様が作った勅令を間違っていると思いながらも、
人々の意識が変わることで社会が変わり法もやがて変わる、と信じ、
それまでは法を尊重し、守るニダ。革命分子は裁くニダ!
と行動しているようなものだ。

●肝心な理論部分の掘り下げは十分だったか?●
シビュラの理論は、以下のとおり。
①人は素質と環境(=犯罪係数)によって必ず犯罪者となる
②その犯罪係数は完璧に計測できる
結論:これで完璧な犯罪防止システムが完成する

このうち、
①部分に、個人で戦いを挑んだのが1期の槙島
②部分に、集団で疑問を投げかけたのが2期のカムイ

という具合に、場面と規模が変わったことと、常守の姿勢がより一層明らかになったという程度で、
シビュラシステムの欠点を指摘する者が出現→常守が追う→シビュラが対応する
という構造は変わっていない。

その先の、社会を、そして法を変えるためには、革命が必要か?
という、1期ラストで生まれた狡噛と常守の意見の違いについて、
2期ではまったく触れられなかったのが残念だ。
常守が狡噛愛用のタバコの煙を出し、彼を思い浮かべるシーンが何度かあり、
彼女自身、自分の選択について迷いがあるとも解釈できるのだが・・・。
続編?となる劇場版では、その点について意見が異なる狡噛と常守の再会、そして対決を見たい。{/netabare}

投稿 : 2014/12/20
閲覧 : 214
サンキュー:

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