「時をかける少女(アニメ映画)」

総合得点
89.6
感想・評価
4039
棚に入れた
21189
ランキング
77
★★★★☆ 4.0 (4039)
物語
4.3
作画
4.1
声優
3.7
音楽
4.1
キャラ
3.9

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ネタバレ

無毒蠍 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 3.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

『Time waits for no ore』…女子高生が経験したひと夏の時間旅行。使い古された設定ではあるが現代風にアレンジされた見せ方は新鮮で面白かったです。

原作は未読ですが特に不自由はありませんでした。
視聴したのはブルーレイ版ですが映像はちょっとまぶしいと感じるくらい綺麗でした。
音も良かったですし買ってよかったです。

紺野真琴、間宮千昭、津田功介の三人はいつも一緒につるんでる友人同士なんですが
真琴が時間移動できる能力を手に入れたことによっていつまでも変わらないと思ってた
三人の関係が少しずつ変化していくというお話です。
驚きの展開とかは特になかったんですが描写が丁寧で綺麗にまとまってたのが好印象。
基本的に僕はいらない要素があると減点していくタイプなので無難にまとまってる作品は好きですよ。

真琴が時間移動でやったことは妹に食べられたプリンを先に食べること(笑)
他にもテストで100点とったり遅刻を回避したりカラオケで延々と歌い続けたりと
タイムリープといっても特に使い道に派手さはなく非常に女子高生らしいものでしたね。
よくすごい使い方をしてる映画などもありますが普通こんな能力を手に入れたとしても
怖くて真琴のような使い道になってしまうと思いますしリアリティがあって共感できました。
こんな能力あったら就職活動も楽そうだなぁとか考えて観てました(笑)

SFファンタジー的なシナリオに邪魔にならない程度の恋愛要素を盛り込んだことが成功してる作品。
真琴、千昭、功介の三人ということで三角関係的な話になるのかと思いきやそうではなく、
恋愛要素で言えばあくまで真琴×千昭です。
しかしこの作品で重要なのは真琴を取り巻く環境なので
必然的に真琴、千昭、功介の三人の関係性というのが重要になってくるんですよ。
いつまでも仲のいい三人のまま時は流れて違う誰かと知り合い結婚すると思ってた真琴が
時間移動を繰り返していくうちに自分の本当の気持ちに気がつくというもの。
千昭の不意打ち気味の告白を時間を戻してなかったことにしてしまったところから
皮肉にも作品はめまぐるしく動き出すんですよね。

真琴が時間を戻したことによって真琴が得をしたぶん損をした人もいる。
そんなことが作中で言われてましたがまぁやっぱそうですよね、
時間を戻しても悪いことはなくならない、きっとそれは真琴を通り過ぎて他の人にあたるのでしょう。
例えば真琴がテストで1位をとったとしてそれまで1位だった人は2位になるでしょうし、
それが些細なことだと思っちゃうのが一番怖い事かも。

この作品は終盤の真琴の全力疾走に集約されてると思う。
時間を飛んで楽してた真琴が全力で走ってるのです…
遅刻したくなければ早起きする、テストでいい点とりたければ勉強する。
時間を戻すなんてファンタジーなんです、失われた時間は戻りません。

『Time waits for no ore』
「歳月人を待たず。」
時は誰も待っていてくれない…たしかにその通りです。
しかし人は時を待つことも出来れば努力次第で追いついたり追い越したり出来るのではないでしょうか?
歩いたり走ったり遊んだり勉強しながら未来の自分を築いてく。

この作品は時間を戻すことはあっても時間を進めることはありませんでしたが
それは真琴が未来なんて過去しだいでどうにでもなると思ってる心のあらわれに感じましたね。
なので余計に功介の真琴に対する「前見て走れ」という言葉が妙に頭に残りましたし
真琴が前だけをしっかり見て全力疾走してるシーンは一番好きなシーンです。
過去ではなく現在を生きてる力強さのようなものを感じました。

【未来で待ってる】という千昭の言葉。
この作品のキャッチコピーは『待ってられない未来がある』なんですよね。
つまりこれは自分から会いに行くという真琴の意思を表現してるもので
ラストの真琴がやりたい事というのはタイムリープ装置を
自分でつくるということじゃないかと勝手に僕は解釈しました。
未来のタイムリープ装置を誰がつくったかはわかりませんが
誰かがつくったなら真琴がその誰かになればいいのです。
真琴の時代の科学力じゃ現実的じゃないかもしれませんが
「未来で待ってる」という千昭の言葉に対して真琴は「すぐ行く走っていく」と返してますし、
時間を戻してばかりいた本作ですが結局のところ
望んだ未来を手繰り寄せるためには過去ではなく現在、
そしてこれからが大切なんだよという前向きな終わり方を考えると
千昭と再会するために何かしらの努力はするんじゃないかと思いました。
ちなみにED曲の「ガーネット」は実りの石や象徴とされてるようで
恋愛を成就させ積み重ねてきた努力が報われ成功するなどの意味合いがあるようです。
だからタイムリープ装置が種子だったんですねぇ。
他にも大切な人との別れに再会を約束して
ガーネットを贈りあったりと前向きな未来へと蒔かれる希望という種子だったようです。
この作品にぴったりの曲ですね!

僕にとって「時をかける少女」はタイムリープによるタイムパラドックスとかを楽しむ作品ではなく、
過ぎ去った時は戻らないという教訓を紺野真琴という女子高生の日常を通じて改めて得ることのできる
青春SFファンタジーでした!

【A80点】

投稿 : 2014/12/14
閲覧 : 307
サンキュー:

9

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