蒼い✨️ さんの感想・評価
3.4
物語 : 3.0
作画 : 4.5
声優 : 2.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
男の美学や生き様の話なのでしょうね。
【概要】
アニメーション制作:スタジオジブリ
2013年7月20日に公開された126分間の劇場版アニメ。
原作は、『モデルグラフィックス』に連載されていた宮崎駿による漫画作品。
監督は、宮崎駿。
【あらすじ】
話は大正末期。主人公の堀越二郎の少年期から始まる。
二郎少年は夢の中で、大空をプロペラ機で飛んでいたが、
近眼のためにパイロットを諦めざるをえなかった。
それが、尊敬するイタリアの航空技師のカプローニ伯爵が夢に出てきて、
飛行機の素晴らしさについて滾滾と説かれたことで、
自分も飛行機の設計者を目指すことになる。
長じて、東京帝国大学で飛行機の設計のために工学を学んでいた二郎は、
1923年に汽車に乗車していたときに関東大震災が発生して、
のちの妻である里見菜穂子と女中の絹と出会い、彼女らを助ける。
大学を卒業して三菱内燃機製造に入社して念願の飛行機の設計技師となった二郎。
新人時代から優れていた二郎はドイツへの企業留学を経て、
入社5年で大日本帝国海軍の戦闘機開発の主任に抜擢される。
これは、後にゼロ戦を作った実在の人物をモチーフとした、昭和初期の物語である。
【感想】
引退商法が恒例となっている宮崎駿氏が今度こそ本気だ!と、
自分の作りたいように作った作品。後の2017年にまた新作アニメの制作を公表して、
「君たちはどう生きるか」の完成は2023年らしいですけどね。
要はあれです。彼自身が好きな堀辰雄氏の小説の「風立ちぬ」「菜穂子」を、
実在の堀越二郎のエピソードにくっつけて脚色したフィクション性の強い話。
二郎の史実での妻の堀越須磨子は、架空の妻の菜穂子と違って、
結核を患ってませんし、6人の子宝に恵まれています。
これは、宮﨑駿が堀越二郎の名前と経歴を拝借した、モノづくりには子供のように熱中して、
その他のことには疎くて、一見優しくて紳士的な物腰でありながら、
無自覚に約束を破ったり人の気持ちがわからなくて全く気が利かない創作上の主人公に、
生涯をアニメーターや演出家として仕事をしてきた昭和の男の自分の姿を重ねて作った作品。
『自分の作った映画で泣いたのは初めてです。』
と、ドキュメンタリー番組で宮崎駿監督本人が言ってるように、
自分が楽しむために作ったアニメであり、彼のアニメ人生の総決算的なモノ。
このアニメの堀越二郎は、
見た目は実在人物とは似てないジブリ顔の好青年でありますし、
菜穂子はクラリスとかハドソン夫人とかを作ってきた自身の理想の女性像。
主演に声優ど素人のアニメ演出家の庵野秀明氏を起用したのも、
庵野氏を自分と同類の人種だと思っているからこそ、自分の代理として二郎に適役との判断。
演技せずとも、自己投影の対象の二郎の内面を声と調子で再現できるはずだとの思い。
しかしながら、その庵野氏のボソボソした棒読み声が本業の役者たちの間で浮いてますし、
声優嫌い?からこんなことまでやっちゃうのは理解の外ですね。
関東大震災時の生き物のようにうねる地面とか絵巻物のように描かられた群衆の動き。
空を覆い尽くす黒煙とか、レイアウト職人としての宮崎駿監督とジブリのアニメーターの実力。
5年もかけて作った映像のクオリティは流石としか言いようがないですが、
このアニメを十全に楽しむのには、そっちじゃなくて宮崎駿監督の人生や価値観を理解して、
更には堀辰雄氏の小説を嗜んでおく必要があるかな。
いちいち監督に忖度して評価するのも自分としては好きでないので、
純粋に楽しめなかったですかね。
昭和初期の雰囲気を楽しむ文学的な空気は悪くなかったですが、
軍部をうるさく吠えるブルドッグみたいに描いていたりで、
戦後の史観が入っていたり、やっぱり昭和の古い価値観から抜け出すことは、
この人には不可能かなと。やはりこれよりかは「この世界の片隅に」のほうが、
ノンポリであるがゆえに素朴かつ戦争の怖さを思い知らされたりで、
時代を切り取った話としては優れていると思いました。
これは、個人の感性の違いでしょうけどね。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。