無毒蠍 さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
「日本の父たちよ今こそ立ち上がるのだ!」大日本帝国に亭主関白を取り戻す起爆剤として野原ひろしが利用されてしまう悲しい物語。
グレンラガンやキルラキルの中島かずき氏が脚本を担当した劇場版第22作品目。
内容はエステから帰ってきたひろしがロボットになっていて「なんじゃこりゃ!?」的なシンプルなものですが
物語的には綺麗にまとまっていて最近のクレしん映画では秀作なほうだと思います。
いきなりロボットとして帰ってきた野原ひろしに対してテンションの上がるしんのすけと
野原ひろしだということが信じられないみさえ…
序盤はロボットになってしまったことで妻からの信頼を失ってしまったロボとーちゃんが
ロボとしての性能を活用し家事に日曜大工に子供たちを守ったり遊んだりしながら
家族の絆を取り戻していく様子が描写されています。
この描写は後半になると活きてくるようになっており後々の展開を考えると切ないですね。
話的にはどこかで見たような話なんだけど
野原ひろしにそういう設定を用いたというのがこの作品のポイントですかね。
普通の家庭で普通の家族と普通の父親として生活していた野原ひろしから「普通」が奪われてしまったのです。
敵の目的は日本の父親たちに威厳を取り戻させるというクレヨンしんちゃんらしいお馬鹿な目的でしたが
日本の親父たちで構成された「父よ、勇気(ゆうき)で立ち上がれ」
略して「ちちゆれ同盟」などいい意味で下らなかったです(笑)
野原ひろしをガンコロボとーちゃんとして覚醒させ「ちちゆれ同盟」を発足させる。
大日本帝国に再び亭主関白を!男尊女卑を!妻は夫を敬い子は父を尊敬しろ!
ひろし「ちちゆれ!ちちゆれ!」
一同「ちちゆれ!ちちゆれ!」
とても下らない目的のために行動してた敵さんだったけど今回彼らがやったことは
ある意味いままでのシリーズで一番酷いことかもしれません。
段々原さんが最後黒幕にあなたの一番の罪は人の心を弄んだことと指摘しますがまさにその通りなんですよね。
野原ひろしとロボとーちゃん、二人の父親の登場。
子供は正直です、父親が二人になっても特に気にした様子はありません。
しかし二人にとっては違います、家族を愛してるからこそ絶対に父親という立場を譲るわけにはいかないのです。
子供から父親として認められる話は結構ありますが父親から父親と認められる話は珍しいと思います。
認める側からしたら絶対に認めたくない相手だろうし認められた側からしても
別にお前なんかに認められたくねえよ!というのが一般的感情のはず。
敵の浅はかな目的のために翻弄された家族の物語といったところか。
個人的にこの設定ならもっと面白くなったと思うのでそこは少し惜しかったかな。
でもこれ以上煮詰めると重たくなりすぎちゃうかもしれないし塩梅が難しいところですね。
最近のシリーズの中では見応えある作品でした。
【B+78点】