101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
雪の街に埋もれた記憶を探して…。
※原作ゲームは未プレイ。
一面の雪景色…、白銀の世界…、ピュアホワイト…。
毎年、積雪した街並みを最初に目撃した時、漏れるのは感嘆である。
だが真っ白な風景を眺めているとだんだんと不安に駆られてくる。
雪は全てを白く覆い尽くす。
家と道路の境目…、空と大地の境目…。
境界が消滅した無の世界にだんだんと気が遠くなっていく…。
ともすれば夢と現実の境目、過去と現在の境目まで曖昧になる予感すら漂う…。
こんな白い世界の下に大切な物が埋まってしまったら大変だ。
どこを探していいのかも判然としない夢うつつの気分で彷徨わねばなるまい。
そしてこれだけ何もかも真っ白にしておいて…。
雪は手にした途端に溶けて消えていき、春には跡形もなく無くなってしまうのだ…。
…などとレビューそっちのけで何を感傷に浸っているのかというと(苦笑)
Keyの季節に対する感性が大変素晴らしいということなのであります。
Keyは『Kanon』を第一作目として、夏の『AIR』、春の『CLANNAD』と、
季節を舞台にした〝泣きゲー"を中心にしたコンテンツを量産しています。
その特徴としてクリスマス、お正月等の季節行事にあまり頼らない点が挙げられます。
イベントよりもむしろその季節の自然風景等から世界観を構築して、
そこから得た感性を音楽や物語に反映させていくのです。
本作でも不思議な出来事がたくさん起きます。
しかし実は突き詰めると現象自体は何も冬に起きる必然性はそんなにありません。
けれど場面場面で冬に対する鋭い感性が盛り込まれ、
冬にしか体験できないシーンが構築され心を揺さぶるのです。
例の如く「うぐぅ」「あう~っ」などとKeyが創造した非実在少女は、
アルパカでも出さないような不思議な声を発します(笑)
でもそこは敢えて童心に返ってキャラとコミカルに戯れるのが吉。
いつの間にかピュアになったハートの琴線に一冬の奇跡が喰い込んでくるはずです。
繊細な世界観にアニーメーション表現で応えた京都アニメーションの作画もお見事。
純心を取り戻したい方などにオススメな冬の感動作です。