どらむろ さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
戦闘機ファンタジー+少女達のモラトリアム。美しい世界観の良作
全ての人類が女性として生まれてくる異世界を舞台にしたSFファンタジー。
タイトルである「シムーン」と呼ばれる神聖な遺物とされる戦闘機に乗って、成人前の少女達が苦悩しながら戦っていく。
戦争物の側面もあるも、物語の本流はモラトリアムに揺れる少女達の葛藤や人間ドラマの群像劇にあり。
設定上、百合アニメなのですが、百合度は意外にそこまで強く無い感じも。
少女漫画的というか、宝塚っぽい雰囲気かも?
…序盤はかなり戸惑うかもですが、中盤以降まで耐える事が出来たならば、グイグイ引き込まれる名作です!
※ちなみにgyao!の無料放送で初視聴しました。
{netabare}『物語』
人類は全て女性として生まれ、17歳になると「泉」という聖地に赴いて女性か男性か性別を選択し成人する。
ヒロイン達の国家「シムラークルム宮国」は宗教国家で、信仰対象にもなっている神聖なる戦闘機「シムーン」を操縦出来るのは性別選択前の少女の巫女「シムーンシビュラ」だけ。
本来シムーンは神に祈りを捧げる神聖な乗り物だが、敵国の侵略に対抗すべく、仕方が無く巫女(シムーンシビュラ)のヒロイン達が戦火に巻き込まれる…。
と言う感じの極めて独特な幻想的世界観で繰り広げられる、SFファンタジー戦記。
ポイントは「人類は生まれてくる時は全員女性」という特異な世界観。
なので男性キャラ(成人の際に男性に性転換した)も全員が女性声優が演じており、宝塚めいた雰囲気がある。
シムーンは複座(2人1組)でパートナー同士の信頼関係や感情の機微が性能に直結している為、少女達のドロドロとした愛憎劇の渦中で、感情がすれ違ってピンチになったりする辺りが面白い。
全般に少女漫画的というか、ドロドロした少女同士の感情のぶつかり合いが本作の見所かも。
ある程度カップリングはあるのだが、物語が進む毎に色々な組み合わせがあり、その度に少女達の関係性が進展したり揺さぶられたり、目が離せない。
…かなり鬱々と悩んだり感情ぶつけ合うので、少女漫画的な機微に不慣れだと戸惑う面も。
まあ、たまにはこういうドラマも良いと思ったです。
シムーンは超テクノロジーの遺物で敵国の戦闘機より圧倒的に強く、「リマージョン」と呼ばれる空に描く紋章(ブルーインパルスの航空ショーみたいな感じ)で、広範囲を殲滅したりする魔法めいた必殺技が発動したり。
戦争物としてもかなり骨太で、敵国の侵攻理由が「公害で滅びかけていて、宮国のシムーンというオーバーテクノロジー奪取しないと滅ぶ」という切実な動機あり。
※「テラフォーマーズ」原作の中国班の裏切り動機と似ている。
アニメでは当分先かもですが。
ケタ違いの強さを誇るシムーンも、敵国の圧倒的物量に次第に押されていく等、中々リアルな戦争物でもあった。
宮国の上層部が無能というか、宗教勢力と軍部が互いに的外れな対立してて現場が苦労したり、政治要素も結構面白い。
戦争物としても面白いのだが、物語の主軸はあくまでもシムーンシビュラの少女達の濃厚なドラマにあり。
組み合わせも豊富にシャッフルされるので、その度にキャラクターの違う側面が垣間見えたりと、飽きないです。
※別作品だが「テイルズ・オブ・ジ・アビス」で、主要キャラクター同士が様々な組み合わせでの会話イベントで重層的にキャラクタードラマ展開していたのと重なる。
本作の方が先達ですけど。
無能(というか無理解)な本国の大人たちの思惑に翻弄されながらも戦い、互いに絆を深めていく少女達。
戦争物なので、途中で戦死者が出てしまう…。
しかし彼女の死が、敵国の巫女の心を動かし、終盤でメインヒロイン組の大きな助けになっていく流れが良かった。
少し泣けたです。
終盤に向けて「翠玉のリマージョン」という究極の儀式が鍵になっていく。
違う世界に旅立つ…。
不思議な展開で色々と考察出来そうだが、あまり良く分からない。
ラストはハッピーエンド寄りのトゥルーエンド、視聴後、不思議な満足感がありました。
総じて
少女漫画的で宝塚っぽい?少女達の(ドロドロ気味な)群像劇。
戦争物としても中々のクオリティー。
幻想的で美しい世界観。
等々、かなり面白かったです。
…特異な世界観と雰囲気に慣れるまでが大変ですが、中盤辺りから各キャラクターの心情が分かって来ると、そこからが面白いです!
『作画』
少し少女漫画っぽい感じ?な、2006年当時の良作画か。
幻想的な世界観描写、シムーンの摩訶不思議なメカデザイン等々が目を引く。
戦闘機物としてはヌルヌル動くタイプではないも、バトルも中々。
『声優』
オッサン含め全員が女性声優なので最初はかなり戸惑うw
メインヒロインのアーエル役の新野美知さんは、現在の感覚だと評価低そう。
しかし結果的にアーエルの良くも悪くも奔放(空気読めない)感じが出ていた。
小清水亜美さん、水樹奈々さん、能登麻美子さん、名塚佳織さん、桑島法子さん等々、当時の人気声優多数。
リモネは正に「能登かわいいよ能登」でした♪
全般に宝塚っぽい感じ?で、通常のアニメ基準だとやや戸惑う演技スタイルも多かった。
『音楽』
OP「美しければそれでいい」ED「祈りの詩」
共に中々美しく印象的な良曲。
BGMもタンゴ調の曲で、幻想的な雰囲気が良く出ていた。
『キャラ』
個性的な少女達に、それぞれ個別にしっかりとスポットが当たっている。
キャラ描写が重層的で、ヒロイン格が複数居る感じ。
アーエルはちょっと空気読めないウザい感じが難だが、そこが彼女の良さなので…。
ネヴィリルは序盤はウジウジと悩むのでフラストーション溜まるが、それも本作のモラトリアムな作風なので!
天才幼女リモネちゃんが可愛い。能登かわいいよ能登。
年長で苦労人なパライエッタとドミヌーラの心労、お姉さんは大変だなぁ…。
モリナスとワポーリフのラブコメの波動に終始萌えた♪
お嬢様なロードレアモンと、コンプレックスからツンツンだったマミーナのカップリングも良い。
パートナー組むのを拒否するマミーナ「あなたの髪型(三つ網)が嫌いだったのよ!」
ロードレアモン(大事な三つ網を自ら切る)下りは大いに萌えた!
意外や女子力の高いマミーナ可愛い…だけに、犠牲は悲しかった。
クールなオレっ娘ユンはまさかの終盤のヒロイン格だった。
何気にメッシス艦長など、大人にも魅力のあるキャラの層が厚いのも良い。
序盤はキャラ名覚えるの大変なのが難だが、各キャラにスポット当たっていく中盤以降、一人一人に愛着が出てきました。{/netabare}