蒼い✨️ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 3.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
正統派な銀河英雄伝説。
アニメーション制作:キティフィルム
1993年12月に公開されたアニメ映画。
『わが征くは星の大海』『黄金の翼』に続いて3作目となる劇場版・銀河英雄伝説。
原作小説の第1巻の最初の戦役であり、
宇宙暦796年/帝国暦487年2月に行われた、アスターテ会戦
OVA版の第1話『永遠の夜の中で』第2話『アスターテ会戦』にあたる部分をを再構成して、
原作には無いオリジナルシーンで補完をしたのがこの作品です。
前半部では会戦の前日譚として、
帝国側の主人公・ラインハルト&同盟側の主人公・ヤンの日常。
そして会戦が起きるまでの両陣営の政治的な経緯が描かれていて、
後半部では、長い尺をとって会戦が描かれています。
そもそも、帝国軍は同盟軍よりも軍事力で上回っており、
イゼルローン要塞を橋頭堡に補給線も短く済むのに、
帝国軍2万隻 vs 同盟軍3個艦隊合計4万隻
何故、帝国軍は同盟軍の半分の兵力で戦場に向かわねばならなかったのか?
その、理由付けが成されていますね。
実は、アスターテ会戦とは生意気な金髪の孺子・ラインハルトを負けさせるために仕組まれた戦だった!
負けて死んでしまっても構わないし、勝てばそれはそれで利用するだけ。
戦争とは政治の延長であり、
戦略とは戦場に到着する前に勝敗の帰趨を決するものであり、
戦術とは戦略を完成させるための技術でしか無い。
銀河英雄伝説で語られる戦争論ですが、
銀河帝国の戦争では軍人とは駒であり兵士は消耗品。
宮廷での陰謀劇によって、生殺与奪がどうにでもなる恐ろしい世界ですね。
さて、この作品を観て思ったこと。
・OVAと比べてナレーションを極力抑えて作画の芝居で感情表現をしていたのは良かった。
ナレーションだらけにするのは声優の人数を減らしてコストカットの意図があったのだろうかw
・姉・アンネローゼのもとへ向かう馬車が遅すぎて苛立つラインハルトと宥めるキルヒアイスの会話が、
いかにも言いそうで微笑ましかったです。(原作で類似のシーンが有ったか失念)
・いつも怒ってる不遜な野心家のラインハルトが姉の前では子供っぽく戻るのが良いなと思いました。
・OVAでは削られていた、ラインハルトと皇帝フリードリヒ4世の会話。
心の底を見透かされているように思えてラインハルトが狼狽するこのシーン。
凡庸な灰色の皇帝という世評に反して、底の知れない人物という見せ場です。
脚本家の人は、これを入れたくて仕方なかったんだろうなと思いました。
・ヤンとOVAでは1話目で戦場に散った親友・ラップ少佐、
そしてジェシカとの長年の友情と三角関係が丁寧に描かれていて、大人っぽい雰囲気でした。
・にしても、主人公の親友ポジで善人。しかも声が田中秀幸って…存在そのものが某フラグが立ちっぱなしな気がw
・今回、ラインハルトの麾下で戦ったメルカッツ大将とファーレンハイト少将が無茶苦茶カッコいい!
メルカッツ役の納谷悟朗さん、渋みの有る百戦錬磨の名将を見事演じきってて良かったですね。
そして、昭和から35年近くイケボ声優を続けてるファーレンハイト役の速水奨さんの声と演技も、
やっぱりカッコいい。
・対して同盟軍の第6艦隊司令官・ムーア中将が第4艦隊司令官・パストーレ中将が酷いw
見た目も性格も声もまさしくヤラレ役。
傲慢で脳筋っぽいムーアに、敵の急襲に情けなく部下に責任転嫁するパストーレ。
OVAと比較して徹底したキャラ作りでジャイ○ンとス○オを意識したように思えますw
・『わが征くは星の大海』では能力・人格ともに最悪レベルに描かれた、第2艦隊司令官・パエッタ中将。
栄達を求めて国防委員長ヨブ・トリューニヒト閣下に媚びを売る(原作にはない)など、
今回も碌でもない役回りかな?と思っていたのですが、
敵(ラインハルト)に襲われて通信が途絶した親友のパストーレ中将の安否を気遣う様子を丹念に描かれ、
人格面では比較的マトモに扱われていた気がします。
参謀の一人であるヤンの作戦案を却下した挙句に決断が裏目裏目に出て、
負傷により艦隊指揮能力を発揮すること無く指揮権をヤンに委ねることになったのですが、
原作の表現からの逸脱はないので特に文句はないです。
総評
・原作と比較して物語に特に違和感を感じさせず、
脚本家の河中志摩夫さん(田原プロデューサーの変名)が原作を熟読し、
いかに原作を愛してるかが伝わってくる作品でした。
映画として意外性は全く無く優等生すぎる作りですので観た人はどう思うかは微妙なのですが、
銀河英雄伝説を未見の人へのリトマス試験紙としては最適な作品だと思いました。
合うようならOVAをそのまま見てもいいですし、合わないようなら考えなおすって体ですね。
これにて感想を終わります。読んで下さいまして、ありがとうございました。