「PSYCHO-PASS サイコパス2(TVアニメ動画)」

総合得点
84.8
感想・評価
2439
棚に入れた
13714
ランキング
273
★★★★☆ 3.8 (2439)
物語
3.8
作画
3.9
声優
3.9
音楽
3.9
キャラ
3.7

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ネタバレ

生来必殺 さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

もちろんノイタミナですから

「対象の脅威判定が更新されました。オーバー4.5、嗜好対象です。」
(なお+0.5は劇場版への期待ポイント)

1期→2期を通して痛感したことは、それはやはり本作が正真正銘のサイバーパンクであるという衝撃。

やはりノイタミナだけあってかなり渋い、渋すぎる。
描かれていることは単純なようでいて実は奥が深い。
1期の時もそうだったが、2期は更に意味深く、更にわかり難い。

サイバーパンクという枠を外し、もっとソフトに自由な方向性を目指せばもっと万人受けしたかもしれない。
(とりあえず、あの人気キャラを再登場させるとか。)
しかし敢えて硬派な路線にこだわり、論理的完成度をまず優先させた姿勢については大いに評価したい。

「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」的なテーマを
シビュラシステムという斬新な切り口で料理する手腕、発想力は賢者級。
(「シビュラ」とは、神の神託を受ける巫女であり、預言者を意味する言葉である。)

{netabare}そして預言者と言えば十戒のモーセであり,、有名なところだとアダム、ノア、
アブラハム、ダビデ、ソロモン、ヨハネ、イエス
(第4話のタイトル「ヨブの救済」のヨブ)などもその類。

預言者とは神と契約を結び、神の言葉を受け、人間の生き方、人間という存在のあり方を示す者。
神の教え(=十戒=人間の正しい生き方)に忠実ならば、契約に従い、神の救いがもたらされる
という仕組みでもって、良くも悪くも人間社会は合理的に機能し始めるのだが。
(仮にそれが自称預言者の嘘だとしても、嘘も方便で信じる者は救われる。)

やがて時は流れ、神託や契約で定めた人間の掟を疑いだし、否定する者が現れる。
「神は死んだ・・・」とか、「これからは超人の時代」だとか・・・
ざっくり言うと本作はそういう方向性をもった物語なのかも。{/netabare}

古典的な議論を念頭に置きながら、人間のあり方や社会正義、法と秩序とそれにかかわるシステム論などを扱う。

当初は、論理構成だけは破綻なしで終わって一安心という感想に留まるかと錯覚したが
冷静に考え直してみたらかなり優れている作品に思えてきた。

サイコパスのかなり危うい設定、ある種の綱渡り状態にあるのだが
絶妙のバランス感覚で、実はすべて計算ずくのごとく見事に次のステージへと辿り着いた。

2期に対する不安は単なる取り越し苦労で、少なくとも1期の設定が真だと
認めた者が、2期の設定は偽であるということができない仕組みになっているようだ。
(OPで引っかかったリピート再生の技法が生きており、リピートすると
色々なことが見えてくるカラクリか?)

ほんの僅かなバランスの崩れですべてが台無しになる危険性を孕んでいるのは
今後の劇場版においても相変わらずのことだろうが、2期でシヴュラシステムについての布石
を打ったのはかなり重要な意義があったように感じた。
この布石は劇場版だけでなく、1期の内容を補完する上でも有意義で
リピート再生することによりサイコパスシリーズはより一層その「輝き」を増す
作りになっていると予感する。

個人的には、1期を見ていた頃はシステムの名が(シビリアンコントロール的な意味の)
シビラと勘違いしたり、シュビラと間違えたり、要するにそんなのはどっちでもいいと思ったものだが
2期を見て内容がわかりかけてくると「シビュラ」でなければ意味が通らないことに気がついたり。

公安局監視官が羽織るレイドジャケット{netabare}の背面のあの意味深な紋章{/netabare}。
1期を見ている頃には全く視界に入らなかったのだが・・・
今回あまりにも繰り返して映し出されるのでとても気がかりになった。
劇場版でどう展開してくれるのかとても楽しみである。

2期というのはどういう意図で作られたか推測するならば
シビュラシステムの全容解説と1期の補完、劇場版への導入作品ということができるだろう。
全11話という尺では何を描くにも少なすぎるし足りなすぎる、サイコパスという作品について言うならば。

なので不完全燃焼感やもの足りなさが全くないと言えば嘘になるが、
次作への期待値が上がると言う側面もないわけではない。
劇場版で鮮やかな着地を決めてくれることを切に願いたい。

シヴュラシステムとは人類の理想であり、
理想的管理社会を象徴的強化モデルとして再現したにすぎない。
自由放任主義や新自由主義が無邪気にユートピアの夢を見るなら、
そのカウンターパートも理想郷を夢見て当然で。
かつて世界で最も成功したと言われる社会主義(システム)の国日本が
新自由主義の破綻で再び社会主義に傾斜するのは必然であるはず。


以下は瑣末なネタバレ的戯言の羅列。。。閲覧注意!
{netabare}
○ジャケットバックプリント、公安のマークは?
ありがちな解釈だと「アスクレピオスの杖」で
医療と医術の象徴的シンボルマークでアメリカ陸軍医療部隊のバッジにも描かれているから
厚生省のマークとしては適当なように思えるが、実は
2匹の蛇が翼を戴く杖に絡み付いているのは「ケーリュケイオン(カドゥケウス)」で
ギリシア神話のヘルメースが持つ、死に行くものを穏やかにしたり死人を生き返らせる魔法の杖と言われているもの。
商業的等価交換意味合いを拡大解釈すると天秤が象徴するのと重なるかも?

どうやら、ヘルメス・トリスメギストス
神秘思想・錬金術の文脈に登場する神人、伝説的な錬金術師を暗示する意味で
カドゥケウスが使われたようだ。
「東金」と「錬金」、近いような気も・・・

○東金執行官は雑魚すぎたか?
第一印象はそう感じたが、システムのイレギュラー対策補助装置と考えたら合点がいった。
原動力は倒錯した愛情、愛着。攻撃対象を捕捉すると戦闘モードに移行して
愛情的なエナジーが憎悪に転換黒く染まる・・・
システムの重大な欠陥、全能性の綻びを察知しそうな有能な監視官が現れると
自分の黒さを感染させ、ドミネーターで粛清してきた?
公安局刑事課が人手不足な要因の一旦とも考えられる?

○「ヨブの救済」
信じる者は救われない話。
ヨブ記を念頭に置いて見るとさらに残酷性が増す。

○「石を擲つ人々」
石打ちの刑は原始的な残酷な刑罰、(社会的集団的)リンチによる死刑
それが「ハングリーチキン」という名のゲーム上で行われるからより酷い。
「鶏」は牛や羊に順ずる家畜、主によって飼いならされる社会の共有財産的資源、対象。
家畜の中でも最も臆病な鶏が餌に群がるように
人や家畜に災いをもたらす反社会的存在の魔女、悪い魔女を狩るゲーム。
(魔女ネタについては、最終話で局長が将来の懸念の魔女狩りについて言及する)

家畜ネタの引用は槙島も好きだったようで。
リピートする家畜ネタ「焼いてくれと願ったのは家畜にされた人々だ」とかもある。

○新米監視官
頭脳明晰で正義感がとても強いスーパーエリート。
シビュラ世代という運命的設定なんであんな感じだが、典型的な愛すべきへたれキャラに期待値は急上昇。

○カムイは意図して殺戮を行ったか?
厚生省公安局や経済省の役人はターゲットだっただが、
一般市民については積極的殺戮を意図してないようだ。
メンタルケア施設での標的も監視官でシステムを理解するのが主目的。
彼の協力者が自分の意思で最終的に暴走するのは、カムイにとってイレギュラーか?
洗脳と薬物投与の副作用として必然的因果関係があるか、解釈がわかれるところ。

○殺戮は必然
シヴュラシステムというものを大前提としてる以上は執行官であれ監視官であれ
ドミネーターによる合法的殺戮行為は通常業務の範囲内にすぎない。
現に1期では冒頭から狡噛執行官が人質を奪って逃走する被疑者をクールに爆殺。
青臭い新米監視官が止めなければ、シビュラの名の下に人質の被害者までクールに爆殺するところだった。

それに比べるとカムイは全くと言っていいほど慈悲深い。
シビュラによって虐げられ、迫害された社会的弱者の苦しみを理解し救いの手を差し伸べようとした。
飛行機事故から生まれた怪物、名前のない怪物というのが彼の本性ではないようだ。
むしろ人の血が通ってないようなドス黒い怪物は彼と対極にいる側に当てはまるように思える。
ドス黒い怪物が血を欲するならば、それを信奉する子羊たちは代償として血を献上するのが道理。
虐げられる者か、信じるものかの違いはあっても、この大前提がある以上は
血を流さない選択などはなかったと彼は悟っていたのだろう。

○西暦2112年頃、新自由主義経済は破綻
自由放任主義経済の最大の弱点は市場介入に消極的すぎて金融危機に迅速に対応できず、
株価の大暴落や取付け騒ぎが誘発、金融機関が連鎖倒産、結果的に世界恐慌を許してしまうこと。

かつての日本は官僚主導型社会主義と呼ばれていた。
政治分野におけるシンクタンクと言えば官僚が真っ先に挙げられ。
政策秘書を「ブレイン」と呼んだりするが、官僚や官僚経験者だったりすることもしばしば
課長補佐級をそう呼ぶか、事務次官級をそう呼ぶかの違いはあっても
実質国策の是非を判定してるのは彼等であると言うことができるかも?

{/netabare}

投稿 : 2014/12/28
閲覧 : 378
サンキュー:

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