101匹足利尊氏 さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
今なお時代の三歩先を暗示し続ける98年今敏監督作品。
最近アカデミー賞映画『ブラック・スワン』を再見したので、
元ネタ?とされる本作も再鑑賞。
演技者が演目と現実の境界を見失い自失していく狂気を、
『ブラック・スワン』の10年以上前に映像化した進取の気性。
それだけでも既に異彩を放っているというのに、本作の先見性はこれだけに止まりません。
当時はインターネットが民間普及してきた黎明期。某巨大掲示板など影も形もない頃。
この時代で既にネットの向こう側の自分の虚像が独り歩きする恐怖を先読み。
さらに興味深いのは本作が主人公がアイドルからの転身を目指す、
広義の意味でアイドルアニメ映画でもあるということ。
1998年頃は80年代アイドルは衰退、転身等でほぼ絶滅。
モーニング娘。もブレイク前夜。
アイドルそのものが今風で言うとオワコン化している時期。
いくら原作小説家が衰退するアイドルからの転身の要素にこだわっていたとはいえ、
アイドル超氷河期にアイドル物を劇場公開するなんて正気の沙汰じゃない。
ですが、奇才・今敏監督が怪腕を発揮し、
この難しいネタを今後の社会に起こり得る事象に絡めて巧みに料理。
現代にも多くの示唆を与える迫真のアニメーション化に成功しています。
アイドルブームが続き、アイドルアニメも量産される昨今。
いつかはやってくる老いとブームの下り坂も見越して、
卒業して汚れ役に挑戦したり脱いだりする元センター等が現れる今日この頃。
ネットを通じたアイドル脅迫が断続的に続く中、
リアルでアイドルが襲撃される事件も経験した2014年…。
その時代の傍らでこの〝青き予言書"は一層不気味な光を放つのである。