animeneko さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
雰囲気満載の百合ミリタリーロマンSF
もう八年前の作品だが一挙視聴。
百合もので少女のキスシーンがたくさん出てくるので百合耐性、キス耐性がないと視聴できないが、そこを乗り越えれば楽しめる、SFファンタジー百合ミリタリー物語。物語要素が、
SF+戦争+異世界ファンタジー+メカ+百合+キス+ジェンダー
ぐらいかな。百合物とはいいながら、女性同士の醜い愛憎を描く場面が少ないので男性でも女性でも楽しめそう。
舞台設定は、すべての人類が女性として生まれ、成長して男性として生きるか女性として生きるかを選択することになっている惑星での戦争。兵士はすべて性選択をする前の少女たちだ。性別を選択できるSF設定て、萩尾望都の「11人いる!」であったけどSF世界ではよくあるのかな?なんと斬新な百合設定だろう!
乗り込む飛行機メカを動かす動力がどうやら少女達のキスによって生まれる愛の力のようだ。少女たちは乗り込む前にキスをして愛を高め合ってから乗り込む!愛の力がないと飛行機が動かないのだ!なんという設定かw
もう、設定だけでも優雅、耽美、愛の少女たちというスゴイ世界なのに、描かれるドラマがまた、優雅だったな。
物語は、キスシーンは確かに沢山出てくるが、しかしそれ以上のエロシーンや性行為などは出てこないし、エログロや暴力シーンに逃げるということがなかった。描かれるドラマはシムーンという乗り物に乗り込む少女たちの愛や葛藤という純粋な主張なのだ。スタッフのこのアニメでの「描きたいもの」にはブレがないのがストーリーを見ていくとよく分かる。テーマは「永遠の少女」とてもいうべきで、戦争ドラマは付け足しに近いか。
この物語では宗教もまた大きな要素を占めている。このアニメに出てくる宗教は中世キリスト教ぐらいの支配力で民集にすなおに信じられており、シムーンに乗り込むパイロット達はみなに崇められる神聖な巫女なのだ。特に宗教批判的な部分はなく、この惑星ではまだ宗教腐敗的なものはないようだ。
この惑星では性別選択の儀式の際には泉と呼ばれる場所に行って、一番偉い巫女様に性別を決めてもらうことになっている。
このアニメの飛行メカ、シムーンのデザインは、普通に考えたらこれ飛びそうもないよなというような、巨大なオーム貝みたいのが回っている物である。このトンデモなさそうなメカを超古代テクノロジーと称して飛ばしてしまうことが、このアニメのファンタジー性を高めている。技術的には無線通信すらない19世紀より前の世界だが、このシムーンだけは使える不思議な世界である。シムーン飛行艇の作画はCGで描かれているが当時のCGとしては、とてもスムーズに美しく動いているように描かれていた。
これだけの舞台設定をよく考えたなーと思われるだろうがSF小説などではこれぐらいはあったりする設定だったりするんである。
本来は宗教行事に使われるはずの飛行艇シムーンに乗り込む、本来なら巫女だったはずの少女たちが織りなす、愛と葛藤の物語がこのアニメということか。
シムーンの兵器としての必殺技は、リ・マージョンと呼ばれる空に描く幾何学模様から発する衝撃波で、この衝撃波で多数の敵を殲滅する。このリ・マージョンも本来なら宗教行事のためなのだがこの戦争のために兵器として使用されている。
人物作画は各キャラがエロくカワイク描かれており、作画的にも耽美優雅路線を守っている。
ストーリー的には、全26話もあるので普通なら、途中でお話がダレても良さそうなのに、このアニメでは途中であきることがなかった。無駄なエピソードや無駄なキャラを作らず、全26話でも足りないぐらいの世界観を持っているため、無駄なお話部分がなく、サクサクとお話が進んだせいで、退屈とは無縁なストーリ展開になっていた。
安っぽい宗教批判みたいなエピソードもなく、民集と戦争との関わり部分とかパイロット達の生活部分や民集生活についてもしっかり描かれていたので、設定から脚本作成までしっかりとした仕事をしていたのがわかる。
使用されていた音楽は、タンゴを基調としたクラシック系だろうか。作品の優雅な雰囲気にしっかりとマッチしていた。
これぐらいの世界観、しっかりとした設定とテーマと描きたい目標を持って、独自のアニメを作ったことはすばらしい。