おぬごん さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ノイタミナの集大成
かつて神童ピアニストとされた少年が、少女との出会いを機に再び過去と音楽に向き合う話
物語としては終始王道かつベタな青春モノ
特徴と言えば、随所で詩的なモノローグで心情が表現される点くらい
キャラも王道でベタだし、ギャグもシリアスとの落差がありすぎてちょっと寒い
(もちろん王道はすなわち覇道なのでとても良かったのだが、話やキャラの心情の機微に関しては他の方が触れてくれると思うので、私は敢えて語らないでおきたい)
この作品は、アニメとしての魅せ方のレベルが半端ではなかったのだ
桜や星空、そしてヒロインの髪や肌に代表される色の表現、主人公のトラウマの際のピアノに潜っていくような演出、そして何より演奏シーンでの音楽と映像の共演など、とにかくメイン部分から細部まで、演出が素晴らしかった
演奏シーンでは素人でも違いが分かるレベルに場面場面で曲の雰囲気を変えて雰囲気を出してくれたし、その他の劇伴も作品に合ったクラシックベースで良かった…特にきらきら星のアレンジBGMは印象的
作画としても淡く美しい絵を常にハイレベルに保っていたし、途中には驚きの一人原画回を挟むなど、絵の面でも贅沢かつ美しく魅せてくれた
ちなみにイシグロキョウヘイ監督はこれが初監督作品
プロデューサーを含めたスタッフとの出会いは、ちょうど4年前のノイタミナの後枠「放浪息子」だったようで、本人がtwitterでも言っていたように、回のラストでサブタイトルを出す演出やEDの終盤に音楽に合わせ予告映像を重ねる演出などは、放浪息子のあおきえい監督のオマージュだった
声優はメイン4人を若手で固め、梶くん、早見沙織、茅野愛衣といったノイタミナで主演を演じてきた面々が脇を固めるキャストも良かった
終始憑き纏う過去に悩み続ける主人公、そして終盤の展開など、あまり気軽に楽しめる作品ではないが、しかし青春期の心情を見事な演出で描ききった名作だった
…ここからは余談だが、この作品で、5年間続いてきたノイタミナ1時間(2枠)体制は最後となる
上述のようにスタッフの集結、スタートがそもそもノイタミナ作品であり、また優秀なスタッフを集める資金力、ノイタミナに育てられたと言っても過言ではない早見沙織と茅野愛衣の助演など、随所にノイタミナの本気を感じることが出来た
あと、この作品は原作に合わせほぼ同時に完結するという「とらドラ」や「鋼の錬金術師FA」で行われたスタイルがとられた
これには優秀な企画力が必要だが、そういった面でもノイタミナという枠の強さを改めて感じさせてくれた
それからこれは推測だが、そもそもこの作品も音楽という題材といい詩的なモノローグといい、のだめカンタービレやハチミツとクローバーからの影響を多分に受けていると思われる
どちらもノイタミナを語る上では外せない名作だが、そういった名作の影響を受けて生まれた作品が、ノイタミナの一つの節目を飾り、またスタッフもそれに応えたというのは感慨深い
キー局ならではの資金力や企画力を持つ、ノイタミナ
やや迷走を感じた時期もあったが、その唯一無二の可能性を十二分に示してくれた