woa さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
CCにとってギアスとは何か
ロボットであるとかSF要素であるとか、政治劇のような側面はオマケであり、本質は身体の不自由な妹の居場所を作る兄の物語である。
しかし適者生存、弱肉強食の父性的な社会においてその夢を実現させるためには、兄自身は強くならなくてはいけない。その過程で初めてロボットやギアス、政治といった装置が利用されるのだ。
目的はどうあれ、強くあるというのは適者生存のルールに則って他人の命を奪うことである。主人公にとってこのルールを敷いた絶対的強者であった父親が自身によって淘汰されてしまうのは皮肉な話だろう。
主人公は理想のために多くの犠牲を支払わなくてはならない。
結果として自身の最終的な目的である妹自身に離反され、唯一の理解者である親友にも、同じように守るべきものを持つことで主人公に憧れを抱いていた女性にも裏切られ、全員の憎しみを一身に受ける主人公の人生にはあまりにも救いが無いように思える。
しかしたぶんもっとも救いが無い事実は、主人公は自分の行いに満足している事なのだ。
これはギアスという人にはない力を得てしまった主人公が、自身を完全に特権視し独善的になっていることを示す。相対的な指標であるべきヒロイン、カレンがルルーシュを見捨てるのも、彼自身の自己陶酔に付き合う義理が無いからなのである。
彼が自分の守りたかったものを守れたのか、そもそもそこまでして守る価値があったのかどうかは自分としては疑問である。多大な犠牲を払ってまで得た妹との居場所を妹自身がどう思うかを考えてみれば、誰でも彼の自己犠牲の精神には反対すると思うのである。
唯一救いがあるとすれば、彼に目的を遂行する力を与えた女性、CCというキャラクターは彼の同伴者的存在なのであるが、彼女は歴史や人間を超越した存在であるため、状況から一歩引いた視線で主人公の行いを最期まで観察する。
そしてCCとルルーシュにとっては、このような絶望的な展開でさえも孤独では無かったとつぶやくのである。主人公の物語(ギアス)があったからこそ、彼女は再び世界や人間に期待を持つことが出来たのである。
結局誰にも理解されなかった主人公にとって、CCというすべてを見通せる存在の孤独ではないという言葉が唯一の救いなのだ。
この作品はCCが言う通り、孤独に限りなく近いが孤独とは「少し違う」話である。