蒼い✨️ さんの感想・評価
2.7
物語 : 1.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
ラノベの設定に文句つけるのは野暮と知りつつも…
【概要】
アニメーション制作:Studio五組、マッドハウス
2012年7月 - 9月に放映された全12話のTVアニメ。
原作は、GA文庫(→富士見ファンタジア文庫)から刊行されている、
春日みかげによる、本編22巻+外伝8巻+短編3巻のライトノベル。
原作イラストは、みやま零が担当。
監督は、熊澤祐嗣。
【あらすじ】
逃げる学ラン高校生と足軽のおじさん。二人が向かうは尾張国。
足軽の目的は今川家から寝返って織田家に仕えること。
学ラン高校生は気がついたら合戦の最中の戦場にいた。
足軽の夢は、一国一城の主となって女の子からモテモテになること。
学ラン高校生は負けず劣らずスケベで、その足軽の夢に意気投合していた。
しかし、足軽は流れ弾で戦死してしまう。
死の間際に明かした足軽の名前は、木下藤吉郎。
後の関白秀吉が、こんなところで死んでしまっては歴史が変わってしまう!
そう考えた高校生は、死んだ藤吉郎の代わりに織田家に仕えるのだった。
織田家の当主は織田信長ではなく織田信奈という少女であり、重臣も若い女だらけ。
学ラン高校生こと相良良晴は、ゲームで得た歴史知識を元にして、
未来を知る者としてのアドバンテージを頼りに、織田家での立身出世を目指すのだった。
【感想】
過去のレビューが適当すぎたので、二周目の視聴をしました。
歴ゲーオタクの高校生が史実と違って武将の殆どが美少女になってるという、
パラレルワールドな戦国時代に迷い込んでは、冒頭で戦死した秀吉に成り代わり、
織田家に仕えては記憶してる限りのゲームで得た戦国時代の知識を駆使して、
本来の秀吉の活躍をトレースして織田信奈の天下布武を手伝ういうあらすじ。
あと、威厳の無いツンデレヒロインと化した主君の織田信奈と恋仲になるという話。
なお、史実の木下藤吉郎が1537年生誕を採用すれば織田家に仕官したのは17歳(数え年18歳)であり、
主人公の良晴と同じ年齢ですので、良晴からオッサン呼ばわりされる筋合いはないのですが、
信奈世界での戦国武将の多くが姫武将であるのと同様に、
この藤吉郎は年齢含めて史実の秀吉と別の存在なのでしょう。
その藤吉郎の人脈と立ち位置を出会って間もない良晴があっさり引き継げるあたり、
かなりのご都合主義があります。
織田家当主の織田信奈は天下取りの夢や先見性を持っているものの、
情緒面では年齢相応の等身大の少女として設定されているためか、
信長と違って理屈でわかっていても感情で割り切れずに判断が鈍る優柔不断。
冷徹になりきろうとするが、情緒不安定に過ぎて更には泣き虫。
そんな弱い信奈を、主人公の相良良晴の言葉で支えられて、
そんな信奈が良晴に惚れていくというのが、このアニメのパターン。
うん?ここまで信長のキャラを崩すなら、
日本史の戦国時代をモチーフにする意味ないじゃない?
たかがラノベ設定なのですが、元ネタになった登場人物らしさが殆ど失われている。
ならば、架空世界の架空の中世の物語で良いじゃない?という疑問。
ゼロべースからキャラを構築するより既存の有名人の知名度を借りたほうが、
覚えられやすいというメリット。そこにギャルゲーやエロゲーのテンプレで塗り固めての、
いいとこ取りがキャラ作りに有ったと思われますね。
だいたいにして、この作品。原作1巻が2009年発売で、
そのベースには三國志の武将を全員女性にした2007年発売の、
アダルトゲーム『恋姫無双』が存在しているのだと思うのですよね。
女性化した三國志武将で天下統一を目指してハーレムを築いていく、
『恋姫無双』の主人公・北郷一刀に位置するのが、
姫武将だらけの戦国時代にてのハーレム願望を抱く相良良晴で彼はエロゲ主人公そのもの。
やはり、この作品の根っこにあるのはエロゲ的なキャラ付けをされた姫武将たちの間で立ち回る、
男主人公をいかにキャッキャウフフ&活躍させるかにあるのでしょう。
そこをエロゲー(ギャルゲー)のプレイヤー目線で視聴者が楽しむという類のもの。
ちなみにこの主人公・良晴はアニメで見る限りは用兵を学んだとの明言もないのに川並衆を指揮し、
槍も刀も持たずに最前線の死地にいるという。敵を斬るのは犬千代や五右衛門の役割で、
綺麗事だらけを口にする主人公は自分の決断ひとつで死人が出る戦場でも、
お綺麗なままでいさせたいのでしょうか。
美少女武将揃いの当作品にて女も男に劣らぬ、むしろ男以上の戦闘力を持ってるはずなのが、
部下の兵士が全員男性であったり世界観がちょっと解らないですね。
林・佐久間・美濃三人衆などの名あり男キャラが、モブ同然な見分けのつかない見た目であったり、
関白の近衛前久が話の都合でただのクズ麻呂にされて汚れ役を押し付けられたりの女尊男卑で、
男の扱いが粗略な点。そして女の上に主人公が位置するという。やっぱり世界観がエロゲーですね。
話の筋としては、桶狭間でも美濃攻めでも織田家が絶体絶命のピンチに陥っては、
主人公である良晴の大活躍で勝利するの繰り返しなのですが、
仮に良晴がいないと桶狭間での奇襲が成立しなかったり、墨俣築城が稲葉山城落城に直結していたりで、
織田家が良晴に依存しきって、いなければ簡単にすっ転ぶ弱い存在に見えてしまうのですよね。
信奈は良晴にとっては最大の攻略対象であり、恋愛のためにはフラグを立てなければならない。
仮に信奈が精神的にも女信長であるならば、歴ゲー好きの高校生ごときの言葉に一喜一憂することもなく、
自らの判断で歴史を切り開く英傑として描かれるべき存在なのですが、
信奈が強ければ良晴とフラグを立てるのに邪魔ですから、良晴の都合でメンタルが大幅に弱体化している。
信奈が数々の修羅場をくぐり抜けて戦国大名としての強かさと非情さを得ていく成長の芽を、
良晴の現代日本の甘っちょろい価値観で全否定されて摘まれて、良晴が望む方向に誘導されていく。
信奈が信長化しないように、良晴に展開が支配されているのが戦国ものとしてスケールダウン。
数々の巨大な英雄がいて、歴史の奔流の中で主人公が居場所を見つけて、
自らの役割を得ていくという話ではなく、主人公をカッコつけさせて活躍させるために、
戦国時代の面白さや登場人物のモデルとなった戦国武将の魅力が常に損なわれている感じ。
年長者だろうが有名武将だろうが、『アンタ』『アンタ』と敬語を使えない良晴の説得で、
戦国武将が言い返しも出来ず言葉が詰まっていくところ、武将たちの格が落ちていますね。
考えてみてください。歴戦の戦国武将はヤクザより怖い存在。
荒事や修羅場を幾度もくぐり抜けてきたはずの猛者が、
平和な現代日本の歴ゲーオタクの綺麗事で一喝されている世界。
更には姫武将の多くは良晴に惚れるので、惚れた弱みで良晴に従うパターン。
舞台となっている信奈世界そのものが良晴の持ち上げに機能しているようで、
へたななろう小説と大差ないストーリーに見えてしまうのですよね。
良晴の歴ゲー知識と度胸の引き立て役として、
戦国時代そのものがマイナス補正をかけられているみたいで、
戦国武将のひとりひとりを主人公に見立てた群雄伝モノとして見れば0点ですね。
そもそも、信長を扱っている作品でも、
『センゴク』『へうげもの』『ドリフターズ』『信長のシェフ』『信長の忍び』
など数々の漫画が存在していて、信長の人物像に各自で触れているのですが、
こっちでは、織田信長の人生をベースにした歴史展開でありながらも、
良晴が信長という人間をステロタイプな旧態依然とした魔王像でdisりながら、
信奈には信長とは違う道を歩ませようとするところ。
ただ単にファッション感覚で歴史上人物の名前を利用しただけで、
日本史と数多の先人に対する敬意を欠く内容に、歴史ゲームを過去嗜んだ一人として、
かなり、引っかかりを感じましたね。
『恋姫無双』では董卓が善人のロリ美少女であったり呂布がピュアでクーデレであったり、
三国志演義で見られる人物像と正反対なのですが、
そもそも作中で演義での人物像と重ね合わせて比較したりdisることもなく、
アニメ版では特におバカ全開のオリジナルストーリーであったので、
ネタ的なパロディ美少女作品であったのと比較して、
信奈のアニメでは歴史ものと美少女ものいいとこ取りしようとして、繰り返しますが、
かえって歴史に失礼なイメージが強いアニメになってしまいました。
特に酷いのが“金ヶ崎の戦い”で、お市から送られた小豆袋を見て、
信奈自身が状況を一瞬で理解して撤退を決断、殿(しんがり)を残して一目散に逃げるのではなく、
良晴に小豆袋の意味を解説されて初めて理解する信奈。
そして、『自分が殿(しんがり)になる、自分の犠牲で部下を殺したくない!』
と泣き喚いて駄々をこねては部下から殴られる信奈。
良晴に助けられないとダメということにするために、信長からかけ離れた弱い人格にされた信奈。
大河ドラマ『天地人』で泣き虫与六に改変された直江兼続並に狂ったキャラ付けに、
こんな展開にしたのは誰だ!とパンチを食らわせたくなる微妙な気持ちになり、
このアニメを見て嫌な気持ちになりましたね。
萌えとハーレムをベースとした美少女戦国絵巻に史実を絡めながら、
シリアスを演じさせようとしているところに、チグハグな印象を受けました。
史実準拠にするかオリジナル展開にするかの、どっちつかずの両得を狙った結果ですね。
現実では万世一系の男系である皇室が、信奈世界では代々女系が引き継ぐ世界であったり、
作者が日本史をどう思っているのかの怪しさに、史実との違いに首を傾げるのも虚しいですけどね。
これが、今どきよくある悪役令嬢モノみたいに、
ゲームの世界に迷い込んだ主人公という設定の物語であるならば辻褄が合いますし、
個人的にはありですが、現実の史実と信奈の世界の関係がよくわからないですね。
キャラデザの美少女度は相当高く、
単に戦国武将を女体化ロリ化した美少女ハーレムアニメとしてだけ見れば楽しめるのでしょうが、
主君にタメ口誰にでもタメ口命令口調の良晴が世界観をぶち壊してるバグに見えてしまうなど、
好きになれない要素があちこちに露出してるのが気になってしまい、
最終回に至るまで、個人的には楽しみにくいアニメでした。
これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。