退会済のユーザー さんの感想・評価
3.9
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
心の叫びと時代の闇
私が凄まじく気に入りそうな作品がある、とお勧めされて視聴しました。
いやいや、この絵柄、すっごいのすすめてくるな、私大丈夫かな…と思いつつ観ました。
大丈夫でした。
このアニメーション、
現実的に訴えかけてくるものがあり、生々しく迫ってくるので、
観る前は「これから観るぞ」という心意気で視聴したほうが良いです。
みてるだけで昭和のミッチリとした匂いがしてきそうな作品でした。
そんな時代に生きる少年が主人公。
{netabare}
彼は身体的に悩みを抱えていて、学校の同級生にいじめられています。
追い詰められていく心、少年の目から映る景色。
たびたび入る少年の心の叫びの映像は、激しく焼きつき決して私から離れたりはせず。
だからとても怖くて掴もうとするとスルリと逃げてくような。
しかし、、破壊的な少年の心、いずれにしても破滅だ…。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、いつつ、むっつ…
昭和、ちゃぶ台、半ズボン、工事、公害、飛行機…工場、新幹線…
いくら数えても数え足りない、那由多のごとく散りばめられる時代のフラッシュバック。
これは…ものすごい表現力です。
乱雑に映っては消え、映っては消え、強烈に私の中に入ってくる。
少年の叫びと時間の重さも一緒にグルグルと。
途中、少しだけ気がおかしくなりそうになりました。
1985年とあります。
高度成長期の眩しい時期なのかな。
その時代より少し前に感じます。
しかし裏を見れば貧しく厳しい生活をしている人も沢山いて、
そんなグラグラしている時代の狂気的な人々の有様。
何だろう、この感じは。
奇抜な映像ばかりなのに、真面目に考えさせられる。
時代の闇。
この時代の社会的な暗闇が猛烈に伝わってくるのです。
訴えかけてくるものがある。
そしてあとひとつ、私の祖父を思い出しました。
この作品は群馬県が舞台。
時たま幼い私は祖父につれられ、祖父の実家に行ったのです。
昭和の、豊かではない家、暮らし。
日差しのあまり入らない暗い部屋、
カルピスのコップ、古いテレビ、急な階段。
この作品、本物の映像が入るのですが、
私、それみてるだけで胸がキュウキュウとしめつけられました。
私の地域に中仙道という道があるのですけれど、
そこには両脇に小さな商店街が連なり、
道路には、ぽつりぽつりとスピーカーがついていて
流れる音楽を聴きながら買い物をしたのでしょうね。
昭和30~50年頃は、きっととても賑やかだったのだろうと伝わるのです。
今では、すっかりさびれきってお店を覗くと薄暗く、
昔置いたままの商品が、そこから何年も動かされていないのです。
色褪せ、哀愁をかもし出していて… あぁ!あの何とも言えない切なさ。。
そんなものも、この作品から感じました。
{/netabare}
これは皆のために作ったアニメではないです。
作った原田 浩さんの心の中の映像なんだと、私は思いました。
彼の心を、そのまんまガツンとみせられるのです。
人の心の中とはすごいものですね。呑み込まれました。
万人には受けないだろうと思います。荒削りでしたが、力がある作品だと思いました。
私はみて良かったです。