早川景-K- さんの感想・評価
4.2
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
新海監督作品の入り口として
新海誠監督の長編映画としては2作目の長編作品。
私はこれから新海監督作品の共通の魅力とこの作品に特有の魅力について自分なりに考えたことを書いていこうと思う。アマチュアのただのファンである私の独断と偏見に満ちた感想を、(最後に読み直してみたら)随分と偉そうに書いているので、その点についてはご容赦願いたい。
新海監督の作品は決して夢を与える作品ではない。むしろ非常に現実的な作品であると思う。設定としては宇宙、超現実的な建物、空間などSF的な要素が多いが、人の心情、その心情から生じる行動、人物を取り巻く周りの状況などは、非常にリアルだ。それ故、悲しみ、怒り、絶望、虚無、などアニメ映画ではあまりテーマとしては扱われない描写も多く存在する。しかし、新海監督作品は、そんな絶望や悲しみのある世界だけれど、それと同じぐらい素晴らしいこともあるということを我々に訴えかける。例えば、信頼、愛、自信、成長。漠然としたものばかりだが、言葉で表現し難いこれらのことを見事に映像という形で表現しているのが新海監督なのだと思う。
「現実は素晴らしい。現実だからこそ悪いこともたくさんあるけれど、”現実だからこそ”存在する素晴らしいこともあるのだよ。」
私は新海監督がそういうふうに訴えているように感じるのだ。そして新海監督の作品は全てここが根幹となっていると考えている。これはあくまでも私の勝手な解釈と理解であるが、同じように感じたファンが他にもいるのではないかと思っている。
さて、この作品もきっとそういうメッセージが根幹にあるのではないかと考えている。その上で今度はこの作品の魅力を私なりに書いていく。
新海監督の作品は大きく分けて2つのタイプが有ると思う、
①ファンタジー色の強い作品
②人物の心情、表情、更に情景が淡々と描かれる作品
②は新海監督の作品で最も有名であろう秒速5センチメートルや、第1作ほしのこえ、最新作言の葉の庭の3作品。①はこの作品、雲のむこう、約束の場所と星を追う子どもの2作品である。
この作品は是非、①の作品が合わなかった、退屈だった、魅力がわからなかったという方々に見ていただきたい。この作品の特徴として、しっかりとしたあらすじがあり、わかりやすいストーリーとなっており、新海監督作品の中ではかなり見易い作品であるだろう。しかしそんな中でも、新海監督作品特有の”現実らしさ”はしっかりと表現されているのだ。絶望的な状況であっても必ずどこかにある小さな希望。その希望を信じて先へ進もうとする人物たち。決して都合よくいかないけれども、それでもなんとかして前に進もうとするのだ。
そんな彼らの姿に私は勇気をもらった。そしてこの作品を観た当時の私の身の回りの人間関係、自分自身のことについて考えてるきっかけにもなった。そして、作品の中の世界同様、自分の周りの世界も素晴らしいことに満ち溢れていると気づかせてくれた。そんな作品である。
長々となってしまったが、とにかく言葉では非常に言い表しにくいものが新海監督作品の魅力なのだ。そしてこの作品は監督の作品の中で最も簡素にそのことを表現していると感じる。