「機動戦艦ナデシコ(TVアニメ動画)」

総合得点
76.3
感想・評価
789
棚に入れた
3783
ランキング
721
★★★★☆ 3.8 (789)
物語
3.8
作画
3.6
声優
3.8
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

蒼い✨️ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

熱血とコテコテを作品として一段階捻ってみたが。

アニメーション制作:XEBEC
1996年10月1日 - 1997年3月25日に放映された全26話のTVアニメ。
監督は佐藤竜雄。

【概要/あらすじ】

西暦2195年10月。地球人の入植地である開発途上の赤い惑星・火星は、
木星軌道の外側から飛来した、無人艦(コードネーム;チューリップ)と無人兵器の群れに襲撃された。
“第一次火星会戦”にて地球連合宇宙軍艦隊が交戦するが、圧倒的な技術力の差は手の打ちようがなく、
艦隊のビームは捻じ曲げられバリアに跳ね返され全く通用せずに、連合軍は一方的に倒されて大敗。
提督の悪あがきで乗員を退避しての艦の特攻による質量攻撃で、かろうじてチューリップを若干撃破するが、
結果として、墜落したチューリップが落下地点に存在していた火星のコロニーに直撃して大惨事に。
コロニーは壊滅して民間人の死傷者が多数。コロニーの生き残りも無人兵器に襲われて、おそらく全滅した。

無人兵器、もしくはそれらを送り出す謎の存在=“木星蜥蜴”が地球を襲っていて、
連合軍が地球を守っているというのが人類の共通認識である。
戦闘は他所でやってくれと言わんばかりに民間人は軍に好意的であるとは言い難いが。

“木星蜥蜴”は既に陥落した火星のみならず月の裏側を制圧。

連合軍は防衛ラインを敷いて“木星蜥蜴”を殲滅すべく戦ってはいるが満足な成果があがっていない。
大気圏内に多数のチューリップが降下して、地球全土の世界各地で戦闘をしている状態。

そこに登場したのが、世界各国に影響力を持つアジアナンバーワンの超巨大企業であるネルガル。
火星には地球人類の進出以前に古代火星文明が存在していた形跡があり、
発掘された遺跡のオーバーテクノロジーは解析・調査の成果によっては、技術発展と多大な利益をもたらす。
民間企業であるネルガル重工が独占している火星の超技術の結晶であり相転移エンジンを搭載した、
“ND-001 ナデシコ”は、防御不可能な重力波砲“グラビティブラスト”
空間を歪めて攻撃を弾く“ディストーションフィールド”
これ一隻あれば出力を最大限発揮出る宇宙では余裕で連合軍艦隊を全滅できるんじゃないかってほどのチート戦艦。

そして乗組員はネルガルにスカウトされて雇用契約を結んだ者やネルガルからの出向者であり、
軍人ではなく民間人扱い。というより政府機関に所属しない民間軍事会社みたいな扱い。

スカウトの条件が「能力が一流なら性格は問わない」なので性格にクセがある人間が多い。

主人公のテンカワ・アキトは18歳。火星生まれの火星育ちで、
前述の会戦に巻き込まれたコロニーの奇跡的な生き残りで軍への不信感と戦争に対するトラウマを持っている。
ユリカとの偶然の再会から成り行き上、コック兼パイロットとしてナデシコに乗り込むことになる。

自称・美人艦長であるミスマル・ユリカは20歳。本作のヒロインでありアキトのお隣さんだった幼馴染。
ナデシコの艦長で脳天気でグラマーでアキトにラブラブ。
地球連合大学を首席で卒業した才媛らしいが、「お飾り」「無能」として扱われ「ムダに胸がでかい」
と、あんまり周りから一目置かれてない。能力よりも感情任せで色ボケな性格が原因。

他にも、遺伝子操作によって生まれた天才少女ホシノ・ルリ。
作品のロリ担当の毒舌キャラでファンからの圧倒的人気ナンバーワン。

スタンドプレイ大好きでいい年してロボットアニメにはまってる熱血パイロット、自称ダイゴウジ・ガイ。
趣味の世界に走り過ぎな妻子持ちなのに浮気症な三枚目メカニックマン、ウリバタケ・セイヤ。
本名不明経歴不明の胡散臭いけど超切れ者オジサン、プロスペクター。会計・監査役。ネルガルからの出向。
同じく出向者で巨漢のゴート・ホーリー。ユリカの幼馴染みのアオイ・ジュン。
元美人秘書の、ハルカ・ミナト。元声優のオペレーターのメグミ・レイナート。

更には、じゃじゃ馬、オタク女、売れないコメディアン風といった追加パイロット三人娘。
等いろいろと個性的なメンバーが最新鋭戦艦ナデシコのクルーとして宇宙を舞台に物語は進む。

西暦2196年末。佐世保にあるネルガル重工のドックから出向したナデシコの向かう先は火星。
目的は火星に残された人々の救出。

技術を独占されてることへの憤りもあり民間企業に勝手なことをされてはたまらないと、
当然に連合軍によるナデシコへの度重なる介入がある。
これは、宇宙戦争に翻弄されながらも“自分らしく”を貫こうとするナデシコクルーたちの物語である。

【感想】

多分、5周ぐらい観ているアニメ。

規模では劣るものの『新世紀エヴァンゲリオン』の後にアニメファンの間でブームになった、
当時を代表する人気作品の一つであり、賛否両論の劇場版を楽しむためにはTV版は必須科目。

SFとスペオペがメインではありますが、ロボットアニメで男のロマンっぽさを強調したり、
ハーレムラブコメ要素があったりとで、当時のオタクが好きそうな、
ありとありゆるモノを詰め込んで煮込んだようなアニメではあります。

1クール目を中心に會川昇、荒川稔久、首藤剛志、川崎ヒロユキら、
複数の脚本家が自分のやりたいようにやってる感があって、割と熱い展開が多いですね。

個人的には全く面白くない回が存在していまして、あかほりさとるがゲスト脚本の第10話がそれ。
あかほりアニメでは鉄板のマンネリなハーレムネタ満載で、
最初に観た話がこれならksアニメとして切って捨てるぐらい違和感マシマシ。

そうでなくても、ハーレムアニメというだけでディスりたくなる性分ですので、
三枚目主人公のアキトだけが不自然に多くの女性キャラにモテモテで、
他の男キャラが女性キャラに見向きもされない大体貧乏くじか、
不幸キャラ担当で彼らは幸せになれないのに強い抵抗があったりしてます。

まあ、視聴者はアキトになった気分でユリカやメグミやリョーコなどとのイチャイチャを楽しんでください!
という事なんでしょうけど。ラノベにありがちな変な部分が20年以上前に存在していたことがあって、
主人公以外がモテるとクレームつける人が今も昔もいるのでしょうかね?

そういう手垢がついたベタベタしたノリだったり、シリアスな部分で寒いギャグを入れたがる習性があったりとで、
話のメリハリが上手くないな?そんなに面白くもないかな?と思ううちに話が進んで佳境に入るのですが。
中盤には印象に残る衝撃的なエピソードがひとつあって、其処は良かったのですが。

敵である“木星蜥蜴”の謎が明かされて終盤に話が色々動いて、最終回になります。
終盤は面白いと言えば面白いのですが、それはアキトのトラウマの払拭と気持ちの整理がメインで、
やっていることといえば視聴者の情を煽るという手法でありまして、
終盤に出した伏線が未回収のうちに最終回が終わったりで物語の決着の付け方としては悪手といいますか?
この続きはセガサターンのゲームと劇場版で補完してね!て感じで、
この2クールの物語は一体何だったんだ?と全26話を俯瞰して観てみてると、
構成に失敗した印象が拭えないですね。

特にホシノ・ルリが大人気でユリカを完全に人気で食ってましたし当時からキャラ物の素地はありましたし、
他の方のレビューにもありますが、シナリオ面で目をつぶってキャラアニメとして登場人物を好きになって、
そして、戦艦ナデシコに対するクルーの思いをキャラと共有できる人なら、名作・良作に位置すると思います。

ナデシコは私達の船!というイイ話をやってるのを観ながら、

『ナデシコはネルガルの財産であって、雇われクルーの私物じゃないだろ?』

とツッコミをしたくもなりますが、敢えてやらないのが優しさではありますが。

自分としては最終盤の空気感が良くて盛り上がれたものの途中までが然程面白くもなく、
作品内の主義主張みたいなものがしっくりこなかったので、物語としてはイマイチかなと思いました。

作品で言っているのは人の数だけ正しさがあるのだから“全体主義”や“周りの空気”に流されない“自分らしさ”を持て!
という話なのかもしれないのですが、メッセージ性としては、結論付けずに妙にふわっとしていると言いますか?

現実では、マスコミの情報に踊らされて、それに対する反証を無視して批判する自分に酔っている層もいれば、
その手の連中を見下すことに気持ちよさを感じる人たちもいたりで、どっちであれ人間は自分の信じたい情報か信じず、
それを他人があれこれ言って是正するのは不可能ですね。
“自分らしく”も古くからはメディアの影響、そして現在のネット社会では結局は実体験が元になっていなく、
情報によるバイアスがかかっていて誰かの主張に乗せられているに過ぎないのですよね。

そして思うままに根本的に人の話に耳を貸さない連中が多すぎるから争いが起きる。
せいぜい今の世の中で出来ることは相反する両方の論説に目を通して、
叩くことが目的にすりかわった義憤もどきに陥らず、
こういう話があるけど、私はこう思う!といった冷静に判断できる客観性を身につけることですね。

もっとも批判することがメインになっている人たちにとっては、
自分に都合の悪い情報は全部嘘であるのが前提ですので、どうしようもないのですが。

思うことと実行することには大きな隔たりがありますし、
何よりナデシコ世界では、おちゃらけて自分勝手ながらも何とかしちゃう実力と運の良さが主要人物にありますので、
なんとかなっちゃうのですが、補正のない現実世界でナデシコの真似をしちゃうと危ないですね。

なのでアニメはアニメ!現実は現実!であって、感化されるような内容でもないかな?とは思いました。
フィクションに感化されて甘い夢を見てれば必ず叶う!という考え方に冷水を浴びせる展開があったという一点で、
評価できるポイントがありますけどね。

物語のなかで敢えてクリエイターの思う正解を提示せずに、
材料は与えたからあとは自分で考えろ!というスタイルのアニメであるのかもしれないと思いました。


これにて感想を終わります。
読んで下さいまして、ありがとうございました。

投稿 : 2018/05/28
閲覧 : 659
サンキュー:

69

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