overnao さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
マーケティングのお手本のような作品 (虚淵曰く、故郷の鍋)
本作は、よくある美少女魔法少女アニメと思わせておいて、実は違うという視聴者のミスリードから話題になった作品です。以前からビジュアルノベルゲーム界隈では、本作のような奇をてらったような展開(詳しくはネタバレになるので伏せます)がよく見られたようです。本作脚本の虚淵氏はそのような脚本に長く携わってきたので、そこまで大きな反響を得るとは思っていなかったようです。虚淵氏は、「故郷の鍋の具を持ってきたら予想以上に流行った。『へ〜お前の故郷ではそんな具を鍋に入れちゃうんだ』」というような言い方で表現していました。
この作品はストーリー構成と美術が優れていたと思います。ネタバレ防止のために詳しくは伏せますが、序盤では、登場人物も視聴者も物語の世界の秘密を知らされない状態で、超自然的な現象やらなんやらが起きます。中盤に世界の根幹に関わる秘密が暴露され、それを踏まえた上でエンディングへ突き進みます。このような構成になっているので、序盤ではミステリー作品のように、視聴者も登場人物に共感しつつ、この世界はどうなっているんだろうと考えを巡らせながら作品を視聴できます。中盤に示される世界の秘密、そして最終回の主人公の選択は、大半の視聴者の想像を上回るものになっていて、それがこの作品の面白さの根源です。
このような優れたストーリー構成を引き立てているのが、美術・作画です。現代アーティストの村上隆を彷彿とさせるような、ポップでフラットな色使いは、アニメ史上類を見ません。ニューヨーク近代美術館に収蔵されても良いレベルの非常に独創的な美術だと思います。
■その他のマギ人気要因
・ゲーム業界では知名度を誇る虚淵氏が脚本に参加した(虚淵氏のことをもとから知っている人々は、この作品の展開を最初から予想していたようです)
・奇抜な演出で知られるシャフトが制作を担当した
・アニメオリジナルなので誰もこの先の展開を知らず、議論を呼んだ
・作中に謎の文字列が登場し、
・アニメ放送機関中に東日本大震災が発生し、自然災害を扱う描写がある本作が放送延期となり、そのことが注目された 放送延期となるような最終回とは一体どんな内容なんだろうか、と余計に視聴者の期待を膨らませた
整理すると、奇抜な展開で話題を集め、非常に手のかかった美術やよく練られた脚本・伏線、謎解き要素で視聴者の心を掴み、東日本大震災という突発的要因さえも味方に付け、最終回を迎えるというマーケティングのお手本のような作品でした。別の業界のモノを持ってくるという「故郷の鍋」戦略が功を奏したようです。エヴァンゲリオン以来のエポックメイキングな作品とも呼ばれていますが、私もその意見に同意します。