woa さんの感想・評価
2.0
物語 : 2.0
作画 : 2.0
声優 : 2.0
音楽 : 2.0
キャラ : 2.0
状態:----
男の娘という詐術
秘め事というタイトルからも分かるように男性が女性を装うという行為はその暴露を含めると本人は勿論、周囲をも巻き込んだ性意識の攪乱行為である。たとえば作中でベル(女性)という漫画家キャラが主人公に女装をさせてどれだけの男性が彼を女と「勘違い」するだろうかと推察するシーンが典型的なのだがベルの意図は要するに生理学的な性(セックス)よりも文化的な性(ジェンダー)を優先させるような虚構(漫画)を作り上げることなのである。実際、主人公の「容姿」騙された男性は事実を知った当初は悶絶するも自分が彼の容姿を好きになってしまったという既成事実の前に生理学的差異よりも優先されたジェンダーを肯定せざる得ない(男の娘「だからこそ」良いという彼の言葉が示すように)。男の娘は単に人の性が生物学的側面に依存する割合よりも文化的側面に占める割合の方が大きいという政治的主張なのである(男の娘が子供を産める可能性は無いと思われる)。
ここからは自分の推測なのだが、主人公のジェンダーを攪乱し「ひめ」としてプロデュースするのが生徒会の女性たちであるということは、男の娘の攪乱が社会的に抑圧されながら消費されつつある「女性」の無意識の反抗だからなのではないだろうか?つまり男の娘が「背徳的」に思えるのは男の娘は彼女たちが女性として世間に強要される自分たちのジェンダーに対する挑戦であるからだと思われる。それはエンディングで生徒会の女性メンバーが化粧で顔を作っている場面から主人公の女装姿に行き着くことからも明らかなように、これは主人公(男の娘)は生徒会メンバー(女性という通念)の「作品」であり作為的なジェンダーの最終的「生産物」であるという強力なメッセージなのである。
またよく言われることだと思うのだが、男の娘はジャンル批評の観点も含んでいてアニメのキャラクター自体もその作成過程から考えればむしろ全員男の娘と言えるのではないだろうか。アニメのキャラクターはフィクションで性別も何もないではないかという意見もあるかもしれないが、それはアニメのキャラを現実に落とし込んでるからそう錯覚しているだけで自分としてはそのキャラクターが他の人間キャラとの間に子供を持てるかどうかで彼(彼女)がその作品世界において人間か否かを決めていいと思う(生殖機能に障害があるなどの例外はその例外要素を取り除いたと仮定して考える)。そして人間である以上どちらか(あるいは両方)の性に決定しなければならないのである。
最終話のひめはひめという言葉に説得力があるように日常アニメとしても良く出来ているのだがそれだけに18禁だとかうんこだとか抽象的なネーミングが残念に思える。