woa さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
場所と時間のずれ
タイトルからもわかるように主人公は今を生きつつも自らの場所に自身を見いだせていないということを異世界の過酷な体験を通じて導き出す。しかしこの周囲との不一致は彼の強みなのだと思う。最終的に自らの日常を肯定するように見えるが冒頭にララ・ルゥと夕焼けを見ていた時の表情はあどけなさや自己完結のようなものはなく新しい何かしらの決意や成長を感じさせる。冒頭で主人公とララ・ルゥははしごが途中で壊れた煙突の上で出会うのであるが、それ以降異世界のエネルギー闘争に巻き込まれた主人公は枯渇した水資源の供給元であるララ・ルゥの心を救うため救い枯れ果てた大地で暴政の下で生きる兵士や農民たちとともにララ・ルゥがいる煙突の先までまさに壊れた梯子を上るような困難な行程を行うのである。新しい土地で知り合う友人たちもまた壊れた梯子からいまにも落ちんとしておりまず主人公が手を貸し最終的には主人公が彼らに手を借りることでに過去を思い出すという夕日を眺めているララ・ルゥの待つ煙突の先へとたどり着く。誰もが過酷な生をつなぐために他人への同情ややさしさといった人間性を失った世界で誰にも彼にもその手を差し出そうとする主人公のひたむきさは本人もそういうように場違いに見える。また1話冒頭にも主人公が納豆をのどに詰まらせて周りを汚したり、蛇口に口をつけて水を飲んだり周囲からすこし浮いた存在であることが一人で楽しげにいく帰り道に示唆されるが異世界において彼の自我のはっきりした性格は自分の極限状態に大きく規定された異世界の住人にとっては時にまぶしいものとして周囲に認識される。そしてこの主人公の影響力は次第に大きな政争の流れの中で主人公やその周囲の人間の運命を大きく左右することになる。そして主人公に影響を受けた人間はほとんどがその世界にいい人間は生きていけず死んでしまうというララ・ルゥの言葉のなぞらえるように非業の死を遂げるのである。この未来世界において人類は何度もお互いに殺しあうという同じ過ちを繰り返し滅亡してきたのであるがその世界のありようは残酷な形で登場人物にも作用しており彼らの未来は明るいものとは言えないかもしれない。たとえ一部の人間がその人間性を取り戻したとしてもその人間は周りの世界に順応できずにすぐに死んでしまうのだから。であるならば主人公はいったいその世界で何を成し何を残したということになるのか。ただ主人公が昔煙突に誰よりもうまく上っていた際に彼自身がその煙突を勇気の塔と呼んでいた彼の勇気は確実に孤独に苛まれていたララ・ルゥの心を救ったのであり異世界に水資源を再び取り戻したのである。そして主人公の影響力を受けつつも死を免れ異世界で新たな生命をはぐくむことを決意したもう一人の時間旅行者はかつては自分の災難に対して無力だった主人公の「大丈夫」という言葉を今度は自分の新しい口癖とするのである。主人公が辿り着いたララ・ルゥとの場所で過去を思い出すことはないと言っていた彼女は主人公とまた一緒に日が沈む光景を見るための約束をして超越者としての役割もいったん終わるのだがサラに宿る新しい命とこのまた出会うための約束はおそらく同じ性質のものであり復興していく異世界のよりどころになるのだろう。