STONE さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
予想外と言えば、予想外の結末?
P.A.WORKSお得意の青春群像劇。
のっけからごく当たり前のように海中で暮らしている人々が出てきたが、ざっくりした説明は
あっても、細かい設定や歴史の説明はなし。「あるがままに受け入れよ」といった感じだが、
こういうスタンスは嫌いじゃない。
序盤で海に住む少女の向井戸 まなかと、陸に住む木原 紡が運命的出会いを果たす。
通常、この手の作品だとこういったボーイ・ミーツ・ガール描写で登場するキャラが、
幼馴染みキャラより強かったりで、最終的にこのカップリングで終わることが多く、この作品も
海の民と陸の民との一種の異類婚姻譚的なものかと思っていたら、とんだミスリード。
最初からこの結末を考えて、あえて逆手に取ったのか、話を進めていくうちに当初予定して
いたカップリングとは変わったのかは判らないけど。
ただ、登場キャラ達が運命に従うのでなく、自分の進むべき道を自ら切り開いていくことを
考えると、この結末は相応しいのかな。
前半は陸の学校に通うことになった海の少年少女達の日々の生活を描きながら、それぞれの
恋愛模様を描いていくが、この辺は割とじっくり描いている感じで、ややスローペース。
この恋愛に関しては自分の思いと、自分が思う相手の思いが噛み合わず、更に自身の気持ちも
「こうなりたい」という思いと、「自分が思う相手が幸せになってほしい」という思いが同居
することで、より複雑さを増している。
この辺のうまくいかない感じのジレンマは結構モヤモヤするのだが、個人的にはこういう
葛藤は結構好きだったりする。
この錯綜する恋愛事情や、海の先島 あかりと陸の潮留 至の結婚問題などを通して、先島 光を
始めとした少年少女の成長が描かれているところもいい。もっともそう簡単に成長するわけでも
なく、ある部分が成長しても別の部分はまだ幼かったりが、割とリアリティがあるかなあと。
中盤の山場であるおふねひきの騒乱と、その後の海の民の冬眠を経て、状況は一変。
ここからはペースアップといった感じで、恋愛模様は複雑化の一途を辿り、5年の歳月が
年齢差を近づけたり、逆に離したりといった感じで、それぞれの恋愛にも影響を与える。
正直、前半は現実的な設定でも充分描写可能な展開だったが、後半は「時を経て目覚める」、
「好きという気持ちを失う」などの非現実的設定がうまいこと活かされているなあと。
最後まで先がどうなるか見えない状況に目が話せない感じで、最後は最初の描写とはまったく
予想外の形ではあるが、それなりにきれいにまとまって終わった。もっとも個々のキャラに
思い入れを抱く人は納得がいかないかもしれない。
背景作画はいかにもP.A.WORKSといった感じで、結構好き。
建物の塗装の剥がれ方などの老朽化描写がなかなかリアリティがあっていいですね。