シェリー さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ゆりかごのような心地よさ
スーパーもコンビニもない!週刊誌は2,3日遅れ、レンタルビデオ屋は10駅向こう!
田んぼに囲まれ、山に囲まれ、全校生徒5人の分校に通う小中学生の彼女たちが主人公のお話。
この村に住んでいる4人の分校の生徒には年功序列も見られず、のんびりとしていて仲睦まじい。
転校生の蛍のカルチャーショックを交えながらド田舎ならではの愉快きわまりない日常が展開していきます。
しかし、慣習や価値観に多少の違いこそあれど、村の人々は方言を使わないし、
分校に通う4人の子供たちが家の農作業の手伝いをする描写もないので、田舎のベタベタ話というよりかは、
ナウでヤングでイマドキの子を田舎に放り込んでみよう!ってな感じの箱庭の中で遊ばせているような作品でした。
この箱庭劇場では登場人物たちが生き生きと描かれます。
蛍の年上だけど小っちゃいこまちゃんに対する愛でしどろもどろしたり、
こまちゃんはこまちゃんで背伸びしたがるけどそれが恥ずかしい形で終わったり、
なつみの奔放さ、れんちょんの度肝を抜くシュールさ、しゃべらない兄ちゃんなどなど変人ばかりが楽しくわきあいあいとした日々を送ります。何も無くても楽しい毎日。
個性も欠点もすべて余すことなく見せながら、上手く笑いにしているところはこの作品の強みであり魅力です。
でもこの作品の一番の強みはのどかな里山の風景でしょう。
一口に「のどかな里山の風景」とは言っても絵が綺麗だからとかそういう単純なわけではありません。
風の音、小川の音、木の葉がかすれ合う音、小鳥たちの声は木々の緑と空の青さが印象的な背景に溶けていて、
それに混ざる幼い少女たちの声、見慣れた些末な日常などのすべてがそれを創り出しています。
すべては虚構である。でもそれがどれだけ心地良いものかは観たものにしかわかりませんし、教えません(笑)
ただれんちょんに関してひとつ言いたい。
彼女の持つ唯一無二の独特な感性はすごく良いんです。それにはたくさん笑わされたし、彼女を起点に進む話も面白い。
しかし無垢とシュールは違うと思うのです。この2つにはそれぞれに違った魅力があります。
無垢にはその無垢なりの、こどものピュアな目でものごとを受けとめてする反応の良さがあり、
シュールにはシュールで、いささか狂人じみた感覚の新鮮さが目を惹く魅力を携えていると思います。
れんちょんに関して言えばこれがごちゃまぜに混ぜられていて不自然な齟齬が感じられました。
無垢でありながらシュールな性向の持ち主というのは個人的にはいささか奇妙でした。
僕にはそれゆえの愛らしさを感じるよりかはたまにスッと不気味な影を見ているのが少し怖いくらいでした。
とは言っても面白いし、視聴者からはとても好評でなかなかの地位を獲得してしまっているので、この意見の正当性を証明するのは難しいのですね。
まあなんにしても作品自体はとても良い作品です。
僕の中で日常系最高峰である『みなみけ』1期を超えるかどうか、日々それはもう不毛な議論が交わされています。
それくらい好きで今でもたまに観ています。それになんといっても、特に1話は音だけでも楽しめる強みがあります。
これはぜひ一度試して欲しいです。
時折、喉が渇いて水を欲するようにこのアニメを観たくなる。
里山の風景、木々の葉がかすれあう音、小川に流れる冷たい水の音、小鳥の調べ、それに混ざる少女たちの声。
別にこのアニメでなければ聴くことのできないものなんてひとつもない。
僕だって自転車で延々と続く坂道を2時間くらい頑張れば実際にその景色にいくらでも触れることができる。
でもそれとは根本的に受け取れるものが違う。どちらが良いということでもない。
ただこのアニメでなければならないこと、感じられないものはある。それはとても大層なものではないけれど。
でも、だからこそ何度もこのアニメを観て、時折ここにそのなにかを補充しに来る。
人によって感じられることは様々だ。好みも違う。なにそれの何が良いんだ?って訊かれて上手く答えられないこともよくあることだ。
それでもそれは変わらずそこに在り続け、僕らが変わらない限りわずかばかりだが心に滋養を与えてくれる。
僕にとって『のんのんびより』はそんなアニメのひとつです。