北山アキ さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
アニメ制作会社版「ER」
最後まで観て
傑作でした。必見です。
創作、というか表現全般は多分に自己投影であるので、
アニメ制作者がアニメ制作会社に舞台に物語を作ることは自然だったんだと思う。
自分の知っている職業や舞台をネタにデビューする小説家は多いわけだし、
賢しら顔でアニメ産業のバブル的隆盛(台所事情は知らないけど、製作本数とか会社数うとか)
という文脈の中に本作を位置づけようという企みなんてナンセンスです。
時代の徒花どころか熟した果実そのものであり、未来への種でした。
そういうものを作りたいんだという製作者の思いがビンビンに伝わってきて感涙必死でした。
ただし、女の子を愛でるつもりで観る始める方は、
いつしか太ったおっさんどもをはじめとする野郎どもを愛でている自分に気づき、
愕然とするかもしれないのでご注意を。
5話までの感想
米国ドラマ「ER」の舞台を病院からアニメ制作会社に置き換えたような物語。{netabare}
「ER」大好きなので、とても楽しめてます。
どんなところが似ているかというと、
・プロフェッショナルの世界
・働き方がリアルに見える(本当のところは知らないけど)
・登場人物にリアルな存在感がある
・登場人物が多い(今後、群像劇的に発展するのだろうか?)
・次から次へといろんなことが起きて、テンポよく、スピーディーに場面が変わってゆく
・感傷に浸らない(浸る暇もなさそう)
・大人向け
日本製の職業ドラマは嘘っぽすぎて(実在の人間が演じるからなおさら)、感傷過剰で(脚本も音楽も照明も)、うすら寒い幼稚ものばかりと思ってる。
なのに、日本でこういうドライなテイストのものを、しかもアニメで作ってくるなんてびっくり。
慌ただしい日常の中に、達成感も挫折も、夢もどん詰まり感もある。
あらゆる感情や感覚に囚われる瞬間があるのだけれど、そこで感傷的に立ち止まらない。
プロとして、立ち止まる自分を許さない。
と言っても、声高に暑苦しく自己承認欲求丸出しでそれを主張するわけではなく、淡々と働く姿を追ってゆくことで表現している。
「花咲くいろは」とはまた異なるアプローチで働く女性(だけじゃない)を描いていて、今後も楽しみ。{/netabare}
8話感想「そこにもたらされるのにちょうどいいサイズの救い」
{netabare}バランス感覚がすごいですね。
技術職(アニメーター)と管理側(制作)のそれぞれの夢や悩みを描きつつ、
おいちゃん姉みたいな他業界の住人にも焦点を当てることで、
アニメ業界を他の業界と並列し、テーマを働くこと一般へと昇華する手際。
妹とその後輩の前では「フリーダム過ぎる」はっちゃけっぷりだが、
何でも押し付けられるしがない若手という職場での現実。
そして、最後に、おいちゃんが姉に投げかけるさり気ない一言。
詮索はしないけど、振り回されているように見えるけど、
その実、優しく見守っていた妹。
それを理解し、根拠はないけどなけなしの覚悟で応える姉。
ここはすごくグッときました。
なんか、爺さん達が絵麻を助けるわきまえた距離感といい、
そこにもたらされるのにちょうどいいサイズの救いが心に沁みます。
唐突な当たり前の覚悟と記念と人間の記録ですね。{/netabare}