旅する猫のクク さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
「私たちは新しい時代、21世紀に生きているのよ」
「おジャ魔女どれみ」と「プリキュア」という二つの巨星に挟まれた、孤独だが凛とした輝きを持つ はぐれ星。
それがこの作品についての印象だ。
20世紀初頭のヨーロッパを舞台に、
生き別れの母親と再会するために旅をする少女の物語。
古典的といえばそれまでだが、
それだけに普遍性のあるメッセージを持った傑作だ。
このようなオーソドックスな物語が、
むしろ変化球とされてしまう現在のTVアニメをとりまく認識が、
不幸だったと言わざるを得ない。
深夜帯なら、もしくはOVAならば・・・という声もよく聞く。
しかし、やはりこの枠、いわゆる「ニチアサ」で放映することにこそ意味があったのだと思う。
一般的に、この作品の不発により制作体制がプリキュアに移った・・・と認識されているが、しかし、それは結果だけを見た場合であり、事実は少し違うのではないか。
そもそも、おもちゃの販促をし続けて何十年という制作会社とテレビ局、
ここまで4年間も変身なりきりセットを売り続けてきたおジャ魔女スタッフが、
「次回作は 女の子版 母をたずねて! これは売れる!!」
などと、本気で思ったとはとても思えない。
売れないのは最初から分かっていたのではないか。
関プロデューサーをはじめスタッフは、お世辞にも派手とは言えないこのアニメを、ある程度確信犯的に世に送り出したと思う。
そう考える根拠は、サントラCDの解説にもある。
そこで関プロデューサーは「ナージャはイギリスのダイアナ妃結婚騒動から着想を得た」と解説していた。
実に20年近くもの時を経て、アニメとして実現したのだ。
並々ならぬ熱意をそこに感じはしないか。
おジャ魔女の成功をナージャで失くしてしまった・・・のではなく、
おジャ魔女が成功したからこそナージャを作ることができたのだ、
と私は思う。
スポンサーを説き伏せたスタッフの執念。
そこで伝えたかったのは、子供達へのメッセージ。
特に、どれみ無印・・・いやクレヨン王国の頃からキャラクターと一緒に成長してきた子供達への祝辞、未来への希望そのものだろう。
ローズマリーは最後に言う。
「ナージャ。私たちは新しい時代、20世紀に生きているのよ」
ああ、それこそが、
この物語が21世紀のはじめに子供たちに向けて語られた意義!!
未来を創るべきナージャ達は、運命の扉をあけて、走り出すのだ。
・・・・
余談だが、
ナージャとはロシア語で希望という意味らしい。
そう、だから「明日のナージャ」なのだ。