生来必殺 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
世の中に不満があるなら自分を変えろ。
それが嫌なら耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ。
これは本作主人公が冒頭で言い放った、とても印象的な名言であります。
{netabare}テロリストにぶつける言葉としてこれ以上の名言はないと断言したい。{/netabare}
極論だが、本作を例えるなら超豪華で良質な、{netabare}お子様{/netabare}ランチのような作品。
超豪華で贅沢三昧のフルコースとは呼べないものの
ワンプレートにありとあらゆる要素が詰まっていてコストパフォーマンスが非常に高い。
(プリンアラモードのような【最高の】デザートも付いている)
だから、色々な要素をお気軽に楽しむことができる。
しかし、その反面完食してもなぜか満腹感が得られない・・・
但し、見る価値は十分にあり、いろいろな要素を楽しめることだけは間違いない。
本作の魅力としてまず第一に声優陣がとてもお上手でキャラに嵌っていることを挙げたい。
(バトー人気の背景にも声優の存在感があるからだと推測する。)
個人的にはトグサ、イシカワ、サイトウなどが好印象だが
なんと言っても凄いのがタチコマ役の人で、声の微妙な使い分けで
{netabare}多重人格並列的複合体=スタンドアローンコンプレックス的{/netabare}タチコマを実演するのが衝撃的。
第二に独特で雰囲気のある音楽。
第三にやはりタチコマ。
存在感、魅力、キャラ性などが本作で【最高の】位置にあると言っていいくらいで
主人公はタチコマでよかったと思えるほど。
とにかく、タチコマの活躍に刮目されたい。
以下は瑣末な不満足点の羅列で、読む価値はあまりないのでご注意を!
{netabare}原作とは味付けが若干というか、かなり違うため
パラレルワールドの攻殻S.A.Cは微妙な立ち位置あり、士郎正宗が想定した設定が
本作ではかなり形骸化している。
良心的に解釈すれば、1980年代的サイバーパンクの世界を今時再現したところで
一部のマニア以外は誰も望んでないから、むしろこの方向性でよかったとも言えるが。
極論を言うと攻殻機動隊である必要がなかったかもしれない?という疑問が残る。
サイコパスやアップルシード、テクノライズと比べると
サイバーパンクと言う点ではかなり劣勢なのだ。
(その意味で言うと押井作品は独特だがパンクのエッセンスはまだ残っている)
サイバーパンク的小道具は器用に運用しながらも世界観や設定にパンクが不足しており、
サイバーパンクの世界を創造しようというよりは、現実世界に作品の設定を
刷り合わせようとしてるのは妥当で合理的であると思う反面、
少し期待ハズレ感も・・・
公安9課とは仮の名称であり、現実世界とはパラレルワールドだから要人警護の名目で特捜担当の事件に
介入もあり得るし、電脳化システムを保持するための活動も公安の職務といっていいのだろう。
が、公安の名前の割りに対テロ犯捜査や対テロ戦が圧倒的に不足している。
(一般的警察活動がメインになる物語なら主人公はトグサが適任ではないかと)
サイバーパンクに必須なのがテロリストであり、当然のごとく2ndにもテロリストは登場するのだが
当該キャラにテロリストとしての魅力もパンクの要素も薄いため公安9課の活動的にも
物語のテーマ的にも不完全燃焼感が残る。
そして、笑い男事件にミステリー的期待感を抱くも事件の真相は意外とあっさりテイストだったり、
政治ネタや経済ネタや時事ネタなんかもバラエティ豊かに盛り込んではいるものの中途半端なところに留まる。
等々不満足なところを挙げればきりがないが細かいことには気にせずに{/netabare}
総じて言うならば、より多くの人に楽しんでもらえる要素をもった良く出来た作品。
小難しい用語が終始飛び交うが、全部を理解しなくても十分に楽しめるのが
なんといっても本作の上手いところであると言える。