ossan_2014 さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
探偵の遺伝子
本作には、先行作(?)が存在する。
原作である『安吾捕物帳』をTVドラマ化した『快刀乱麻-新十郎捕物帳-』で、確か1973年ころ、若林豪と尾藤イサオの主演で、若林が結城新十郎役であったと思う。
毎回、前半が問題編となる事件のドラマ、後半は新十郎が推理する解決編のドラマという構成で、ちょうど『古畑任三郎』の先祖のようなドラマシリーズだ。
印象的なのはその最終回で、真相を喝破した新十郎だったが、賄賂による政治的な圧力で事件が握りつぶされたことに激怒し、警察署に殴り込みをかける。
大立ち回りの末、犯人を刺殺し、指名手配を受けて、地下に潜行していずこともなく姿を消す、という途轍もなくアナーキーな終わり方だった。
もちろん本作とは直接の関係のないドラマなのだが、本作の背後に伏流する、どこかアナーキーな雰囲気が、なぜか似たような印象を与える。
これはミステリーという形式が孕む必然なのか、それとも原作者の坂口安吾という作家の本質ゆえであるのか。
「敗戦探偵」と「逃亡犯」〈若林〉新十郎。
「治安の維持」と「真実」を天秤にかけ、前者のためなら後者を捻じ曲げるのも厭わないとうそぶく体制に対し、「真実」に憑かれた探偵のたどる道筋は、同じような地点に至るしかないのだろうか。
40年の時間差のある映像化にも拘らず、同じ原作から似たような要素を抽出しているかのように見えるのが興味深い。