セレナーデ さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
どこをどう突き抜けさせるか悩んだまま走り抜けた
まあ一言でいうともったいない作品でしたね。
アメコミものパロディとしての下地は悪くなかったと思いますよ。なんてったって、
一般大衆から突然変異で超能力者が生まれる『X-MEN』の世界観に、
スポンサーロゴをヒーロースーツに載せる『ミステリーメン』のヒーロー広告塔システムを掛け合わせ、
最新科学技術で作られた強化スーツを装着する『アイアンマン』式変身スタイルのヒーローが、
『バットマン』よろしくスーツの色合いに同調した専用のメカニックを乗り回し、
正義のためなら街も損壊させる『ハンコック』ライクの横暴ぶりを披露しつつ、
ヒーローにも生活があるんですわ的な『Mr.インクレディブル』さながらの哀愁とユーモアを漂わす、
という手の込みようですからね。アメコミヒーロー・アンチヒーローのエッセンスをあらゆる方面から採取しており、パロディ作品としてたいへん楽しそうな舞台に仕上がってます。あとは、ガス欠せずに走りきってくれれば佳作、パロディ作品として決定的な事件をやらかしてくれれば秀作、カタルシスを感じさせてくれてなおかつ下手すれば傑作になれるだろうところまでお膳立てが整ってました。
しかし楽しかったのは最初だけ。いざふたを開けきってそこにあったのは、平凡で生真面目でチープなドラマ、というまさかの低空飛行シリアス。展開は両親の仇を追い悪を討つという通俗さだし、能力者バトルはジャンプだったらソッコー打ち切られるであろうこと請け合いな安普請さ。最初こそ楽しかった主役2人の凸凹コンビによる掛け合いもシリアス化の影響でピリピリした笑えない口論に変容、バディとして信頼できるだのできないだのという痴話げんかを2クールかけてグダグダグダグダ。おまけに物語を盛り上げくれるはずの悪の組織も構成員3名しか出てこないとかショボすぎだー。
結果、笑いの上質な舞台を自分で用意しておきながら、笑わせにきてるのか、熱中させにきてるのか、感動させにきてるのかおぼつかない、とっちらかった安っぽさが横たわった中途半端なアニメになってしまいましたとさ。ホントもったいない。
百歩譲ってチープ感やスケールのショボさは目を瞑れるとしても、話が進めば進むほど、世界観のユニークさと背反するようにマジメでお堅くなっていくストーリーに関しては「どうしてそっちに行ったんだ…」と肩をおとすしかありませんでしたね。
指定された決めセリフがダサいと重役にクレームつけるブルーローズさん、面白かったよ。ヒーローなのに建造物を壊して説教される虎徹さん、滑稽でしたよ。もっとそういう、ひねったヒーロー像や一癖つけたシナリオで攻めってった方が、下地に合ってたんじゃないの。
主役2人のドラマにバイアスをかけすぎたせいで、脇役のヒーローたちの見せ場が不完全燃焼なのも残念。
というわけで、ペプシのロゴマークのついたヒーローが出てくる作品の、どこをどう突き抜けさせるか悩んだまま走り抜けて煮え切らない出来になってしまった方、TIGER&BUNNYのレビューでした。