生来必殺 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
旅立つ時、答えは既に出ていた
深いテーマを扱った人気作品の代表例として挙げられるのが「プネテラス」であり
ドラマチックな展開で感情揺さぶる評価の高い作品の例としては「DTB」
を挙げることができる。
この人気2作品と本作に直接的な関連性はないのだが
これらと比較しても、本作は勝るとも劣らないクオリティーを持っている。
昔からよくある{netabare}
「美しく残酷な世界」という{/netabare}主題を完璧とも言えるほどの描写能力
あるいは表現力で描きる、というかその世界の構成要素を再加工して世界を再構築し提示した作品。
詩的でどこか叙情的、物静かだが意味深く奥深い
ある人は本作を哲学的と表するかもしれないが、どちらかというと文学的で
恐らくある種の難解さを持っているので一般受けはせず、好きな人はかなり嵌るが
視聴に際しては作品の有毒性のため精神的消耗や苦悩というような副作用がともなうので
{netabare}(もっと端的に言うなら、魂を抉り取られるような感覚に襲われる){/netabare}
こういうタイプの作品が好きな人ほど視聴に当たっては予め覚悟が必要。
{netabare}あまりに作品にシンクロしすぎるとATFが侵食中和され本体は抜け殻となる危険性あり。{/netabare}
この作品には厄介な点が多々あるが、本作で使用されている台詞、言葉が、
格言的なものを含めあまりに適切すぎて、他の言葉では上手く説明できない
伝わらないというクセがあり。
{netabare}『本作の魅力を説明しようと試みる人はなかなか思いが伝わらないという歯がゆさやもどかしさを痛感する』こともしばしば
だが↑このような体験、リアリティを踏まえて本作第一話を見ると
構成材料、設定の意味がおぼろげに見えてくるかもしれないという。{/netabare}
とてもややこしい作品。
基本的に一話完結の形式で物語は進行
個人的には一話完結というスタイルにあまり良い印象を抱いてなかったが
一話の中にすべてのエッセンを凝縮しつつも、余裕すら感じる緩やかな流れで
物語をゆったりと描ききる作者の手腕には、ただただ脱帽。
時には(命題に対する正解ではないのだが)その世界の物語の中で一言の台詞だけでオチをつける裏技にも驚愕。
{netabare}一話完結でありなが多元重層構造の物語となっていて
各話が有機的に繋がって表現内容を互いに補完したり、同じ表現内容を
表現形式を微妙に変えて連動的につなげて進行させたりする。
だから視聴者は螺旋構造的にグルグル回って元に戻る、メビウスの環の中に
囚われたような錯覚を抱いたりというような不思議な体験をするやも?
オチ的発言を冒頭にもってきて結末と繋げてループさせるとかいうのはお手のもの。
伏線という言葉では言い表せない程に連続コンボが決まっていると言わせてもらいたい。{/netabare}
正直、主人公と相棒の声については自分の好みではなかったのだが
不思議と違和感がなく話が進むにつれむしろ嵌っていると思えたほどに。
声優の名前を確認してみて軽く文化的ショックだがそういうこともあるかと今では納得。
{netabare}ある時気がついた主人公のあまりに悲しげな目
そういうちょっとした登場人物の表情にも何かの意味が隠れていたりするのかも。{/netabare}
「DTB-黒の契約者- 第19、20話 あさき夢見し、酔いもせず…」では魂を激しく揺さぶられ
「プラテネス 第10話 屑星の空」では作品のもつ引力の成すがままに引き込まれ魅了されたものだが
「キノの旅 第4話 大人の国」ではあまりに完成度の高い世界へ完全に魂を抜かれてしまった。
本作は傑作、王道物語を超越した神話であると断言したいほどのレベル。