「神様のメモ帳(TVアニメ動画)」

総合得点
83.7
感想・評価
2595
棚に入れた
14135
ランキング
314
★★★★☆ 3.7 (2595)
物語
3.6
作画
3.8
声優
3.7
音楽
3.6
キャラ
3.7

U-NEXTとは?(31日間無料トライアル)

ネタバレ

kids さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

(裏)社会を描いて(表)社会に問いかける

原作はミステリー小説で、巧みで美しい伏線回収に何度も感嘆させられました。


★あらすじ
主人公の藤島鳴海は一人でいることが多いただの高校生でした。しかしある日、園芸部に引きこもうとしてきたクラスメイト篠崎彩夏のバイト先についていったことをきっかけとして、ニート探偵のアリスやニート達の探偵業(?)に協力するはめに・・・。鳴海は一体何を観て、何を思うのでしょうか?


★ストーリーについて
この作品の最大の魅力は綿密に練りこまれたストーリーです。特に初見では気にも留めないような形でさらっと重要な伏線を次々に引いていき、そしてとても美しく回収していく展開は、推理モノとして流石でした。
特に感銘したのは、{netabare}平坂錬次が四代目を潰そうとする話での展開です。平坂と四代目のつながりは想像がついたのですが、大事なものとして言葉を交換していたり、全ての元凶となる事件の顛末は全く予想できませんでした。でもしっかり伏線が散りばめてあって、感嘆させられました。{/netabare}

また、この作品の重要な要素として、世間では踏み入れてはいけない、踏み入れたくないと言われがちな世界を描いていることが挙げられます。

登場人物たちはニートだったり、ヤクザだったり、主人公も両親が事実上いないといってもいい家庭環境で、最初から普通の人とは違う状態でした。
そんな社会の枠組みから「ドロップアウト」した登場人物達で扱う題材も、裏社会に属するものばかりです。
具体的に挙げていくと、{netabare}援助交際、ヤクザの対立、薬物{/netabare}と言ったぐあいででしょうか。どれも現実で関わっていたらただでは済まないものばかりなのが一目瞭然ですね。

そして僕はこの作品から次のように質問されているのではと感じます。
「あんたはこの世界に堕ちないと断言できるか」
「あんたは作中の社会の枠組みから外れた人々にどんな感情をいだくのか」
と。

はっきり言って紙一重だと思いませんか?
家庭環境なんて選べないし、人生どんなことがあるかわかりません。{netabare}援助交際の話は個人的に一番共感できるところがあったのですが、順調に人生を歩んでいるように見えても、周囲からの期待やイメージが重荷になってしまって、何もかも壊したくなってしまうこともあるかもしれません。{/netabare}一人の人間のバランスというのは、何かのきっかけで崩れてしまいかねないということを肝に銘じておきたいものです。

それからもし社会の枠組みから外れてしまったとして、それは悪いこと(もしくは間違ったこと)なのでしょうか?少なくともこの作品の登場人物たちは自分の生き方を持ち、それに誇りを持っていました。真っ当な人生を送っていない彼らに賛同することはできませんが、否定するのもなんだか違うなあという気がしました。


★アリスの名言集
この作品で最も僕の目を引いたのはニート探偵のアリスでした。彼女が大事な場面で言うセリフがとても含蓄のある興味深いものばかりなのです。
{netabare}
「探偵、その本質は死者の代弁者だ
失われた言葉を墓のそこから掘り返して
死者の名誉を守るためだけに、生者を傷つけ
生者に慰めを与えるためだけに、死者を傷つける」

「自分がこの世界に対してなにか意味があることを成せるなどと思わないことだね。
君が気にかけているほど世界は君を気にかけていない。
…でもそれが真理だよ。
それに気づいたとき人は大人になれる。」

「奇跡は誰にでも一度起きる
だが誰もそれに気付かない
大丈夫
一度起きたのなら二度目も起きる
きみとぼくが出逢ったことも
きみが毎日来てくれてることも
丼をひっくり返さずバイトに合格したのも
すべて奇跡だよ」

「どうしてだろうね。
どうしてぼくらは、もう失われてしまったものにしか目が向けられないんだろう」

「ほとんどの人間は、可能性が無限であるということが、ほんとうはどういうことなのか理解し得ない
自分がのっている船の後ろのほうで、自分とは逆向きにものすごい力で漕いでいる人間がいることなんて想像もつかないのさ
そうだろう?
だってそっちを向いていないんだからね」

「この世で最も多くの人を殺してきたのは、情報だよ。
知ることは死ぬことなんだ」

「真実は君の平穏を破壊する可能性があるそれでも知りたいかい?」

「ニートというのはね、なにかが「できない」人間や、なにかを「しようとしない」 人間のことじゃないんだ
ちがうのはただ、ルールなんだよ。
みんなが双六をやってる盤の上に、ぼくらだけチェスの駒を並べてるようなものさ」
{/netabare}
皆さんはこれらのセリフから何を思いますか?


★最後に
正直言って、登場人物たちに感情移入するのは難しい部類の作品でした。ですが、だからこそ客観的に観れる面白さがあるなと強く感じました。話も細かく区切りがついているので少しずつでもストレスなく観ることができるのではないでしょうか。

是非一度御覧ください。

そうするときっとこの作品は様々な形で問いかけてくるはずです。

「あなたの社会に対するイメージは正しいものですか?」と。

そして

「あなたは社会と正しく向きあえていますか?」と。

投稿 : 2014/10/30
閲覧 : 224
サンキュー:

7

神様のメモ帳のレビュー・感想/評価は、ユーザーの主観的なご意見・ご感想です。 あくまでも一つの参考としてご活用ください。 詳しくはこちら
神様のメモ帳のレビュー・感想/評価に関する疑問点、ご質問などがございましたら こちらのフォーム よりお問い合わせください。

kidsが他の作品に書いているレビューも読んでみよう

ページの先頭へ