セレナーデ さんの感想・評価
3.7
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
たまにはこういうのもいい
これは全然アリ。
言ってみれば『ものの怪』とは真逆の面白さがあります。
『ものの怪』で描かれてる恐怖は、人の情念や恨みつらみの類が発端となってました。つまり、ちゃんと「論理」があるんですね。いかに奇奇怪怪で脈絡のないように思える現象でも、その裏には厳格な背景があり、その現象が起こるに至った道筋が存在してるわけです。現象も怖いけど背景を知っても怖い。そういう「正体」があるからこその恐ろしさがありました。
けどこの『Another』が狙っている恐怖は全く逆。次々と人が鬼籍に入る怪奇現象が起これど、その論理や法則性は不明。人智を超えた力によって気まぐれに被害者を指名される理不尽が全編を支配しており、意図や正体が分からないからこその恐ろしさがあります。恨みつらみも怖いですが、この後を引くような味わいは、理路整然さのなさがキモなのです。
また、現象の法則性が解明されていない副産物として、「誰が」「いつ死ぬか」の予想がつかない緊張感があるのも魅力。しかも一度助かったからもう危険は及ばないなんて生易しい世界ではないんですよな。死んだ人はほんとお気の毒。やり切れませんな。
こまごまとした不満点は数えだすとけっこうありますね。それこそ犠牲者の出方に法則性はないのに中盤までは法則性の存在を匂わせてる語りになっていたり、途中からまったく別軸の超能力が現れたり、起きてる事態のわりに登場人物らの危機感が希薄だったり、トリックのオチがやや独善的であったり。
ただ、それでも、シナリオの詰めが甘いだのリアリティが欠けているだのという細かいツッコミを入れるのは、重箱の隅をつつくに等しい行為と思いますけどね。謎解きのシナリオ展開は手堅く引きが強いし、演出のがんばりでムードはばっちりだし、現象の正体が最後まで判明しない気色悪さは正直「たまらん!」とか言いたくなるし、それら諸々を堪能した上での細かい指摘は野暮ってものです。
たまには、こういう後を引く理不尽さを嗜むのもいいよねと思える一作でした。
ただし、ラスト2話がとても笑える作品になってしまったのだけは反省してください。