sekimayori さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
なるは将来絶対男を惑わす悪女になると思います。 【75点】
不祥事を起こした未熟な書道家が、離島の人々との交流を重ね変わっていく様を描く日常系成長物語。
夏クールが終わってもう1か月ですが、ばらかもんけっこうウケてますね。
円盤はそこそこ売れたらしいし、何より原作売上だいぶ増えたんじゃないかな?
10巻発売直後に秋葉原のア○メイトに立ち寄ったら、平積みの在庫がかなりの勢いで売れてました。
もともとガンガンONLINEの主力とはいえ、アニメ化効果は大きそう。
あと、あにこれでも点数高いし、評価数も夏アニメでは野崎くんの次に多いし。
私も録画を保存版ディスクに残しましたし、良いアニメ化だったのではないでしょうか。
原作途中まで読んでた者としては、アニメばらかもんの勝因は2つあるように思います。
一つ目は、「自分らしさ」というテーマの強調。
もう一つは、なると半田先生をはじめとした声優陣の好演です。
テーマの強調と言っても、たぶん基本的には、6巻で一区切りの付く主軸のエピソードを省かず1クール内に丁寧に収めた結果、若干原作よりコメディ・日常系臭が薄れたということ。
ただ、意図的にハイライトしてる部分もありそうです。
その筆頭が、のっけから直球で「自分らしさって何だ?」と問いかけるOPでしょう。
最初から主題を明確化しておくことで、日常系特有のゆるさが苦手な人にも入りやすくなっています。
あと「自分らしさ」というキーワード自体、田舎の素朴な人々との交流に癒しと憧れを持つような層に対して訴求力が強い気もする。
ターゲットとしては、人が溢れる都会で「人とは違うで差をつけ」られなかったり、逆に地方出身で昔の「宝物」を懐かしみつつも今は都市で生活を守っていくしかない、みたいな20~30代のイメージ。
ア○メイトで原作買ってたのが若いOLさんっぽい人が多かったので、そこから勝手に妄想しただけなんですけど。
そういう読者・視聴者は、島の人々の屈託のなさに半田先生同様心を解きほぐされつつ、「変えられない大切」と「変わりゆく生活(というか自分)」を貫いてゆく勇気を貰えるのではと思います。
そうやって皆が少し前向きになれる作品とか、それがちゃんと人気出る世の中とか、私は好きです。
ただ、テーマがあるとはいえ基本は日常系コメディなので、キャラの魅力が何より大事。
それを裏打ちしたのが、ベテラン子役入り混じった声優陣の好演でしょう。
特になる役の原涼子ちゃんは、子供にしか出せない天真爛漫さと大人顔負けの演技力の両方を発揮していて、一応既読者の私としては、「すげぇ、なるがしゃべってる」って感じでした。
みなさん書かれてるけど{netabare}11話の「はよう帰ってきてね」はやっぱりすごかったですね、あれって確実に清舟の「帰る」場所が実家から島に変わったポイントだと思います。
あんなに懐かれて、無邪気な思い出を積み上げられて、寂しさと気遣いの両方を一言で伝えられたら落ちない方がおかしい。
まったく末恐ろしい女だぜ……。{/netabare}
他の子供たちも皆元気にワイワイ演じていて、方言の響きと相まってほっこりする空気が生まれていたような。
その子役たちの輝きも、小野Dらベテラン陣の安定感あってこそ。
あと、美和をめちゃくちゃ魅力的に演じてくださった古木さん、地元出身で方言指導もされたようで、本作の影の大功労者ではないでしょうか。
もともと元気溌剌ボーイッシュショートカット娘なので原作からお気に入りだったんだけど(健康的な肢体にエロスも感じる、とか言ったらあのヤクザ親父にぶっ殺されそう)、ナチュラルな方言の破壊力ったらないね。
方言彼女とかいう番組が一部の界隈で静かに人気だったのも頷けます。
原作のコメディ回や各キャラの掘り下げなどが尺の都合でカットされたり、放送時間が深すぎたりはしましたが、非常に楽しませてもらった作品でした。
ただ一つだけ、キネマシトラスはボンズから独立したスタジオで「ゆゆ式」での超絶安定作画のイメージが強かったし、OP映像が動きも絵コンテのセンスもずば抜けていたので、本編で作画の乱れが見られてしまったのが本気で残念です。
{netabare}
最後に、またア○メイトの話に戻るんですが。
原作購入層でOLっぽいお姉さん方の次に多かったのが、女子中高生でした。
こういうスローライフ系作品が、しかもネットさえあればどこでも誰でも無料で見られる媒体で若い女性に人気を得てるっていうことからは、妄想が膨らみます。
つまり、地方のばらかもん読者って、ネットで存在を知って、夏休みに行ったガチ田舎な祖父母の家とか思い出しつつ読んでる、そんな女子中高生なんじゃないかなぁと。
単行本買うのはバイパス沿いのTS○TAYA、読むのは新興住宅地の建売住宅の子供部屋、みたいな、県庁所在地とか地方中核都市の生活者としてのイメージが浮かびます。
だからどうってことはないのですが。
ただ、TVとか漫画とかで大都市とか中途半端な田舎に「温かい田舎」イメージが広がる傍ら、ばらかもん読むような若者世代が絶滅しかけてるリアルなド田舎って失われ続けるんだろうな。
五島みたいに「島」という明確な領域があるところだとまだましなのかな?
などと、アニメグッズに囲まれつつ、消滅集落が増えてきた地元の現状を思い返して、一抹の寂しさを感じておりました。
頭ではそんな真面目っぽいこと考えながら、両目は美和みたいな女子中学生を探すのに余念がなかったのは秘密。{/netabare}
【個人的指標】 75点
(2014.10.28)