退会済のユーザー さんの感想・評価
3.0
物語 : 2.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 2.0
状態:観終わった
タイトルなし
主人公のポルコ・ロッソは、見た目は醜い豚で、中身はいい歳した中年男。しかしその声は渋く、深みがある。見た目は豚でも偏見の目で見られず、女性にモテる。野郎どもの「豚のくせに」という罵倒は、単に嫉妬心から出る僻みであって、ポルコの見た目に対する嫌悪感ではない様子。
普段は無人島で気ままな生活。世界の情勢とは、ほとんど無縁な悠々自適な生活。
観る人が観れば、さぞポルコに感情移入と憧れを抱くことだろう……それが悪いかどうかは別として。
で、本作で気になったのが、対照的なヒロインが二人いること。
一方はすごく色っぽい美女で、主人公が自分を求めてくれるのをいつまでも待ってくれている。
片や溌剌とした少女は初対面でも見た目を気にしない器量よし度胸良しでスキンシップもアプローチも盛ん。ストレートに告白し、おやすみのキスまでしてくれちゃう。
ポルコ(自分)を理解してくれる美女と、自分に憧れてくる美少女。
……なんというか、うん。こんなんでよくもまぁ昨今の萌えアニメとか批判したよなぁって思うけど、フィオは実際可愛いので許す。でもこれも妄想っつーか願望だよね。
しかも売上目的で萌えをゴリ押ししたワケじゃなくて、監督の趣味なんだよね……うん。
まぁそれは置いとくとして……で、なんなのこれは?
「カッコイイとは、こういうことさ」がキャッチコピーらしいけど、正直目が点になる。うーん、これを観てもカッコイイとは微塵も思わないんだけど……。
だってなぁ、ポルコってフリーターじゃん。世界大戦が終結した直後で荒廃と混沌の時代で、街では一般市民が不安を抱えながらも働き、夢とか希望をもって逞しく生活している中で、真昼間から酒んで、飛びたい時に飛ぶだけの生活なんだろ? そりゃあ賞金稼ぎで貢献してるだろうけども……。
これがもしも、パイロットとして致命的な怪我を負って軍を退役せざるをえなり、厭世的になったけど飛びたいという気持ちを諦められなくて賞金稼ぎとしてくすぶってる、とかなら分かるんだよ。
でもこのポルコの場合、社会に嫌気が差して軍を抜けた。まぁ現実逃避ですわ。
で、惚れた女の元に入り浸るけど距離はそれ以上近づこうとはしない。「飛べない豚はただのブタだ」――つまり自分は特別だと主張。んでなにをやってるかと言えば権威主義反対で、自由とは名ばかりの自堕落な生活……。
彼に限らず、モブとかサブの空中海賊らが口を揃えて「俺達は夢とか自由を求めてるんだー!」的なことをほざいてた時には流石に絶句した。典型的なフリーターの言い訳です。
というか、夢を追いかけてるんなら子どもを人質にとっていいのかよ……「空と海が心を清めてるから飛行艇のパイロットは良いヤツ」って言ってたじいちゃん、どうかしてるぜ。
早い話がこの作品を構成する大半が、監督の理想とか趣味思想なので、それに近しい感性というか趣味嗜好を持っていないと、視聴するのが結構ツラい。
フィオは確かに単体で見れば可愛いけど、ポルコとの絡みとなると、ウソ臭さが半端じゃない。劇中のセリフでは、どうやらポルコのことは本人に出会う以前に、自分の祖父からポルコの武勇伝を訊かされ、微かに憧れてた様子。
だったら、まず初対面時に豚姿のポルコを見てショックを受ける、という描写は当然あるはず。
こういう描写が挟まれないのは、ポルコを気持ち悪いヤツと思われたくないからだ。なんてったって、監督の理想なんだもの。
そりゃ17歳の女の子だって躊躇いなくキスしますわ。