ワタ さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
他者との触れ合いによって生まれる「新しい自分」
都会出身の情緒不安定な書道家と、純朴な島民との交流を描いた作品。
ストーリーは定番だけど、だからこそ重要なのは雰囲気作り。
この作品は子供キャラに子役の声優を起用してるのですが、これが見事にハマりましたね。
訛りも相当にキツくて、正直何言ってるか分からない場面もありますがw
でもそれぐらいで丁度いいんです。なんとなく雰囲気で意図は掴めますし。
地元出身の声優が方言監修をしてるのもあってか
実際に聞いたことはないけど、凄くリアルな感じはします。
「声」が田舎の象徴として機能し、純朴な雰囲気を見事に作り上げていました。
{netabare}11話の電話シーンは本作屈指の名シーンですが、
誰にも告げずに東京に戻った清舟を連れ戻そうと、
島民たちが決起集会を開くシーンが原作からカットされてるようで。
尺の問題かもしれませんが、でもこのあえて見せない演出、いいじゃないですか。
取り残された島民たちがどんな想いでいたか、色々想像が掻き立てられます。
なるの「はよう帰ってきてね」は神演技。子役ならではという褒め方は失礼なレベルで
もう純粋に演技が上手過ぎですよ。本気で感心させられましたね。
なるがどれだけ寂しい思いをしていたか、この一言だけで十二分に伝わります。{/netabare}
さて、本作に出てくる島民は皆いい人ばかりですが、冷静に考えると結構図々しいところはある。
他人の家に無断で上がり込むのがデフォルトっていうw
そして人の心にも土足でズカズカと踏み込んでくるわけですが
他人との間に壁を作って、自分の殻に閉じこもっているような人にとって
そういった無礼とも言える他者の振る舞いが良い影響を及ぼすこともあると思うんです。
壁を壊され殻をぶち破られることによって、
今まで隠れていた想像もつかなかった「自分」が次々と引っ張り出される。
{netabare}清舟が都会にいた頃の人物像はあまり触れられませんでしたが、
母親が清舟の変化に戸惑う場面は印象的でした。てか母親の描写を見ると、
清舟があんな性格なのは全部母親が悪いと言いたくなるw 遺伝的な意味でも。{/netabare}
結局のところ「自分らしさ」というものは、
そういった他者との触れ合いによって形成されていくものだと思うわけです。
これは癒しを求めてる人というより、心がやさぐれてたりATフィールド全開な人に
多少強引にでもお勧めしたくなる作品です。