ソラ さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
変な話
変な話、面白いと思います!
クリエイターの個性、連携、人間関係って視点で見てみるとおもろい。
作中で制作進行・デスクのみゃーもりのことをエースだと呼称してましたが、役割的にはヘッドコーチとかその辺だよね。監督や各専任コーチと話し合って実行部隊ともコミュニケーションをとらなきゃいけない現場を見渡たす中間管理職なわけだよね。
多方面に気を遣わなきゃいけない役職なので人間のメンタルを描くっていう意味合いではベストなポジションでありました。
群像劇として全体を見渡せるバランスのいいキャラ設定でした。
しっかし、出てくる人達みんながみんな等身大なんだよね。
やりたいことをがむしゃらにやってたらいつの間にかここにいた。なんて台詞をおっしゃってるし。
箸休めに自分がなんでこんなことをしているか、目標、理由、過去、同一性なんてベタベタな問いかけなんだけども、実際にクリエイターの話を聞いてみると、最初は映画の監督なりたかったけどあるきっかけで写真をやってみたら面白かったから写真家になろうと思ったとか、
俳優志望だったけど声優に変えた。
なんて人はたくさんいるわけで色々経験するうちに自分がどんな人になるかを模索していくっていう普遍で不変のテーマをよく描いていた。
何がきっかけになるか分からない。そしてやり続けてみないと分からないってのも、これはこれでごもっとも。
ありきたりな内容なんですが真摯にやってるからこそ見入ってしまう。
登場人物達はみな挫折もするし愚痴も吐くしトラブルも起こす。だけど皆が腹を割って話し合ってみると、ちゃんと根本には目標に愛や思い入れがあるから憎めない。
挫折や愚痴やトラブルが具体的なものだからこそ見応えがありマニアックであって偏愛してしまう。
ただ出版社に関する政治的な部分は(わざと?)いい加減に終わらせたけど、あそこらへんも丁寧にやって編集部との描写も話し合いとか駆け引きでなんとかして欲しかったってのはあるけど、ここら辺は制作サイドに聞けば何かしら理由はありそうなのでツッコミを入れるのは野暮ってものでしょう。
武蔵野アニメーションがいい環境だなと思うのは、一度重役を任命したら本人が挫折して自信をなくしたとしても諦めずに責任を持って周りがサポートして役職を続投させてあげなきゃいけないという気遣いをする描写があったことです。
こういう姿勢ってのは個人だけじゃなくて指導する人達のランクも上げてくれる大切なことだなと。
こういう気遣いをちゃんと示してくれたって部分で大切な作品であります。
あんな芯の太い意思を持った良い意味で優しい先輩が見守ってくれる環境ってのはかけがえのないものだと思います。
番外的な部分でのこだわりも光っていた。
実績も技術もあって天才のように扱われている人でも話してみたりすると割と普通な人だったり、職場のトイレ汚いとか、電子レンジに爆発の後とか、扁桃腺腫らしちゃったとか、色気付いてスペシャルなシャンプー使ったりだとか、人に好き嫌いがあったりだとか、
飲みュニケーションやオンオフの使い分けとか人間かいてます的な描写も良かった。
定例会での興津さんの冷蔵庫のもの片付けろとか事務所の扉ちゃんと閉めてだとか料理つくってて他の階から苦情だとかなんつーかまるで実際に生活してる職場なんだなと思わせてくれるよね。
クリエイター同士の仕事においての微妙な距離感もいいよね。
クリエイターとしての方向性が違うから仕事がやりにくいけど、人手が足りないから協力を請うっていう場面で、あの人と仕事やりにくいんだよなぁとついつい愚痴ってしてしまうところが人間臭くて好き。
おっさん同士の友情、腐れ縁とか。体型に対する弄りとか、哀愁漂うおっさんの描写も作中の言葉通りキャラに個性・命を吹き込んでいる。
げんしけんの時にも思ったけど、横手美智子さんの脚本はほんと生々しさの良いとこどりがうまい。
キャラの何気ない言葉の一つ一つを拾って個性を成り立たせてるところ見てても、横手さんって人間観察とか人と会話したりすることが好きなんだろうな。
退屈とブラックユーモアの間を上手く捉えてるというか。
作中で行われた手書きか3Dなんて話題はいわゆるデジタルVSアナログ討論みたいなもんで、フィルムかデジタルか、写真か映像かなんて話題にも共通していたりする。
結局どんなアプローチの仕方をしようと個性、手先、視点、両立ってのが大事になってくるわけだ。変な話。