migratory さんの感想・評価
3.3
物語 : 3.5
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
秋にこそ感じてほしい恋愛の模様。
季節感をあまり感じさせないような風景のある作品だと感じたので、恋愛を始めるには乏しい季節の秋に見ると情緒あって良いのかもしれない。ただし、クリスマスのことを考えると、ある人には焦心させてしまうかもしれない恐れあり(><)
橘めいは東明高等学校の2年生。母親と二人暮し。小学生の時、クラスで起きた出来事から一切積極的に話そうとはしなくなった。
ある日、校舎内の階段で後ろから突然スカートを捲られたと思い、回し蹴りをしてしまったことで校内一モテると言われている黒沢大和に出会う。捲った相手は違ったが、それをきっかけに、逆に大和に気に入られ、電話番号を渡されるほどにアプローチされる。
一方で、めいはパン屋でアルバイトをしている。
あるバイトの帰り、めいは誰かにつけられているのを感じ、必死になって逃げ込んだ先でなんとか大和に助けを求めた。大和はすぐにめいの元へ駆けつけ、恐怖と恋人だと思わせるカモフラージュのためにとめいにキスをする…。
主人公のめいの、恋愛には程遠かった人の気持ちだけじゃなく、登場人物が人間性を帯びている。人と関わることのコンプレックスや恋人としてや友達としての意識など、「好き」な気持ちが詰まってる作品。
誰かの言葉の、そのひとつだけでも強くなれることがあると思わせてくれる。
2014年公開の実写映画「好きっていいなよ。」は夏の公開だったけれど、個人的に、秋に見るのをお勧めします。「スポーツの秋」「食欲の秋」「読書の秋」と多く呼ばれる一方で、秋という季節は、実は何も印象されることのない季節で、過ぎていく過程にその美しさがあるんじゃないかな、と思えるような何色にも変わる白さみたいなものがあります。もみじが赤く染まっていくように、夕日が沈んで夜に変わるように、あとは土の上に落ちるだけの葉っぱのようでも、そのせつなが胸にジーンと感じさせてくれる世界の模様を放っていると思います。そのジーンを胸の奥に響かせてくれるのが秋という季節の柄に合っている気がします。
内容的に言えば、(女子目線の)恋人にしてほしいことがいっぱい詰まった作品だと感じます。
実際「好きっていいなよ。」という台詞は作中使っていないけれど、好きって言えない身持ちを表現することの出来る繊細さがある気がします。
「好きっていいなよ。」というタイトルと、実はその言葉を持たざる内容から、何がテーマで、何が面白いのかと問われたら判然としないものがあるけれど、現実にありそうな設定と取り巻く環境で、身近な、でもどこか遠い二人の関係にキュンキュンできるんじゃないのかな、と思っています。
繊細な印象を受けるOP曲と、白い猫のマシュマロが好きです。