STONE さんの感想・評価
3.9
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 3.5
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
幻想的怪奇譚に包まれた愛の物語
穏やかな日常に異常な現象が介入してくるモダン・ホラーの手法を取り入れながらも、
骨董店、カットグラス、肖像画などのガゼットを駆使した雰囲気はゴシック・ホラーそのもの。
骨董店の場所に関しては同じ新房 昭之監督の後の作品である「魔法少女まどか☆マギカ」の
暁美 ほむらの家と同じような感じだったが、この雰囲気が好きで後の作品に取り入れ
たかったのかな。
梶浦 由記の音楽が、このゴシック・ホラー的世界観をうまく盛り上げてくれる。
良くも悪くも不親切な作りといった感じで、印象的な映像を見せつつも、細かな説明はなく、
視聴者に解釈を委ねたような印象を受けた。そのため自分が理解した内容と作り手が考えていた
内容は一致していないかもしれない。
装いこそホラーだが、根底にあるのはコゼット・ドーヴェルニュという少女に魅せられた
倉橋 永莉の愛を描いた作品とも言えそう。
ホラー要素に関しては通常のホラー作品のような写実的な恐怖やグロは少なく、倉橋の
異世界?での描写などは残酷美を伴った幻想的なもので、一種の幻想譚とも取れそう。
この倉橋を巡る異常現象に関して、真滝 翔子を始めとする第三者にも異常現象として映って
いたため、それなりに心霊現象的なものがあったのだろうが、前述の幻想的な異世界描写に
関しては、コゼットが生んだ霊的現象とも、倉橋自身の妄想とも、メタ的な倉橋の精神世界を
映像化したものとも取れそう。
芸術的な面では、コゼットに完全な美を見出して、その美を絵として残して、コゼット本人に
関しては成長に伴う変化による美の劣化を認めずに本体を消してしまう、というマルチェロ・
オルランドのような考え方は倫理的部分はともかく、美の考え方の一つとしてはありそう。
ただ、いずれは消滅するからこそ、その一瞬が美しいという考え方もあるわけで、
マルチェロを否定した倉橋の美とは何だったのだろう?。この辺の真意は今一つ判らなかった
けど。
ただ、マルチェロの絵であるコゼットを描くことに関しては、それは他人の絵を模倣した
ものに過ぎず、倉橋も画学生である以上、芸術家として認められるものではなかったの
かな。