イシカワ(辻斬り) さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
ロックとレビィ……激突する個性!
記載されているレビューに対する反論・論戦を行いたい人は、メッセージ欄やメールで送りつけるのではなく、正しいと思う主張を自らのレビューに記載する形で行ってもらいたい。
なおこれらのレビューは個人的推論に則ったものである。言い切っているような表現も、個人的見解に過ぎない。言い切っているような台詞も、独自の解釈の一環であり、一方的な決め付け・断定をしているのではないものだと思ってもらいたい。
(ネタバレというより、プロモーションビデオのようなものと考察願いたい)
ダークスーツに柄もないまっさらな白シャツに身を包んだ典型的日本人サラリーマン青年。旭日重工の社員・岡島緑郎は窮地に陥っている。
貿易するため南シナ海で乗っていた船に、見知らぬ外国人が突如として乗り込んできたのである。
そして銃を突きつけてきた輩の乗ってきた小さな船舶に、彼一人だけ引きづり出された。助けを呼ぶにも一面は青い海、見上げれば、ぶざまさをあざけるような晴天だけだ。
甲板の上で魚のように転がされた新入社員は怯えることしかできない。
そこには平和な日本ではまずお目にかかれない二人組がいた。
真っ黒なサングラスをかけ、防弾ジャケットを着込んだ筋骨隆々の巨漢の黒人。浅黒い肌をした凶暴な目つきの米系華人女からは派手に顔面を殴られる。
そして女からこういわれるのだ。
「こいつ、撃っちまおうか?」
どこぞの主人公が口にする「俺は不幸だ~」などより、余りある不幸から始まっている。
人質となり、何の力もなく顔から鼻血を噴出した岡島緑郎の眼前で二人が自分を殺すかどうか話し合っている。
都合のよい特殊能力もあるするはずもなく、緑郎には何の自由もないまま事態は進行していくのだ。
様々な紆余曲折を経て、緑郎はサングラスをしたラグーン商会のボス、ダッチからロックというあだ名を与えられ……
時には法を犯すこともある、という物騒な運搬業者「ラグーン商会」に転職することになる。
麻薬や銃器や人身売買といった違法の目白押し、掃き捨てられた人種の坩堝。世の中の糞野郎どもがこれでもかというほど溢れてかえる背徳の都、ロアナプラ。
それがラグーン商会の本拠地だった。
ある意味すでに、異世界に飛ばされた作風並である。
そこにある過激で容赦のない抗争は、日常茶飯事の事柄として描かれていく。
柔和で争いごとを嫌う典型的日本人ロックと、スラム街育ちで気が短く、すぐ銃を振り回す勝気なレビィ。事あるごとにぶつかり合い、本音を曝け出す二人。
その個性の激突は銃口から火を噴く結果につながる……
簡単にプロローグを読んでいただいて、食指が動いたらとりあえず視聴されたし。
ブラックラグーンの良点は、虚構と現実の境界線を綺麗に綱渡りしていくことにあると思われる。
強調すべき腐敗した都と人々を丹念に描きつつ、必要に応じて虚構をねじ込む。
例えば、ロアナプラは架空の都である。
しかし、異世界に飛ばされた現代高校生・中学生のように違和感を感じざるを得ない設定ではなく、「これなら確かにありそうだ」というリアリティに満ちているといえるのではないだろうか。
ありえないような話でも実在していると感じる極太の世界観と感じる。
このように書かれるまで、異世界ものとブラックラグーンに共通しそうな点などまったく見つけられない人もいるのではないか?
それくらい丁寧に、虚構を現実と混ぜ合わせている、どうやったら違和感が出ないかを徹底して表現しているように思える。
筆者には現実的でありながら、時として虚構とわかるずれを感じても、ずれは不快感をもたらさなかった。
虚構というのは、どれだけ周囲が銃を乱射しても当たらない。刀で弾を斬り落とすなどの行為、劇的なアクションを繰り広げるメイドなどだ。そういうところは逆にリアリティらしいところは皆無になる。
しかし虚構は続かず、すぐさまシリアスで救いのないストーリー展開、シビアで焼けつくような取引にとって代わられる。だからこそ筆者は違和感を感じなかった。
一昔前のアニメを作っていた時期の人にこの作品を見せたら、こんなの作っていいのかといわれそうである。
ずば抜けて規制が少ない。そして、重厚な人間関係も、日本とロアナプラとの対比も、ガンアクションも堪能してもらいたい。
子供向けとはかけ離れたこのアニメを是非ご賞味あれ。