plm さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
恋愛とは他人に深く踏み入る覚悟
別冊マーガレットより少女漫画原作の正統派恋愛アニメ。
主人公・吉岡 双葉は三年ぶりに初恋の相手・馬渕 洸に再会し、青春の1ページが開かれていく……。
タイトルは青春(アオハル)+ ride(乗る)の造語で「アオハライド」なのだそうだ。
■真っ向からぶつかっていく、人間関係の難しさ
少女漫画の恋愛と言うと「恋愛脳」染みたところがあって、悪く言えば"頭の中お花畑"な印象がある。
けれど、この作品は恋愛ありきの思考ベースでなく、純粋な人間関係の描写が主軸にしていると思える。
運命的な再会はあるにせよ都合の良い展開とも言い切れない、実に普遍的な人間関係を描いている。
有り体に言えば、"ドラマチックじゃない"日常のワンシーンの機微を描いているだけなのだ。
しかしそれがどうにも心を掴んでくる。素朴な感情だからこそ、真に迫っていると言うべきか。
とても主人公の悩みや気持ちに共感できたのである。納得することができた。
人との繋がりを考えること、その延長に恋愛もあるということなんだろう。
この作品は順を追って、心と在り方に向き合っていく。そんな愚直さに共感を得られるアニメだった。
■自分と向き合い、他人と向き合う
{netabare} 中学時代の経験から、不和を起こさないよう上辺の付き合いをするようになった双葉。
しかしそんな姿を、かつての初恋の相手・洸に「友達ごっこ」と看破されてしまう。
そこで双葉は釈然としない思いを抱えながらも、ぶりっ子と呼ばれるクラスメイトの悠里を見て、
本質的に自分と悠里のしていることに違いはないのだと自覚し、変わる意志を芽生えさせた。
自分に不都合な事実を突きつけられてなお、それを心の片隅に残しつつ
新たな視野を持ってみようと挑戦できる、この器量の大きさに主人公の魅力を強く感じた。
いかに自分が汚点を自覚していても、それを変えることに自分が傷つく可能性が含まれているなら、
人はなかなか行動できないものだと思う。そうして世の中、妥協を繰り返すことも多いのではないか。
そして、それは間違いとは言い切れないだろう。リスクを最小限に、現状を維持することも大事だ。
こういう悩みの部分こそ、普遍的なテーマであると思う。物語的でなく、ご都合的でない……。
だから考えさせられる話でもあった。これをたった2話でやりきっているのが密度の濃さを感じさせる。{/netabare}
■恋愛とは他人に深く踏み入る覚悟
恋愛は、愛に飢えた人たちが運よく巡り合って、成り行きで生じるものと思われていないだろうか。
実際には逆なものかもしれない。自分が傷つくことも恐れず、相手に嫌われようとも向かって行ける人。
自分からその人へとぶつかっていける人に、その機会が与えられるんじゃないだろうか。
自分を愛するだけでは、恋愛することも叶わない。自分を犠牲にしてでも他人を想うほどの情動。
それは、他人の闇へと踏み込むことでもある。
人の、心の触れられたくない部分に、わざわざ触りに行くことである。
確実にただでは済まない反撃を食らうだろう。それを覚悟してもなお、向き合うこと。
ようやくそこで、相手への理解・信頼が生まれてゆく……。傷を負わなければ心の奥は知れないのだ。
と、そんなようなことを終盤の話では考えさせられた。
この主人公の双葉ちゃんは、物事を冷静に考えつつも情感には人一倍溢れていて、行動は真っ直ぐ。
本当にこんな子がいたら、現実であろうと物語みたいなお話が出来ちゃいそうだと思わせられるほどに。
良い主人公だった。洸もイケメン行動はしてたけど、等身大の自然な男の子らしさもあって良かった。
☆総評
個人的に、今期一番に想像を超えて引き込まれた作品。予想外に面白かった。
恋愛少女漫画系の作品で言うと「君に届け」「となりの怪物くん」に次ぐお気に入り作になったほど。
ホント良かったので、恋愛ものしばらく観てないな、なんて人は手を伸ばしてみてはどうだろう。
多くのジャンルの中でも、少女漫画系は細かな人間心理の描写に秀でているように感じられるこの頃。