suzuki さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
全ての作品の白箱に花束を!!PAが送る渾身の業界アニメーション!
【総評として】
とりあえずめちゃくちゃ面白かったです!
1話で傑作に化けることを予感させたけど、その想像すら遥かに超えた面白さで、半年間この作品漬けになるほどはまりましたよ!
ネタがネタだけに、どうしても業界暴露の自嘲的で内輪向けなギャグ作品になるか、恋愛やファンタジーな展開に”逃げるか”、それともリアルを追求した自己満作品になるのか、正直かなりバランスは難しかったと思います。
ただこだわりの強さとキャッチーな要素に定評のある水島監督、ヒューマンドラマをオリジナルとして何度も企画してブランド化されたPA.Works、軋轢の生みそうな企画を引き受けた製作・スポンサー陣、そして情熱を持ったSHIROBAKO制作にかかわる全ての人によってこの挑戦は本当に、本当に素晴らしい作品につながったと思います。一視聴者としてこの作品に出会えたことは本当によかったです。ぜひまだ見ていない方は一度ご覧に入れるといいと思います。
以下、長文になってしまったので、気が向いたら読んでください。
【この作品のジャンルは・・】
創作活動の意義や、様々な人や連綿と続く技術・伝統が一つのプロジェクトとして結実していく面白さが緻密にテンポよく描写された、”業界ドラマ”です。アニメで本格的な業界ドラマは他に例を見ないので、面白さの方向性も従来のアニメとは違っていたかと。そういう意味でも挑戦的なジャンルだと思います。
【脚本に関して】
この作品のシナリオ部分で特に魅力的に感じたのは3点です。
・毎話の脚本の密度・・専門用語やテンポよく移り変わる展開もあってかなり情報量が多く、画面に釘付けにされます。その上1シーン1シーンにさりげない状況説明描写、後々に回収される前振りや伏線、メタファ等が込められており、見返すたびに新しい発見があります。普通に見ても濃縮で退屈せずに楽しめますが、考察推奨です。
・自由で窮屈さのないストーリーの広がり・・この作品は1クール目はオリジナルもの、2クール目は原作ものを劇中劇として制作することになるのですが、特に2クール目は企画段階からスタートさせており、様々な職種の人を巻き込んで展開されます。そのためか業界ネタでも内輪向けな印象を受けず、次の展開が楽しみでしたし、自然と共感できるようになりました。
・一貫したテーマ性・・この作品はアニメ創作における各セクションの横のつながりや技術・伝統の継承をテーマとしており、一貫してぶれてません。作品の展開でTVという媒体ではどうしても描写が難しい場面はコメディで躱しつつも、普遍的なメッセージ性は失わなかったので全体として共感や励みを呼ぶドラマになったのだと思います。
また創作活動の意義について考えさせられる作品で自分も何か作品を作る仕事がよかったと再度考えさせられました。ただ、今の仕事が楽しめないのも未来のゴールが見えていないからなんですよね。。SHIROBAKOを励みに少しずつ夢に近づきたいです。
【声優に関して】
声優の演技力が単純に良いというだけでなく、その使い方もうまかった。特に14話のオーディションシーンはベテラン声優にプレスコでしゃべらせて、臨場感を演出しています。
【キャラに関して】
この作品は特に登場人物が多いのですが、多分100キャラくらい覚えています。それほどキャラクターがそれぞれ立っていて、非常に個性的で魅力的です。アニメ的にデフォルトされたキャラも少ないのが特徴で、それがどうも肌になじむというか、キャラクターが自然に話している気がするんですよね。説明的じゃないというか。また「このキャラがこんなセリフを!?」という芝居もとても楽しめました。
【作画に関して】
PAなので言わずもがなですが、特に劇中劇に関して一つのアニメとして完成されたクオリティで、それぞれ特徴がかき分けられています。
作品世界に説得力を持たせるために作画の書き分けがとても機能していたと思います。
【音楽に関して】
両クールのOP、ED全てがこのアニメのテーマに沿ったものになっています。
三女のBGMなど劇中劇の音楽までこだわっており、音楽の重要性を感じることができました。
【まとめ】
いろいろ理屈こねてきましたが、客観的に見ても間違いなく10年代を代表する傑作のひとつなので、見たほうがいいと思います。
・1クール目の一挙放送がニコニコで歴代最高評価
・驚異のロングランで14年オリジナル最大のヒット作に
3話まで見て肌に合えば、絶対楽しめるはずです。
今後もこうした業界ドラマ(アニメ業界に限らず)が生まれてきてほしいです。
できるならSHIROBAKO続編も見たい。もともと4クール構想だったそうなので、予算や動画周りの話、商品企画や広報面の話、独立起業する話、劇場版を製作する話、高校編や旧ムサニ編や別のキャラに焦点を当てた話などまた作って欲しいんですが、無理かな~