雷撃隊 さんの感想・評価
4.6
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
Zeroは社会人の世界
1,2両方の感想。本編のステイナイトが士郎や凛たち学生の青春物だとすればゼロは社会人の世界だろう。虚淵氏のシナリオだけあって「まどか」同様に敵とのバトルよりも人間社会の不条理との戦いといったほうがしっくり来るストーリーだ。哲学的な人生についての論議で奥が深い。
主人公たる切嗣の孤独な戦いは悲壮感が漂う。冷血漢だと思いきやバカ正直に世界平和を願うあたりはやはり士郎のお父さんだ。久々に単独で映える男性主人公なので嬉しかった。小山力也さんの演技もカッコイイ。24の吹き替えの人、といえばわかる人多いのでは。
遠坂時臣は家系の使命に忠実ながらも優しい人格者だ。でも言峰に殺されるシーンはザマー見やがれ、とサドな気分になってしまった(笑)「見てみろ、この間の抜けた面」ギルさまに共感。なんか立派な人格者が惨めな死に方するのを見るとウレシクなってしまう僕はひねくれてるのかも(笑)
切嗣のハイテク兵器と魔術を組み合わせたハイブリッドなスタイルの戦闘方法は何処と無く80年代のラノべを連想させられる。登場する英霊はステイナイトよりもメジャーな連中が多いような。アレクサンダー3世やジル・ド・レエ辺りとか。龍之介とキャスターのコンビとか最高だったなー。よくぞあれを地上波でやったものだ。「ひでーよ、これが人間のやることかよー」とか「神様は勇気や博愛も血祭りショーも大好きなのさ、だから血の色はこんなに赤いんだよ」とか名言多し。
ライダー陣営は珍しく少年漫画的な王道ストーリーで癒される。ウェイバーとライダーのおっさんと少年のコンビは良い意味での箸休めで微笑ましい。ギルガメッシュくん、引き続き登場。この人はケチなのか気前がいいのか大物なのか下衆な小物なのか相変わらずよく解らない。まあそこが彼の魅力なんだろうけど。言峰さんが初っ端からよくしゃべるのが新鮮。タイプムーンの作品は中田譲二さんがしゃべるとそろそろ終りというのがパターンなんだけど今回は出ずっぱりだ。切嗣と二人でw主人公を張っている。ニヒリストと夢想家のライバルで二人とも屈折していてアクが強いな。
今回は切嗣とアイリが主役として活躍するがセイバーは陰が薄い。ライダーが「やり直しなんか出来ない、自分を蔑ろにするな」と説教をしていたが後に衛宮士郎に同じことを言われるのが印象的だ。もしライダーと士郎が出会っていたら面白い論客になったのでは?
英雄同士の問答のシーンは本作の見所だろう。「王とは孤高の存在であるべき」「いかに多くの者を友と呼べるか」「理想に殉じるべし」「贅沢してよいのだ。だからこそ皆が憧れる」理屈っぽいけどみんな正しい気がする(笑)。
セイバーと切嗣、相性が最悪だがこれはマスターとサーヴァント云々というより人としての考え方の違いでどうにもならない。「騎士だの英雄だの、そんなものは人殺しに長けた連中の自己正当化だ」という切嗣と「英雄は殺し合いに残された理性」というセイバー、どちらも正しいだろう。この二人のやりとりは人間社会の永遠の命題だろいか・・・。本心では人助けで正義の味方になりたかった切嗣が自分の心を殺し続けて消耗してゆく有様が痛々しいことこの上ない。でも士郎と過ごした日々は本当の自分に戻れたのだろうか?
その後セイバーが士郎を通じて切嗣の本心を理解するのがステイナイトの物語だ。そして言峰&ギルガメッシュとの決着は子供たちの役目。親子2代の物語が完成する。
この作品、アニメらしくないキャストが最高だ。おっさん臭漂うベテランオンパレードで気分はまるで白黒映画の吹き替えだ。おかげで渋く重厚な雰囲気が出ている。
作画はレベルの高さが半端ない。まるで映画。
音楽も豪華だねー。川井憲次さんの楽曲を梶浦由紀さんがアレンジ。カッコよすぎだろ。1期の主題歌がZERO全体のテーマとすれば2期の主題歌は切嗣個人の生き様だろう。最終回にto the begenningが流れるシーンは切なすぎる。思ったとおりの場面で幕になって予想が当って鳥肌がたった。「君と生きた、日々の全て、優しい唄・・・」まさに切嗣の本心そのものだ。
2006年版ステイナイトと両方見ると全、後編という印象。現在放送中のUBWのあと見るとまた印象変わるかも。まだまだシリーズ楽しめそうだ。