「残響のテロル(TVアニメ動画)」

総合得点
82.3
感想・評価
2161
棚に入れた
11415
ランキング
371
★★★★☆ 3.7 (2161)
物語
3.7
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.7
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

残響する人の生

テロ、という題材からもっとセンセーショナルな内容を想像していました。
しかしながら実際見終わってみると非常に繊細で、興奮とも感動とも違った余韻が残りました。

OP、ED、綺麗で透き通っていて引き込まれました。
菅野よう子さんが関わるとああも凄い楽曲が出来上がるのかと。

本編の作画も通常のTVアニメで感じてしまう違和感はほぼなく、映画なみのクオリティ。
{netabare}
違和感というのは、あるキャラが喋っている間他のキャラが動かなかったり喋らなかったりする部分の事です。TVアニメだとこれは避けられない問題。
しかしテロルでは巧みにカメラアングルを駆使し、なるべく視聴者から見て「キャラが動かない」ことを感じにくくしていました。
話を聴いているキャラの背後から喋っているキャラを映す、監視カメラの目線で場面を映す等、そのような配慮が行き届いている印象を受けました。
{/netabare}



内容について。

少年二人が、日本という国に対してテロ行為を繰り返し続ける。
謎解きじみた犯行は愉快犯を思わせ、なんだか皮肉のようにも思えました。

彼らが出会った少女、三島リサ。
最初はただ少年二人との比較、日常的で平凡なキャラとして存在しているのかと思いました。



そうしたいかにも‘らしい’キャラクターが彼らの正体なのかというと、違うと思います。
テロリストとか薄幸少女とか、それだけの駒みたいなキャラの扱いではない。広がりのある魅力があります。
序盤抱いていたマイナスのイメージを覆して、後半では一転して好感を抱けるようになりました。

ナインとツエルブは本当に印象が変わりましたね。
{netabare}
日本各地を爆破し続ける二人でしたが、絶対に被害者は出さない。
それは破壊が目的ではなく、権力によって闇に葬り込まれようとした真実を白日の下に晒し、自分達の存在を世界に表したかったから。

最終話のタイトル。
「VON」なんて発音的に「BOMB」と掛けあわせてあるようでテロ絡みのキーワードかと思ってしまいます。
が、ナインによればアイスランド語で「希望」の意味が込められているということで。
{/netabare}

リサも、少しは変われたのでしょうか。
{netabare}
最初はただの逃避行、流されているだけだったリサ。
次第にナインとツエルブの生き方に、その哀しさに共感していきました。
支えられていたはずのリサがツエルブの支えになって、初めて他人に認めてもらえることが出来て。

そういえば施設にいた頃のハイブには、どこかリサの面影が感じられました。
多分それはナインもツエルブも、そしてハイブも考えていたのではないでしょうか。
ハイブは自分と違って二人に受け入れられていくリサが羨ましくも妬ましかったように思います。

観覧車でのやり取りは本当に良かった。
ハイブがツエルブを揺さぶりにかける心理戦。
ツエルブはリサを見捨てなかった。見捨てられなかったのです。
それは彼の甘さであり、弱さであり、本当の想いでもあり。
色々とかけ巡る感情に胸一杯でした。


一年後……二人の墓参りに訪れるリサの姿がありましたが、あれだけではなんとも彼女の心情は計りきれません。
母との確執に負けず、しっかりと生きていってほしいです。
{/netabare}


三人がだんだんと見えてくる、変わっていくのがとても面白かったです。


テロというのも、彼らは日本を変えてしまおうなどとは思っていなくて、ただ一つ。
{netabare}
自分たちの存在を示したかった。自分たちが生きて何をしてきたかを。

最後、柴崎刑事に向かってナインが「俺達のことを覚えていてくれ」なんて言っていたと思います。
ああでもしないと忘れ去られてしまうほどに彼らの存在はか弱く脆いものだったんですね。
{/netabare}


現実でもテロはその事件性や残虐性のほうばかりクローズアップされますが、実行犯はどんなことを考えていたんだろうなと思います。
何の因果に人生を狂わされ、あのような凶行に走ってしまうのか。
テロ行為を正当化するわけではないですけどね。



皆必死で今の自分の人生を生きている感じがして、こんなお話だけど元気がもらえたと思います。

9話からの怒涛の展開が素晴らしくて、あそこだけ何回も見たいくらい。
{netabare}
リサとツエルブの関係も素敵でした・・。
いつもながら、この世界が平和であったら、普通の学園ものだったら、ってこういうアニメのカップルを見る度思っちゃうんですよね。

それから最終話の三人が遊んでいる光景。
幼子に戻ったみたいで、とても眩しかったです。あれがナインとツエルブの求めていたものだったのかなって思います。
{/netabare}


期待していたのとは違ったというのはあったし、序盤は本編よりむしろ本編後のスピンクス(実写)の方が面白いなんて思ったりもしたけど、最後まで見てみれば悪くなかったと思えました。
完結してしまったのが惜しいです。

投稿 : 2014/10/05
閲覧 : 212

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