「残響のテロル(TVアニメ動画)」

総合得点
82.2
感想・評価
2160
棚に入れた
11409
ランキング
371
★★★★☆ 3.7 (2160)
物語
3.7
作画
3.9
声優
3.7
音楽
3.7
キャラ
3.6

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ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

白色のテロル。赤ではなく

【2017.06.17末尾に追記】

スタート時に想像した展開とはだいぶ違ったが、最初から最後まで緻密に構成した力作。

終了時、周囲では「テロじゃないじゃん」という声があったが、タイトルの「テロル」は「白色テロ」、すなわち日米両政府の行為の事だと解釈したい。
9・11の前までは、テロルといえば「恐怖政治」を意味する方が多かったのだから。

{netabare}ナインとツエルブの行為が、赤色テロではなく別種の犯罪だとみれば、2話の謎かけの不自然で間抜けな展開も、まあ納得のいく範囲となる。テロの駆け引きではなく、示威行動にすぎないのであるから。

中盤以降の展開も、彼らの、テロではない別種の犯罪という視点からは、回り道でも脱線でもなく、むしろ本筋としてしっかりと構成されている。

まあ、示威行動で最後に原爆を爆発させるのもすごいが、爆発シーンで、第1話からの伏線に気が付いた。

ナインの腕時計、ロレックスらしき目立つ時計が妙に強調される描写が気になるとは思っていたのだが、シリコンチップがパンクする事態を想定して、CPU制御のクォーツ時計ではなくゼンマイの腕時計を使用していたと、最終回で判明するとは。

ここまで考えたのだから、タイトルももう少し誤解の無いものにすれば素直に見られたのにと惜しい気がする。

テロとは、ある暴力行為を、特定の立場から評価した時の言葉だ。
ビルを壊そうが、原爆を起爆しようが、自動的に「テロ」であるわけではない。それを「テロ」とみなす立場がある、だけのことに過ぎない。
立場によって、日米両政府の行為を「白色テロ」とみなすように。

社会から抹殺された子供が、あらゆる手段で自らの生の痕跡を社会に刻み込もうと企てるのは、それだけで重大な、一つの物語を支え切れる大きなテーマだと思う。

暴力沙汰はすべて「テロ」と自動処理する浅薄な認識が主流の中で、わざわざこのような言葉をタイトルに使用するのは、予断を誘発するだけで、逆にテーマを卑小化しかねない。

この子供の決死の行為を「テロ」とみなすのは、子供を抹殺した社会の側に立つ立場を表明するものだろう。


テロが絶対的に「悪」であることに、異論の生じる余地はない。
だが、この子供の行為を肯定するのでなければ、何故このような物語をわざわざ語ったというのか。

白色テロの抑圧国家においては、体制に抗議するすべての行為は「法律」によって禁じられる。
そこではデモや告発ですら非合法の行為として取り締まりを受けるだろう。
現に「白色テロ」によって社会から抹殺されている子供が抵抗を画策するなら、その一切の行為は「非合法」にならざるを得ない。

「非合法」の暴力であるから「テロ」=悪と看做すのであれば、抵抗の一切は不可能になる。

「合法」の抵抗手段など存在し得ないのであるならば、「非合法」を理由に容認しない立場は、すなわち子供を抹殺する社会への賛成にしかならない。
「気持ちはわかるけどテロは良くないよね」と、裏口から子供の抹殺を黙認するような感想を引き出すことが、製作者の目論見であったと主張するつもりなのだろうか。

子供の抵抗を肯定するのであれば、必要なのは、「暴力」の中から、「テロ」や「抑圧」や「抵抗」や「反抗」をそれぞれ異なるものとして峻別する思考の深度だ。
「法」の根拠と主権にまで思考を深めなければ、この子供の決死の抵抗の肯定を、誤解の余地なく視聴者に伝えることはできない。

それら全てを、区別することなく曖昧に「暴力」として徹底した思考を避けてしまった怠惰が、タイトルの「テロル」という言葉の選択に現れている。

このような怠惰を自覚できないなら、「テロル」などとタイトルに付けるべきではなかったと思う。{/netabare}

投稿 : 2017/06/17
閲覧 : 457
サンキュー:

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