ossan_2014 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
呪いの言葉
2期への伏線もあるだろうが、1期最終回まで見えている限りの感想は、よく考えられている、だ。
{netabare}ラストの展開に関して、単に戦争の無情さだとか、奇をてらった演出ではなく、ここへ向けて全体が構成されていた周到さが感じられれ、深く感動した。
お姫様とナイトの大活躍で戦争が終結するなんてファンタジーの中だけだ、という安直で皮相な「現実主義」ではなく、より現実の戦争を反映させる意図をもって真剣に考察したのであろうことが伝わってくる。
マリト大尉の「火星の連中の戦争は、産業革命以前のスタイルだ」というセリフに対し、最終話、死の直前のイナホは「交渉の一部としての戦争」観を語る。
だが、イナホの戦争観はマリト風に言えば、「第一次世界大戦以前」的だ。パリ不戦条約によって戦争が非合法化された現実では、戦争を起こす「権利」を持つものは存在せず、したがって「交渉」による妥協を引き出す対手も存在しない、相手の絶滅を自己目的化したような異様な殺し合いへと逸脱していく。
LET JUSTICE BE DONE,THOUGH THE HEAVENS FALL.
キービジュアルやオープニングに挿入されるこのフレーズ。
最終話のサブタイトルにも通じるこのフレーズ。
冒頭から明示されるこのフレーズが、製作者がこの事態を考え抜いていた証しだろう。
このフレーズのような考え方をする限り、交渉による妥協の余地は存在しない。
戦争の意味を掴み損ねていることの反映として、イナホは屍をさらすことになる。
「交渉」が不能である相互絶滅戦においては、戦争に責任を持てる者も存在を許されない。
誰かに責任を押し付け、自分は被害者であると主張し、戦闘から逃れることはできない。
その反映として、スレインは双方の陣営から撃たれることになる。
また、裏返しとして、自分から「責任」を引き受けようとするアセイラム姫の意思もまた無効な決意でしかない。
その反映として、やはり姫も死ぬ。
開戦を仕掛けたザーツバウム伯爵もまた、いったん戦争が始まってしまえば特権者足りえない。伯爵が斃れてもなお戦争は終結しないことを、ナレーションは暗示する。
LET JUSTICE BE DONE,THOUGH THE HEAVENS FALL.
このフレーズに集約される、現実の戦争の反映を見事に見せた本作。2期ではこの、現実の先をどう見せてくれるのか。
期待は高まる。{/netabare}