オキシドール大魔神 さんの感想・評価
4.4
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
最終話はとあるシリーズ屈指の熱さ
1クール目はオリジナルがあるにはあったが、特別奇を衒った話はなく、王道的でシンプル(ちょっとした怪事件を解き明かし、最終的に友情で結ばれる佐天と重福とか)で悪くなかったし、基本的には原作をベースに時系列入れ替えや肉付け、補完が加えられていて、改良と言える。
たとえば、強盗退治。原作だと、御坂が強盗の攻撃を避けた際に持っていたクレープを服に落として、服が汚れた事にイラついて強盗に対しレールガンを放つ。切れる理由としてはもっともだが、レールガンは少々やりすぎと思われる面もある。しかしアニメでは、佐天が強盗から子供を庇って傷つけられたことに怒りレールガンを放っている。これでもやりすぎと言えばやりすぎかもしれないが、「服が汚れた」よりは御坂の怒りに感情移入できる理由だろう。
プール掃除回を早々に持ってきたのも良かった。原作だと、プール掃除はレベルアッパー編の後で、「どんな理由であれ寮則を破ったことにペナルティーが必要」という寮監の理屈は分かるが、神視点の我々からすると「御坂はあれだけ頑張ったのに、いくら結果的に寮則を破ったからと言ってペナルティーは不憫」という感想を抱いていた。その点アニメでは、比較的妥当な理由でプール掃除ペナルティーを持ってきた事によって、原作で感じていた不憫さがなくなった。
また、上条好きの自分としては、上条の出番が多少とはいえ増えたのも嬉しかった。
12話での御坂vsAIMバーストも良かった。原作だとAIMバーストからは言葉になっていない言葉が出ていて、御坂の口上も悪くはなかったが特別感動するものではなかった。その点アニメでは、レベル0のコンプレックスを出し、それに対する御坂の口上も応援をしている感じがして良かった。オンリーマイレールガンが挿入されたのも熱かったし、特別バージョンEDも良かった。
2クール目はオリジナルで、日常シリアスいろいろあったが、日常については面白くはなかったが劇的につまらなくもなかったので、取り立てて文句をつけることろはない。ただし、スキルアウト編はつまらなかった。よく言われる批判の一つだろうが、固法が付き合っていたという設定。これ自体嫌という人もいるだろうが、自分はそこまでは思っていない。ただ、付き合っていた相手が不良って言うのが微妙すぎる。言ってもサブキャラだからまだどうでもいいと言えばどうでもいいが、これがメイン級のキャラだったりしたら非難轟轟だっただろうし、自分もケチ付けていた可能性が高い。
もう一つメジャーな非難どころとして、キャパシティダウンが挙げられるだろう。これに関しては後述するが、熱い展開に繋がるエッセンスとなっているので大きな不満はない。かまちー監修らしいし。原作で出てくるAIMジャマーのように、AIM拡散力場に干渉するなら、能力者ならば特別な対抗策はないように思えるが、この場合は「耳栓すりゃ大丈夫そうじゃね?」などの比較的簡単と思われる対抗策がありそうで、その辺どうなってんの説明ないの?という感想も抱かなかったと言えば嘘になるが、まあこれくらいのガバは原作でも多々あると言えばあるし、その辺のもやもやなんかどうでもいいと思える程度には、ポルターガイスト編は良かった。話の完成度自体はまあまあ程度だが、最終話の熱さが別次元。黒子と婚后の共闘から始まり、木山の力強い諦めない宣言。「黒子ーっ!」という御坂の全力の呼びかけ対し「お姉様!」と呼応し、テレポートでアシストする黒子。黒子のアシストを受けて「これが私の全力、だああーっ!」の叫びと共にレールガンを放つ御坂。御坂を運んだという意味で固法すら活躍した。挿入歌のレベル5ジャッジライトも熱さに拍車をかけた。
後半は、初春の助言でキャパシティダウンを破壊する佐天など、力が弱いやつにも見せ場を作ったのは見事。レールガンとレールガンのぶつかり合い、つまり必殺技と必殺技のぶつかり合い、さらには敵の予測を上回るという少年漫画好きにはたまらない王道燃え展開に、挿入歌オンリーマイレールガンは最高だった。ぶっちゃけ、テレスティーナが1回目に負けた時は、「媒体を変えればレールガンの距離が変わるの分かるだろ」という気持ちもあったが、純粋に力で打ち勝ったレールガンvsレールガンは最高に熱かった。最後の最後には木山先生も救われるおまけつき。メインにも脇役にも分相応の活躍の場を作ったのは見事としか言いようがない。
アニメオリジナルは大概クソだが、アニレーに関してはかなり良い部類。盲目的な原作信者がアニレーを叩いているが、彼らは「どのように改変されているか」、オリジナルのクオリティー如何にかかわらず、「改変されているという事実」「オリジナル回があるという事実」だけで反射的に叩いているだけだとしか思えない。
一つ、最終話vsテレスティーナ2回戦時、御坂がレールガンを放つときにあえて伏せられた言葉について私見を述べる。
結論から言えば、あれは「学園都市だーっ!」なのではないかと思う。口元の動き、口パク尺の長さ、それまでのやり取り、御坂の「本当退屈しないわね、この街は」などの発言を総合的に判断した結果、そのような結論に至った。
口元の動きとしては、最後口を思い切り開けている所から「○○だーっ!」というのはほぼ確定と言っていいだろう。その直前は、口をイッーっとしているので、イ段の音で終わると推測される。さらにその直前は、口の形から判別すると、オ段の音で終わると思われる。口の動きから推察される音からすれば、「都市」は当てはまる。映像を見れば分かるが口パク尺の長さ的にも、「学園都市」なら丁度いいかほんの少し余る程度で、足りないことはない。「学園都市が居場所」との主張の御坂、「学園都市なんてサンプルの集まり」と主張するテレスティーナ、彼女らのやり取りから考えても、「学園都市」というのはそれほど不自然ではない。
ただ、既に学園都市が居場所と主張している御坂が、改めて「学園都市」というのも繰り返しでくどいし、「○○だーっ!」の発言の前の「私の、私だけの――」の文脈とも若干合わない。「学園都市」を当てはめるなら「私の、私『たち』の――」の方がよりふさわしいはずだ。文脈で自然に当てはまるのは、パーソナルリアリティーだ。パーソナルリアリティーは『自分だけの現実』と書くので、「私の、私『だけ』の――」という文脈とも合う。文脈だけならこちらの方がふさわしいが、これだと口元の動きと合わないし、口パク尺が足りないように見える。それに、ここまで友情で押してきたのに、最後の最後で『自分だけの現実』というのも、これまでの展開と矛盾してしまうような気もする。もっとも、長井は2期で結構やらかしているので、最後の最後でやらかしただけかもしれないが。そもそも、友情が云々を言い出したら、「私の、私『だけ』の――」で既に若干アウトなのだが。
とにかく以上から、文脈だけならパーソナルリアリティーの方がふさわしいが、「学園都市」でもそこまで不自然ではない、また、口元の動き、口パク尺、「本当退屈しないわね、この街は」という学園都市に愛着がある発言などから総合して、あえて伏せられた発言は「学園都市」だと結論付けた。
長々と私見を述べたが、そもそもこういう「あえて伏せる」という演出自体あまり好みではない。ましてやとあるシリーズは考察よりも展開や決着の瞬間を楽しむタイプの、どちらかと言えば頭は空っぽにして見るタイプの作品だ。それなのに、作風と合っていない長井の自己満演出には辟易する。
OPは、前期は曲が最高で、映像が若干地味。後期は曲が最高で、映像もサビからは良かった。EDは、前期後期ともに曲は良かったし、映像は地味だったが、EDで映像が派手な事などそんなにないので、映像に関しては普通。
声優はまあまあ。田中敦子や伊藤かな恵あたりははまり役、大原さやかは安定した演技力、全体的には熱演も良かった。作画はJCスタッフがなかなか頑張った(怪しいところも散見していたが)。
よって、総合的に良作。
このころまでの長井は、とらドラとかも含めて名作製造機とも言えたのに、レールガン2期はどうしてああなった……。まあこの1期でも先述した通り、兆候はあったのだが……。