三崎鳴 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
生まれてから死ぬまでに何をしたい?
『カウボーイビバップ』『サムライチャンプルー』などの作品を手掛けた渡辺信一朗監督オリジナルアニメーション作品。漫画『DEATH NOTE』や『予告犯』を彷彿とさせるような世界観で、主人公が社会に反逆する点は一致している。ただし前にあげた二作は一定の信念と強い意思を持って行動しているが本作は動機と手段がやや甘い。TwitterやLINEといったSNSサイトの描写やハッキングからの情報漏えいなどネット描写はふんだんで,良質な作画で描かれる爆発シーンも一見の価値はあるため、作品の、準社会派とでも称すべき雰囲気はかなり良い。盛り上がる所は盛り上がるのだが、とってつけたようなシチュエーションで、脚本家は知ってか知らでか、そもそも主人公らの計画が杜撰であり粗も目立つ。ハイヴというキャラを登場させたはいいものの高度な頭脳戦が繰り広げられるわけでもなく、ただ無意味に退場する尺稼ぎのようなキャラとしてしか認知されない。結末は一応綺麗に畳む。伏線を中途半端に投げる作品の多い中風呂敷を綺麗に畳めたのは評価すべきだが、序盤の期待値を大きく下回る、いわゆる“1話がピーク”型の作品の一角になってしまった。ラストでは主人公は死亡する為復讐物としての及第点ではある。しかし不殺のテロリストを地で行っていた割には負傷者も出している上、ラストの高高度爆発による電波障害で生活に打撃を与えている(病院の医療機器なども停止するため死者も出た可能性が高いのにそこを描写しないのがまた粗い)。テロを美化しているわけではないが真っ向から否定しているわけでもない、テーマが宙に浮いてしまっているような中途半端な作品であり、テロを題材にするならもっと徹底すべきだったのではないだろうか。描写がリアルよりで、あまりアニメで作る意義を感じられなかったが、爆発シーンは美麗だったので目を瞑ることとする。材料は良かったにもかかわらず調理法法を誤ってしまい良作になり損ねた惜しい作品である。