まーさちゃ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
最後だけ解釈が分かれる
原作未読。
「もう一度、生まれてきたいと思う?」というキャッチコピーに惹かれ鑑賞。
押井作品ということで「難しいのかな?」と思い、“キルドレ”という大人になれない子どもの存在や、擬似戦争を民間会社が運営して行っているという舞台設定だけ予習した。
と、思っていたら、作品の中で大体の事は分かる(登場人物達が喋ってくれる)。
なので、観ていて意味が分からないという事はない。
主人公をはじめとするキルドレたちは、戦争を運営している会社に雇われ(あるいはもっと別の手段で造り出され)、仮想敵国(ライバル会社)と日夜戦争を行う。今もどこかで戦争が行われているという現実感が、人々の平和への意識を維持することに役立つのだと言う。
いわば、キルドレたちは平和を維持していくためのスケープゴートである。だが、そこには、「祖国のために」といった愛国捧心や、「愛する家族を守るために」といった大義は存在しない。ただ、仕事として戦闘機に乗り、敵と戦い、そして死んでいく。
こういう現状を見ると、キルドレたちが可哀想と思う。作中でも、敵機に撃墜され戦死したキルドレに対し、同情の声を投げかける老婆がいた。だが、この同情の声に対し、主人公の上官である草薙は、「同情なんかでアイツを侮辱するな」と激しく憤る。
この怒りは何なのだろう。自分たちをこんな状況に追いやった大人たちに対する憤りであろうか。草薙は、自分たちの基地を見学しに来た観光客にも、敵機の襲撃への対応が遅れた会社の上司に対しても、怒る。これだけ感情を表に出すのは、草薙ぐらいである。
「現状を変えたい。だけど、変わらない」
この何とも言えない絶望感が作品全体に漂う中、それでも主人公たちは運命に抗おうとする。そんな中、最後のシーンで見せる草薙の表情が、これまた何とも言えない。
最先端の映像技術で作られた本作品について、空戦の描き方等はお見事の一言。
押井作品が苦手という人でも、この作品はある程度観れるのではないだろうか。