田中タイキック さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 3.5
音楽 : 5.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
ある女の子の青春、瞬間の輝き、届くかな。届くといいな。
2014年10月~ フジテレビ ノイタミナ枠にて放送
全22話
かつて数々のピアノコンクールで優勝していた天才ピアニスト有馬公生
しかし、母親の死をきっかけにピアノの音が聞こえなくなってしまう。
そんな中、破天荒だがとても楽しそうに輝きのある演奏をするヴァイオリニストの宮園かをりと出会い
音楽を通じ互いの才能と想いに共鳴し成長していく物語
【色で魅せる映像美】
まず目につくのが鮮やかでカラフルな色彩
背景は淡いパステルカラーで大袈裟なくらい主張してくる桜の色が印象的
また光の存在感が強く、影がハッキリでているところや照明の眩しさ、瞳の輝きなんかも特徴
四季の移り変わり、曇り空や夜空のシーン、回想や心情風景にいたるまで
色というものをキャラクターの心情を映す演出として巧みに利用しています
【キャラクター】
主な登場人物の年齢設定は14歳 中学3年生というには少し大人びた容姿をしているが
不意に見せる表情や仕草なんかは年相応の可愛らしさがある
一方で少々攻撃的というか感情過多な場面が多く
それらは大体コミカルなシーンで挿入されるが、ギャグシーンとして処理しきれないところが多い
一言でいってしまえばギャグはあんま面白くない
また心情を詩的に吐露するシーン
所謂ポエム演出についてもあまりに多用するとせっかくの大切な言葉一つ一つが流れ落ちていくような感覚になってしまう
印象に残りづらいんですよね
漫画なら一枚絵と一緒に心にじっくり刻み込めるんですが…
だからこそなのか、飾らない素直な気持ちを爆発させて言葉にした時は純粋に感動できました
【音楽】
音楽を題材にしてるとあってBGM・主題歌どれも素敵な曲でした
OP・EDは4曲ありそのどれもが歌詞に「君」という言葉を用いて
誰かにむけた歌になっているのが印象的
それぞれ誰が誰にむけて歌っているのか
キャラクターに当てはめて考えてみるのも面白いかも
演奏シーンは実に様々な映像表現でどれも素敵な映像に仕上がっている
実際の演奏者をトレースし限りなくリアルでヌルヌルな動きをしたかと思えば
意図して一枚絵を使用して感情描写に重きを置いた場面もあり
まさに「瞬間のドラマチック」を見事に描いていました
作画のカロリーが高いシーン(使い方あってるかわかんない)のためか
ピアノを弾く手元のCGが少々雑だったり、全てがスタッフの見せたかった完璧な映像では無いんだなと感じたが
同じノイタミナ枠の「のだめカンタービレ」から比較し映像技術の大きな向上が見れました
【物語】
前半はヒロインとの出会い、音楽への再起、ライバルの登場など
青春を扱った少年漫画らしい展開がテンポよく続いていく
しかし、中盤から主人公の心の問題を扱った話は
徹底的に暗くシリアスなシーンが続いていき少し冗長に感じてしまうかも
だがそれを乗り越えてから終盤まで、物語は加速度的に面白くなっていく
終盤の展開は正直、予定調和と感じる部分はあるが
序盤からの伏線に気付き本作のテーマやタイトルの意味が見えはじめると
その切ない展開から目が離せなくなります
【総評】
想いを伝えること、心を通わせること、そして前に進むこと
卓越した演出力と素敵な音楽に乗せて素晴らしい物語を見せてもらいました
悲しい話に映るかもしれないけどそこには確かな前進と
生きるエネルギーを感じました
泣ける泣けないで断ずるのは早計で
もっと心の奥底の感情をすくい取ってくれるようなお話でした
見た人にとって青春・恋愛物のマスターピースとなるポテンシャルを十分に秘めた作品だと思います
私にとってそのマスターピースに成り得なかったのは
同じくノイタミナ枠でやっていた「ハチミツとクローバー」の存在が大きいのかも
題材やテーマは違うけど作風は似てるかもしれない
正直、この作品を見てお腹いっぱいだとは思いますが
さらに貪欲に欲したいという方は「ハチクロ」是非オススメします
そういえばこの作品がノイタミナで放送されると知ったときは
四月はなんちゃら?そんなことより3月のライオンはまだかよ!と思ったものです。
3月のライオンのアニメも期待ですわ。